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第2話 教室での日常。

「それでさー、最近読んだラノベなんだけどさ、最初はただのクラスメイトだったのに、お互いの家に行き来してごはんとかを作ってくれるようになってさ。本当にエモいんだよ」

「あー、そういうのあこがれるよね。って、この会話も毎日聞いているなぁ……そういえば神矢も一人暮らしじゃん? なんかそういう話はないのかい? 彼女や女友達が料理を作りに来てくれるとかさ」

「お前な……万年独り身の俺にそういうことを聞くかね……」



 昼休みということで、俺は親友の九条一とくだらない話をしている。こいつとは高校一年からの付き合いだがウマがあって、つるむようになったのだ。

 俺のくだらないラノベ話にも付き合ってくれる貴重な人間である。



「そりゃあ、俺にもなんだかんだ文句を言いながらもお弁当を作ってくれるツンデレ美少女が現れないかなって思うことはあるけど現実にそんなことがあるはずないだろ」

「あはは、そこはツンデレなんだ。でもさ、異世界があってエルフやドワーフだっていたんだ。異世界転移や転生、突然、神矢のことが好きって女の子が現れるってことがあるかもしれないよ」



 異世界転生は知らんが異世界転移はあるんだよなぁ……と苦笑しながら一つ気づく。



「なんで、俺のことを好きな子が現れるのが異世界転移や転生と同じくらいありえないことなんだよ!!」

「あはは、ばれちゃった? そんなことよりも神矢は本当にツンデレが好きだねぇ」

「あたりまえそうだろ。やっぱり普段はツンツンしているけど、時々デレるのがやばいんだって」

「だったら、佐藤さんとかどうなの? 結構仲良しじゃん。それにとっても美人だし、神矢にはなんかツンツンしてるじゃん」



 一の視線が女友達と楽しそうに話しているフィーネの方を向く。つられてみる視線を送ると彼女もこちらを見ていたのか、目が合いなぜか顔を真っ赤にしてぷいっと視線を逸らされた。

 


「まあ、確かに親しいけどそれは転校した時に世話したからじゃないか? ひよこが初めて見たものを親と勘違いするてきな……」



 俺が軽口をかえす。そりゃあ、あんな美人に慕われるのは嬉しいが、俺はとある経験から自分がそんなにモテるような人間ではないと知っているのだ。過度な期待は禁物である。

 だが、一のやつはにやりとからかうような笑みをうかべる。



「知ってる? 佐藤さんを下の名前で呼んで怒られないのは神矢だけなんだよ。それだけ心を開いているってんでしょ。頼めばお弁当くらい作ってくれるんじゃない?」

「でも、フィーネかぁ……あいつはエルフの国のお姫様だからな。多分料理とかはできないんじゃいかな? 砂糖と塩を間違えたりしそう。佐藤だけに」

「……」



 俺のくだらない冗談に一のやつは無言だ。それどころか、なぜかきまずそうに顔をそらしていやがる。いや、つまらないかもしれないけどひどくないか?



「砂糖と塩を間違えたりしそう。佐藤だけに」

「神矢……楽しそうな話をしているわね。ちょっと用があるんだけど、大丈夫かしら?」

「ひぇ……」



 別に大事なことでもないが二回言った時だった。異世界へ行ったときでも感じたことのない殺気に満ちた声に俺は思わず情けない悲鳴を上げる。恐る恐る振り向くと、いつも俺にはツンとしているのに、珍しく満面の笑みを浮かべているフィーネがいた。

 だけど、その目が一切笑っていないのが怖い。一が視線をそらした理由がわかったぜ。



「あの、フィーネさん……どこから話を聞いてました?」

「私はエルフですもの。耳が悪いの。何もきこえなかったわ。それで……砂糖と塩をまちがえるような世間知らずの私の話を聞いてくれるかしら?」



 全部聞こえてるぅぅぅぅーー!! 長い耳は伊達ではないようだ。ちなみに森の種族であるエルフの耳はむっちゃ良い元々狩猟民族だしね。



「いや、これはだな……」

『神矢の馬鹿、アホ、オタンコナスー!! 料理くらいちゃんとできるんだから!!』



 ご丁寧に一呼吸あとにエルフ語で罵倒までしやがった。語彙がどこか子供っぽいのは気のせいだろうか?



「今のは……?」

「ふん、別に何でもないわ。気にしないで。それよりも今日お昼を一緒に食べたいんだけど……」



 おそるおそる聞くが激怒している様子をみせずにフィーネは相も変わらず笑顔を浮かべたまま俺をみつめており、その長い耳が存在を主張するようにぴくぴくと動いていて可愛らしい。



「いや、でも……俺は一と一緒に……」

「九条君……彼をお借りしても良いかしら?」

「はい、どうぞ!! 返さなくていいですよ。佐藤さん!!」

「お前ーーー!!」



 速攻売られてしまった……いや、ひどくない? まあいいけどさぁ……



「まあ、別にいいけどフィーネだって、もう一緒に食べる友達くらいいるだろ?」



 確かにフィーネの転校直後は二人で飯も食べていたが、今はクラスメイトもエルフである彼女と打ち解けておりいつもは女友達と一緒に食べているのだ。



「そうだけど……今日はちょっと付き合ってほしいのよ。ダメかしら?」



 先ほどまでの高圧的な態度はどこにいったのだろうか? 少し不安そうに耳をぴくぴくとさせている。ひょっとしたら何か悩み事でもあるのかもしれない。

 まあ、俺としても彼女の世界の話を聞くのは懐かしい気持ちがするから嫌いじゃない。



「わかった……付き合うよ。その代わりと言ってはあれだがまたフィーネの世界の話を聞かせてくれよ」

「そう、ありがとう。じゃあ、いつもの場所で待っているわね。食べ物は持ってこなくていいわよ」



 耳をぴくぴくとさせながら彼女はこちらに背を向ける。え……? 何ももってこなくていいってどういうことだ。



『やったーーー、絶対美味しいって言わせて見せるんだから!!」



 他の人間には聞こえないであろうエルフ語そんなことをいうものだから俺は察してしまう。フィーネのやつ俺にお弁当を作ってきてくれたのか? でも、なんで……?







主人公が読んでいるラノベはお隣の天使様です。アニメむっちゃよかった……


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