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第6話 クレープタイム

「あ……う……あ……」



 俺は顔を真っ赤にしてアホなことを考えているフィーネになんと言葉をかけようか悩んでいた。そういえば異世界ではエルフの女性は一人の相手と一生添い遂げるということを聞いたことがある。

 なんでも長命種でめったに死ぬことがないため、パートナーを変える風習がないそうだ。そんな彼女たちにとってカップルっぽいこととは子作りなのだろう……って、そうはならんやろ!! 


 たんにこいつがむっつりエロフなだけである。



「あの……どうしました……?」

「いえ……彼女は恥ずかしがり屋なんですよ」



 突然エルフ語でぶつぶつつぶやいているフィーネに怪訝な顔をする店員に笑顔でごまかすと俺は彼女の方を向く。

 赤面した顔は相も変わらず芸術品のように美しく、うるんだ瞳は普段のすました様子のとのギャップがあり魅力的である。



「フィーネ」

「ひゃい!!」



 てんぱりながらも返事する彼女にちょっとニヤッとしてしまいつつも言葉を続ける。



「今日もかわいいな!! お弁当美味しかったぞ」

「え……どういたしまして」

「おお、彼氏さんにお弁当を作っているんですね。素敵です。ではカップル割を適応しますねー。あちらで撮影するのでどうぞ」



 空気を読んだのか、めんどくさくなったのか、店員さんが割引価格でクレープを渡してくれたので、さっさと受け取っていまだてんぱっている彼女の手を引く。



「ほら、並んでいる人の邪魔になるから行くぞ」

『え……あんなのでよかったの……変な想像した私が変態みたいじゃない……』

「なんだって?」



 エルフ語でぶつぶつつぶやいている彼女に何も知らないふりをして訊ねると、相も変わらず澄ました様子で答える。



「私とカップルみたいに思われて神矢はラッキーねって言ったのよ」

「ああ、そうですか……」

「では、お二人とも笑顔でー!! 手をつないでいてとっても仲良しですね。写真を撮りますよ!!」



 店員さんの言葉で俺たちは今も手をつなぎっぱなしだということに気づく。お互い顔を見合わせる……だけど、フィーネの手の力が少し強くなったのは気のせいではないだろう。

 そうして、クレープを手に持ちながら撮ってもらった彼女の顔はかつてないほど真っ赤だった。





「うふふ、すっごい美味しい!! こんなにクリームを使ってるのにこれだけの金額で買えるなんて素敵ね」

「気に入ってもらって何よりだ。まあ、異世界にはないからなぁ……」



 嬉しそうに耳をぴくぴくしながらクレープを口にするフィーネはなんとも可愛らしかった。剣と魔法の異世界では魔物肉なども含めた様々な動物の肉や魚料理はあるがこういう甘味はいまいちなのである。

 でも、あんなモンハンみたいな塊肉を食べたりするのは異世界ならではだったよなぁ……なんて昔を思い出している時だった。

 じーっとフィーネの視線を感じる。



『神矢のも食べてみたいっていったらはしたないって思われちゃうかしら?』



 エルフ語でぼそりとつぶやく彼女に苦笑しながら俺は笑顔でクレープを差し出してやる。



「ほらよ、せっかくだ。こっちも食べてみろよ。そのかわりフィーネのもくれ」

「……まったく仕方ないわね……食いしん坊なんだから」



 呆れたようにため息をつくフィーネだが、その耳がぴくぴくと可愛らしく動いているので思わずににやける。



『でもこれって間接キスじゃ……それに恋人みたい……』



 エルフ語でそんなことをつぶやくものだから、俺も思わず顔を真っ赤にしてしまう。



「ちょっと飲み物を買ってくるわ」



 恥ずかしさのあまり俺は思わず席を外す。ちなみにクレープの味はフィーネを変に意識してしまい全然わからなかった。

 そうして、俺が自販機でコーヒーを買って戻ると、何やらフィーネの前に男たちが立っているのが目に入る。



「なあ、あんた。エルフって言うんだろ? よかったら一緒にお茶でもしないか?」

「その耳って本物なのか? 触らせてくれよ」



 不快そうに眉を顰める彼女を見て、俺は慌てて駆け寄るのだった




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