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5.まーちゃんのお誕生日は国王陛下の私的なお茶会で

 レーニちゃんのお誕生日のお茶会が終わると、ハインリヒ殿下のお誕生日が近付いてくる。

 これまでは毎年ノルベルト殿下と一緒にお祝いしていたのだが、ノルベルト殿下が大公殿下として王宮を離れたので、別々にお祝いすることになったのだ。

 ノルベルト殿下はハインリヒ殿下に配慮して、お誕生日から少しずらして昼食会とお茶会と晩餐会を開くことにしていた。

 そうなると問題になるのはノルベルト殿下とハインリヒ殿下のお誕生日の間に生まれたまーちゃんのお誕生日だった。まーちゃんは小さなころからノルベルト殿下とハインリヒ殿下のお誕生日の式典があるときにお誕生日が来るので、国王陛下に招かれて、国王陛下と王妃殿下と一緒にお祝いをしていた。

 今年はどうなるのかと心配していたが、ディッペル家の両親に招待状が来たようである。


「マリアのお誕生日を今までと同じように王宮で共に祝わないかと国王陛下から招待状をいただいている」

「マリアは自分のお誕生日のお茶会を開かなくてもいいですか?」


 レーニちゃんのお誕生会が終わってから両親がまーちゃんに聞くのに、わたくしもクリスタちゃんもふーちゃんも同席していた。

 まーちゃんは少し考えた後で返事をする。


「わたくし、小さなころから国王陛下に招かれて私的なお茶会で祝っていただいていました。今年も同じように私的なお茶会で祝ってほしいと思っています」

「自分のお茶会を開かなくていいんだね?」

「国王陛下の私的なお茶会で祝っていただくのでいいのですね?」

「はい!」


 確認する両親に元気に返事をしたまーちゃんに、今年のまーちゃんのお誕生日の祝い方も決まった。

 もう少しまーちゃんが大きくなって、自分のお誕生日のお茶会が開きたいと言うようになったら、変わってくるのだろうが、今は国王陛下の私的なお茶会で構わないようだ。


 そういえばクリスタちゃんとふーちゃんもお誕生日を一緒に祝っているが、クリスタちゃんがハインリヒ殿下と結婚して皇太子妃となれば、全く変わってくることは間違いない。クリスタちゃんのお誕生日は王家で祝われるようになるのだ。


 クリスタちゃんのお誕生日をふーちゃんと一緒に祝うのも残り二回かと思うと寂しくなってくる。もしかすると、クリスタちゃんのお誕生日にハインリヒ殿下と結婚式を挙げるかもしれないので、それならばふーちゃんと一緒にお誕生日を祝うのは残り一回になってしまう。


 しみじみとそういう年齢にわたくしたちもなっているのだと感じると、寂しさがないわけではないが、クリスタちゃんの新しい門出を祝いたい気持ちもある。特にクリスタちゃんはレーニちゃんのお誕生日もハインリヒ殿下と一緒に過ごして、わたくしに注目してきたり、わたくしのことを気にするようなことがなくなってきた。

 クリスタちゃんは確かに成長しているのだと認めなければいけない。


 わたくしとクリスタちゃんとふーちゃんとまーちゃんと両親、それに婚約者であるエクムント様とレーニちゃんとオリヴァー殿はハインリヒ殿下のお誕生日の式典の前日に王都に入った。

 王宮ではクリスタちゃんとレーニちゃんと部屋が同じだ。


「この前はわたくしのお誕生日に来てくださってありがとうございました」

「レーニちゃん、とても可愛かったですわ」

「ありがとうございます」

「レーニちゃん……いいえ、わたくし、これからは私的な場所でもレーニ嬢とお呼びします」

「クリスタちゃん!?」

「わたくし、レーニちゃんと呼んでいたら、どこかでうっかり出てしまうかもしれません。皇太子妃となるのですから、そんなことは許されません」

「クリスタちゃん……いいえ、クリスタ嬢、立派です。わたくしもクリスタ嬢と呼ばせていただきますね」


 クリスタちゃんは呼び方も改めて、皇太子妃としての自覚を持とうとしている。


「わたくしも辺境伯夫人として、庶民のような『ちゃん付け』はやめましょう」

「お姉様、立派です」


 わたくしもクリスタちゃんのことはクリスタ、レーニちゃんのことはレーニ嬢と呼ぶことを心に決めた。だが、心の中だけではクリスタちゃんのことはクリスタちゃんと今までと同じように呼んでいて構わないだろう。レーニちゃんのことはレーニ嬢と改めるとしても。


「もうエリザベートお姉様と呼べなくなってしまうのですね。少し寂しいです」

「心の中で呼ぶのは自由です。心の中で呼んでください」

「はい、エリザベート嬢」


 レーニ嬢もわたくしの呼び方を改めたようだった。


 お茶会の時間になるとエクムント様とハインリヒ殿下とふーちゃんがわたくしとクリスタちゃんとレーニ嬢を迎えに来る。

 一番いいワンピースを着て廊下に出ると、エクムント様がわたくしの手を取った。


「エリザベート嬢、参りましょう」

「はい、エクムント様」


 クリスタちゃんはハインリヒ殿下に手を取られて、レーニ嬢はふーちゃんと手を繋いでいる。

 国王陛下のサンルームに行くと、お茶の準備がされていた。


 お茶会の会場であるサンルームには、国王陛下、王妃殿下、ノルベルト殿下、ノエル殿下、ユリアーナ殿下が揃っていて、置かれている子どもの椅子にはディートリヒ殿下とディートリンデ殿下も座らされていた。ディートリヒ殿下とディートリンデ殿下は椅子にベルトのようなものを付けて固定して、テーブルの上にはおもちゃがたくさん並べられていた。


「ディートリヒとディートリンデも無事に一歳を超えた。まだ幼いのでお茶会は開かなかったが、この場で祝ってやってほしい」

「陛下ったら、ディートリヒとディートリンデを祝ってほしくてお茶会を開いたようなものなのですよ」

「二人が可愛くて仕方がないのだ」


 笑み崩れている国王陛下に、両親が挨拶をする。


「ディーデリヒ殿下もディートリンデ殿下もおめでとうございます」

「大きくなられましたね」

「ユストゥス、テレーゼ夫人、私の大事な宝物だ」

「陛下ったら本当にディートリヒとディートリンデに甘いこと」


 王妃殿下も国王陛下の様子に、くすくすと笑いを零していた。


 わたくしもエクムント様もお祝いの言葉を述べに行く。


「ディーデリヒ殿下、ディートリンデ殿下、おめでとうございます」

「一歳になられたのですね。生まれたときは小さかったのに、とても立派になられました」

「ありがとう、エリザベート、エクムント」

「お茶会を開くと言ってきかなかったのを、わたくしが必死で止めたのです」

「それだけ殿下たちが可愛かったのでしょう」

「わたくしも気持ちが分かりますわ。フランツとマリアはとても可愛かったですから」


 ご挨拶をして席に戻ると、クリスタちゃんもハインリヒ殿下に連れられて挨拶に行っていた。


「国王陛下、王妃殿下、春休みは指輪の相談に乗ってくださってありがとうございました。わたくし、初めて一人で王都に参りましたが、暖かく迎えてくださって、とても嬉しかったですわ」

「クリスタはハインリヒの婚約者。私の家族のようなものだ」

「素晴らしい指輪が出来上がるといいですね」

「ディーデリヒ殿下もディートリンデ殿下もおめでとうございます」

「二人を祝ってくれてありがとう」

「わたくしたちの大事な末っ子たちですわ」


 国王陛下と王妃殿下とクリスタちゃんの距離も近くなっている気がしていた。


 オリヴァー殿とまーちゃん、レーニ嬢とふーちゃんもご挨拶に行って、国王陛下と王妃殿下と言葉を交わしている。

 国王陛下はご機嫌麗しい様子だった。


「それでは、マリアのお誕生日を祝おうか。ケーキを持ってくるように」


 国王陛下に言われて給仕がケーキを持ってくる。艶々の種を取って半分に切ったサクランボが乗ったタルトは瑞々しくてとても美味しそうである。

 紅茶も配られて、わたくしはミルクポッドを手にしてミルクティーにする。


「ユストゥスが紹介してくれた乳牛のミルクがとても美味しくて、王宮でもそれを使うことにした」

「あの乳牛はエクムント殿にも紹介したのです」

「それはエクムントが喜んだだろう」


 あの長毛の乳牛を父は国王陛下にも紹介していた。

 ディッペル領の牛乳がまた人気になるのだろう。ディッペル領の栄える様子が見えるようでわたくしは嬉しかった。


読んでいただきありがとうございました。

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