きゅーう
「ローズ様、お顔の化粧を落とします。失礼しますね」
「………」
少し落ち着いたものの視線は下で落ち込んでいるのが分かる
「ドゥータ様に失態を見せたわ…嫌われたらどうしよう」
(すでに苦手と思われてます…)
「大丈夫ですよ」
そうですよとも言えないのでフォロー
エマはローズのことをあまり嫌いとは思わない
行き過ぎた言動はあるもののあとから反省をするし
本当にドゥータのことを好きだから暴走をしているだけ
まぁそれが相手にとって困る行動なのだが
「ローズ様、失礼なことを伺いますがお化粧がとても厚く塗られてますよね、ローズ様のメイドがされたんですか?」
化粧を落としたとき出てきた地肌がファンデーションと違いすぎる
チークも赤すぎるしこれをメイドがやっていたのなら嫌がらせとも取れる
「違うわ。ワタクシが自らやっているのよ」
「エッ」
メイドにさせず自ら!?でソレ!?
一瞬固まったエマだが毅然とした振る舞いをする
「そうなのですね。なにかこだわりがあるんですか?」
「何年か前に占い師に見てもらったの。その時にこれをするといい!と教えられて続けているのよ」
なんとその占い師から
気になる男性から好かれるには、という悩みにアドバイスをもらったそうだ
・肌は白いほうが良い
・ほっぺたは赤く、酔っているように見せる
・髪は巻いて整える
・ピンクのドレスで可愛らしく
・ワガママを言うくらいが可愛い
と言われメイドにしてもらったものの薄く塗られるだけだったらしい
それなら自分でやるわ!とのことでそれ以来やっているようだ
アドバイス自体は問題ないのだが
ローズがどうも行き過ぎた解釈をしているらしい
たしかに白い肌は流行ってる
でも似合うかどうかは人それぞれ
ローズのメイドも薄めが良いと思ったのだろう
だがローズは暴走し聞き入れなかったということだ
「ローズ様はとても整ったお顔で素敵ですね」
「なっ何よいきなり!」
戸惑うものの嬉しいのかもじもじしている
「でもワタクシ…肌が少し黒いし…目も切れ長だから…可愛くなれないのよ」
しょぼんとしてだんだん俯いてしまう
肌は真っ白ではないが健康的な小麦肌だ
日に焼けてるほどでもないし一般の色だと思う
目はたしかに切れ長だがきれいな印象である
「可愛くなりたいんですか?」
「当たり前よ!!…でもドゥータ様に見向きもされないから…ワタクシにはもう無理よ」
がっし!と両手を掴まれ驚く
「ローズ様はとっても素敵なんです!!」
「ひぇっ」
「私におまかせください!ドゥータ様に綺麗だねと言わせる化粧をします!」
ドゥータの名前に反応したローズは
おずおずと口を開く
「ほんとに…?きれいになれる?」
「ほんとですよ!!」
なおん
「わっ!」
いつのまにかローズの足元にいたブロンシュは
さきほどドゥータにしていたように足にすり寄る
(だいじょうぶだよ)
と言っている気がした
正直さきほどの肉球攻撃(痛くないけど)でブロンシュにビビっていたがなぜか安心できた
「…お願いするわ」
小一時間後
ドゥータはさきほどの部屋で待っていた
1度ブロンシュを探しに行ったが見つからず他のメイドに探してもらっている
いまだ見つかったという報告はない
コンコン
「おまたせしました」
ローズのお直しが終わったらしい
入室してきたので顔を上げると固まった
誰?
あ、いやローズか
化粧をし始める前の顔を思い起こした
この時は普通だったのにいつからか厚くなったな
「あの…」
髪はゆるく巻かれ
ほんのりピンクに色づく頬
さきほどとは全然違う化粧だ
「いや、驚いてしまって申し訳無い」
「いえ…あの、このお化粧はいかがでしょう?」
「え?あぁとても綺麗だよ。似合ってる」
似合ってる
綺麗
(エコー)
「ぐはぁ!!」
「エッ!?」
胸を押さえて悶絶している
エマは前にも見たような光景だなと思った
「にゃっ」
「あっブロンシュ!探したんだぞ!」
フンッとドヤ顔でいるブロンシュに首を傾げる
どうよ!という声が聞こえる気がする
たぶん
「まさかブロンシュも化粧のこと…いや、まさかな」
ローズはホントは素直です。ワガママなのは少しありますがほとんどが占い師の影響でわざといっていました。
この作品の化粧について、現代のメイク方法やアイテムも使われているのでスルーしてくださいませ(^^)