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エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない  作者: 秋月真鳥
十一章 ネイルアートとフィンガーブレスレット
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44.冬休み明けから春休みまで

 冬休みの間にわたくしとクリスタちゃんはふーちゃんとまーちゃんとたくさん遊んだ。

 毎朝お散歩に行ったし、折り紙もしたし、ままごとのお茶会にも招かれた。絵本もたくさん読んであげたし、クリスタちゃんは歌も歌ってあげた。

 ふーちゃんとまーちゃんはわたくしとクリスタちゃんにピアノを披露してくれた。


「男性がピアノを弾いてはいけないという決まりはないと思うのです。私はマリアと一緒に学びたいと思ったのでピアノを習っています」


 ピアノの椅子の高さを調整しながら言うふーちゃんに、わたくしもクリスタちゃんも感動する。


「マリアと一緒に学べることが楽しみですものね」

「マリアとフランツは年の差が一歳と少ししかないので、ずっと一緒に学んでいけますよね」

「学園に入学するまでは、マリアと一緒に学ぶのだから、できるだけ同じことをしたいのです。私は刺繍も学んでいます」

「いいことだと思います」

「わたくしもお姉様と一緒に学びました。共に学べる相手がいるのは大事なことです」


 ピアノだけでなく刺繍も学んでいると聞いて驚いてしまうが、オリヴァー殿がフィンガーブレスレットの事業を手伝っているように、ふーちゃんもいつそんな事業がディッペル領で起きるか分からない。そのときに入門となる針や糸の使い方を知っているのは領主として大事なことだろう。


「マリア、隣りにおいで」

「はい、お兄様」


 ふーちゃんとまーちゃんは並んで連弾を聞かせてくれた。

 わたくしがふーちゃんとまーちゃんくらいの年のころにクリスタちゃんと連弾をしたことを思い出して、わたくしはとても感慨深かった。

 まーちゃんはふーちゃんの伴奏で歌ってもいた。

 わたくしもクリスタちゃんの伴奏をして、クリスタちゃんが歌って、キルヒマン侯爵夫妻のお茶会に出たことを思い出す。

 懐かしい思い出に浸れるよい時間だった。


 冬休みが終わるとわたくしとクリスタちゃんは学園に戻る。

 学園では今年度の終わりの試験に向けた取り組みが行われていた。


 年度末の試験は、今年度に習ったことのすべての範囲が試験に出されることになる。全部の範囲を復習しておかなければいけない。


 わたくしはハインリヒ殿下とオリヴァー殿とミリヤムちゃんと一緒に勉強をして、クリスタちゃんはレーニちゃんと一緒に勉強をしていた。

 リーゼロッテ嬢は同級生と勉強をしているようだし、ノルベルト殿下も同級生と勉強をしている様子だった。


 この試験が終わればノルベルト殿下は年度が替われば六年生になる。

 最上級生だ。


 あるとは聞いていたのだが、わたくしは来年度五年生になると意識してから、はっきりとその事実を知った。


 プロムがあるのだ。

 五年生はジュニアプロム、六年生はプロムが卒業式の日に開かれる。

 プロムというのはダンスやお喋りをする行事なのだが、学園のプロムは少し意味合いが違う。学園のプロムは舞踏会の練習を兼ねているのだ。

 学園に所属する生徒が舞踏会に参加したときに失敗しないように、舞踏会の雰囲気を味わってもらうのが学園のプロムだ。

 舞踏会なので当然パートナーが必要になる。


「ノルベルト殿下はノエル殿下のジュニアプロムやプロムのときにパートナーとして出席したのですか?」

「僕以外がノエル殿下のパートナーにはなれないでしょう。ジュニアプロムもプロムも、申し込まれたら学年でなくても参加できますし、学園外のひとでも参加できますよ」


 ノルベルト殿下に教えてもらってわたくしの頭に浮かんだのはエクムント様だった。

 ジュニアプロムにもプロムにもわたくしはエクムント様に申し込みをしてお願いするだろう。エクムント様は申し込みを受けてくださるだろうか。

 来年のことなのにそわそわしてしまう。


「今年も僕はノエル殿下に申し込もうと思っています。ノエル殿下以外のパートナーなどあり得ませんから」


 ノルベルト殿下は卒業して大学に通っているノエル殿下にジュニアプロムのパートナーを申し込むと決めているようだった。

 わたくしも来年は他人事ではないし、ハインリヒ殿下も、オリヴァー殿も、ミリヤムちゃんも来年にはジュニアプロムに参加する。


「オリヴァー殿はどうするのですか?」

「マリア様は参加されるには幼すぎるかもしれませんが、時間を考えてお誘いしてみます」


 短時間でもまーちゃんを誘ってくださるというオリヴァー殿の誠実さにわたくしは感謝する。オリヴァー殿がジュニアプロムに参加できないのもどうかと思うし、まーちゃん以外をパートナーとしてもまーちゃんが悲しむだろうというのは分かっていた。


「マリア様にはエリザベート様とクリスタ様の部屋で休んでもらうようにできないか、来年になったらディッペル侯爵夫妻に話してみます」


 ディッペル領からまーちゃんが来るとなると、泊りになるので場所を決めなければいけないが、わたくしとクリスタちゃんの部屋ならば安心だ。まーちゃんくらいならば、わたくしが一日なら一緒に眠ればいい。


「マリアのことを考えてくださってありがとうございます」


 お礼を言っているクリスタちゃんに、レーニちゃんが少し考えているようだ。


「フランツ殿に来ていただいた場合には、泊まる場所がありませんね」


 女子寮は女子しか入ってはいけないことになっている。ふーちゃんがいくら小さいとはいえ、わたくしとクリスタちゃんの部屋に泊めることはできないだろう。それに、レーニちゃんはわたくしの一学年下なので、ジュニアプロムのときにはわたくしはまだ六年生として学園にいるが、プロムのときには学園を卒業している。


「フランツが来られないから、レーニ嬢がプロムに参加できないというのは残念ですよね」

「フランツが泊まるところがどこかないものでしょうか」


 わたくしとクリスタちゃんで考えていると、ハインリヒ殿下が声をあげた。


「フランツ殿なら、王宮に泊まってもいいのではないでしょうか?」

「いいのですか?」

「私の両親も賛成してくれると思います。フランツ殿は父の学生時代の学友で親友の息子なのですから」


 ハインリヒ殿下がそう言ってくださるというのはとても心強い。


「フランツ殿はそのころ九歳か十歳でしょう。一人で王宮の客間に泊まれると思います。王宮までは私が一緒に連れていきます。クリスタ嬢のパートナーとしてプロムには参加していると思うので」


 ハインリヒ殿下の言葉にわたくしは安心していた。


 年度末の試験の結果は五年生がノルベルト殿下が首席、四年生はわたくしが首席でハインリヒ殿下が二位、ミリヤムちゃんとオリヴァー殿は同点で三位だった。三年生はクリスタちゃんが首席で、レーニちゃんが二位、二年生はリーゼロッテ嬢が首席だった。


 成績が発表されてからのお茶会ではハインリヒ殿下はとても悔しがっていた。


「ケアレスミスがなければ、エリザベート嬢と同点で首席だったのに」

「小さなミスも実力のうちだよ、ハインリヒ」

「ノルベルト兄上、それでも悔しいのです」


 ノルベルト殿下に言われていたが、ハインリヒ殿下は一問間違えただけで、わたくしと成績は拮抗していた。わたくしが全問正解できたのは、オリヴァー殿が詩の解釈を教えてくれたおかげだった。ハインリヒ殿下が一問間違えてしまったのも詩の試験問題だった。

 詩に関しては色んな解釈があるので、ハインリヒ殿下が間違えてしまっても仕方がないと思うと同時に、わたくしが間違える可能性もあるのかと思うと、ずっと首席を守り通しているだけに怖くもなってきた。


「クリスタ嬢にはどうしても敵いません。一緒に勉強しているはずなのに」

「わたくしは、部屋で分からないところがあったらお姉様にすぐに教えてもらえるからです」

「エリザベート嬢がついているのであれば敵いませんね」


 レーニちゃんもクリスタちゃんに負けたことを悔しそうにしていた。


 試験が終われば春休みが始まる。

 春休みにはふーちゃんとクリスタちゃんのお誕生日も待っている。


 クリスタちゃんはふーちゃんと一緒にお誕生日を祝うが、今年もそうなるだろう。


読んでいただきありがとうございました。

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