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エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない  作者: 秋月真鳥
十二章 両親の事故とわたくしが主役の物語
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18.夏休みの前に

完結後に投稿する番外編について、活動報告でリクエスト募ってます。

よろしければどうぞ。(書けないときはご了承ください)

 夏休み前の試験では、五年生はわたくしとハインリヒ殿下が同点で首席となった。オリヴァー殿もミリヤムちゃんも五位以内には入っている。

 六年生はノルベルト殿下が首席で、四年生はクリスタちゃんが首席でレーニちゃんが二位、三年生はリーゼロッテ嬢が首席だった。

 学年の上位を占めているのがわたくしの主催するお茶会のメンバーで、わたくしはとても誇らしかった。


 夏休み前の最後のお茶会で、ガブリエラちゃんのことが話題に上がった。


「ガブリエラ嬢のお誕生日に今年も行けませんでしたね」

「国王陛下から別荘に招待されたので仕方がなかったですよ」

「ガブリエラ嬢は何歳になったのでしたか」

「確か、十歳ですよ」


 思い出す様子のクリスタちゃんに、お誕生日のお茶会に参加したレーニちゃんが教えてあげている。

 出会ったときには小さかったガブリエラちゃんが、あと二年で学園に入学する年になっている。ガブリエラちゃんが学園に入学するときにはわたくしは卒業しているが、クリスタちゃんとレーニちゃんは六年生でまだ学園にいる。


「ガブリエラ嬢が学園に入学してきたら、このお茶会に招待してあげてくださいね」

「はい、お姉様。きっと招待いたします」


 そのころにはクリスタちゃんがお茶会の主催者になっているだろう。クリスタちゃんが卒業した後はガブリエラちゃんにそれが引き継がれるのかもしれない。学年的にはリーゼロッテ嬢なのだが、リーゼロッテ嬢はリーリエ寮なのでペオーニエ寮のサンルームを借りることができないのだ。

 ガブリエラちゃんはキルヒマン家の後継者で侯爵家の出身だから、間違いなくペオーニエ寮の所属となるだろう。


「ガブリエラ嬢が三年生になるころにはフランツも入学してきます。その二年後にはユリアーナ殿下とマリアとナターリエ嬢とデニス殿も入学してきます」

「フランツ殿やマリア嬢、ユリアーナ殿下やデニスが入学するころには、エリザベート嬢も、ハインリヒ殿下とクリスタ嬢も、みんな結婚しているのでしょうね」


 婚約者がふーちゃんのために、わたくしたちとは結婚の時期が少しずれてしまうレーニちゃんは羨ましそうにしていたが、それでもふーちゃんを選んだことは後悔していない様子だった。


「フランツ殿はわたくしにまたお手紙をくださいました。夏休みは辺境伯領でお会いしましょうと書いてありました」

「レーニ嬢は今年も辺境伯領に来るのですか?」

「今年もエクムント様から招待されています。エクムント様は今年もデニスとゲオルグを招待してくださっているのですよ」

「デニス殿とゲオルグ殿がいらっしゃったら、フランツもマリアも喜ぶでしょう」


 去年から辺境伯領に招待されているデニスくんとゲオルグくんだが、今年も辺境伯領に招待されたようだ。その後の国王陛下の別荘には招待されないので、ユリアーナ殿下が喜ぶのではないだろうか。


「ハインリヒ殿下もいらっしゃいますよね?」

「私とユリアーナも招待されていますね。ノルベルト兄上は、結婚式に向けて準備があるので、夏休みはノエル殿下と過ごされるそうです」

「隣国でノエル殿下のドレスの下見をすることになっているのです。僕もノエル殿下のドレスを見るのが楽しみです」


 ハインリヒ殿下とユリアーナ殿下は辺境伯領に来られるようだが、ノルベルト殿下はノエル殿下のドレスの下見のために隣国に行くので辺境伯領には来られないようだ。

 ノルベルト殿下がいないのは残念だが、ノエル殿下との結婚式の準備は王族として前々からしっかりとしておかねばならないので仕方がないだろう。


 国王陛下の別荘ではお会いできそうなので、わたくしはそれを楽しみにすることにした。


「私はマリア様とディッペル公爵夫妻にお手紙を書きました。今年の夏はぜひシュタール家においでくださるようにと。植えた薔薇の花もお見せしたいですからね」


 まーちゃんはオリヴァー殿にシュタール家に誘われているようだ。まーちゃんが一人で行くわけにはいかないだろうし、わたくしやクリスタちゃんやふーちゃんや両親もついていくことになるだろう。


 夏休みの予定を確認してお茶会は終わった。


 お茶会が終わって解散していく中、リーゼロッテ嬢が珍しくわたくしのところにやってきて声をかけた。


「エリザベート様にご報告しなければいけないことがあります」

「なんでしょうか、リーゼロッテ嬢」

「兄のラルフが遠縁の男爵家に婿入りすることが決まりました。男爵家ですので、ディッペル家と今後関わることはありませんし、リリエンタール家に関わることも絶対にありません」

「そうですか。お幸せに」

「咎めないでくださるのですね……」

「男爵家に婿入りさせられたということは、厄介払いをしたということでしょう。リーゼロッテ嬢がホルツマン家を継ぐのですから、もう関係ない存在になりますね」


 正直なところ、わたくしはラルフ殿のことなど忘れかけていた。

 レーニちゃんにまとわりついて迷惑をかけたときには怒りを感じたが、愛情の反対が憎しみではなく無関心のように、わたくしはラルフ殿に関して完全に無関心になってしまっていたのだ。


「レーニ嬢にはその話はわたくしが伝えます」

「お願いいたします、エリザベート様」


 遠縁の男爵家に婿入りというのは、どこにも出られないようにする、体のいい厄介払いに過ぎない。男爵家でもラルフ殿は監視を付けられて、軟禁状態にされるのだろう。

 それならばわたくしにとっては全く脅威ではなかったし、ラルフ殿のことはもう忘れていいと思っていた。


 ペオーニエ寮に帰るレーニちゃんに近付いて、わたくしはラルフ殿のことを伝えた。


「ホルツマン家のラルフ殿は男爵家に婿入りという形で厄介払いさせられたようです」

「そうなのですね。わたくし、ラルフ殿のことは忘れかけていました。フランツ殿があまりにも可愛くて、愛らしくて」

「フランツと仲が良くて何よりです。これからもフランツのことをよろしくお願いしますね」

「はい、エリザベート嬢。フランツ殿は、デニスやゲオルグよりも上品で大人しくて、それでいて情熱的でわたくし、愛されているのを感じます。小さなフランツ殿がこんなに情熱を持って愛してくださるのだから、大きくなったときにはどんなにわたくしは愛されているのか楽しみなのです」


 ラルフ殿の話題を出したがレーニちゃんは全く気にしていないようで、ふーちゃんの惚気を口にする。それを聞いてわたくしはレーニちゃんは大丈夫だと安心していた。


 部屋に戻るとディッペル領に戻るための荷造りをする。

 普段の服は制服なのでディッペル領に帰るときに着る服以外は必要ないし、勉強道具も宿題の分だけでいいので、荷物はそれほど多くはならなかった。


「クリスタちゃん、ディッペル家に帰りましょう」

「はい、お姉様。荷物ができたところですわ」


 声を掛け合ってペオーニエ寮の前から馬車に乗って列車の駅まで行く。

 列車でディッペル公爵領について、馬車でディッペル家に帰るころには、日は暮れて夕食の時間になっていた。


「ただいま帰りました、お母様、お父様、フランツ、マリア」

「お父様、お母様、フランツ、マリア、わたくしです、クリスタです」


 ディッペル家に帰ると、両親とふーちゃんとまーちゃんが夕食を食べずに待っていてくれる。

 荷物を置いて食堂に行くと、ふーちゃんとまーちゃんは相当お腹が空いていたようで、しばらく無言で夕食を食べていた。


「学園での成績はどうでしたか?」

「わたくしはハインリヒ殿下と同点で首席でした」

「わたくしは首席で、レーニ嬢が二位でした」

「素晴らしい成績だ。エリザベートは発表もしたと聞いているが?」

「辺境伯領に関するグループ発表をしました。長年辺境伯領に通っていますが、まだまだ知らないことがあって、とても興味深かったです」


 学園での生活を聞かれて両親に答えていると、ある程度食べて落ち着いたふーちゃんとまーちゃんも会話に混ざってくる。


「レーニ嬢はお元気でしたか?」

「オリヴァー殿も一緒にグループ発表をしたのですか?」

「レーニ嬢はお元気でしたよ。フランツからの手紙を喜んでいました。グループ発表はわたくしとハインリヒ殿下とオリヴァー殿とミリヤム嬢で組んで行いました」

「レーニ嬢、私のお手紙を喜んでくれていたのですね」

「お姉様はオリヴァー殿と一緒に発表ができて羨ましいです」

「オリヴァー殿からシュタール家へのご招待の手紙をもらったのではないですか?」

「ご存じでしたか! そうなのです。わたくしに薔薇の花を見に来てほしいと書いてありました」


 羨ましがっているまーちゃんにシュタール家への招待の手紙のことを言えば、ぱっと表情を変えて嬉しそうにする。

 夏休みが始まる。

 エクムント様のお誕生日と、ユリアーナ殿下のお誕生日と、わたくしのお誕生日で秋まで延長される長い長い夏休みが。


読んでいただきありがとうございました。

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