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エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない  作者: 秋月真鳥
十一章 ネイルアートとフィンガーブレスレット
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33.運動会の結果

 運動会の結果から言えば、ペオーニエ寮が優勝した。二位はリーリエ寮で、三位はローゼン寮だった。


 練習の甲斐があってハインリヒ殿下とオリヴァー殿は善戦された。ペオーニエ寮のハインリヒ殿下の方が他の生徒の頑張りもあって、リーリエ寮のオリヴァー殿を抜かしていた。

 大縄跳びはクリスタちゃんとレーニちゃんが主導になって猛特訓をしたので、ペオーニエ寮が一位、ローゼン寮が二位、リーリエ寮が三位という結果だった。ペオーニエ寮とローゼン寮は回数が一度同じになって、もう一回回して決勝戦までもつれ込んだのがとても見どころがあった。

 走り幅跳びではリーゼロッテ嬢のリーリエ寮が一位になったようだった。ペオーニエ寮は二位、ローゼン寮は三位だった。

 ノルベルト殿下が今年は参加しなかったダンスの競技では、ペオーニエ寮とリーリエ寮が同率で一位になって、ローゼン寮が三位になった。ダンスの競技も見ていたが、体育館で踊るペアの中にノルベルト殿下とノエル殿下がいないのは少し寂しい気がした。

 乗馬では男子の部でノルベルト殿下が優勝し、ペオーニエ寮が一位、リーリエ寮が二位、ローゼン寮が三位だった。

 女子の部ではわたくしが活躍することができて、ペオーニエ寮が一位になれて、ローゼン寮が二位、リーリエ寮が三位だった。


 結果として最初に挙げた、ペオーニエ寮が優勝、二位がリーリエ寮、三位がローゼン寮ということになった。


 運動会は昼食を挟んでお茶の時間までには終わるので、わたくしは着替えてペオーニエ寮の中庭のサンルームの鍵を借りてきて、お茶会の準備をする。

 給仕が紅茶を用意して、注文していたお茶菓子も届いて、お茶会の準備が出来上がると、ハインリヒ殿下もノルベルト殿下もクリスタちゃんもレーニちゃんもミリヤムちゃんもリーゼロッテ嬢もオリヴァー殿も着替えてサンルームに集まってきていた。


 サンルームで紅茶を飲みながら運動会の感想を言い合う。


「大縄跳びはローゼン寮に負けるかと思いましたわ」

「ローゼン寮も練習をしていましたからね」

「それでも、ペオーニエ寮には適いませんでした」


 クリスタちゃんとレーニちゃんとミリヤムちゃんが和やかに話している。


「走り幅跳びでは一位になれたのですが、わたくし一人の力では足りなかったようですわ」

「リーゼロッテ嬢は素晴らしい成績を出していたではないですか」

「走り幅跳びの一位だけでは総合の一位は無理でしたわ」


 残念そうにしているリーゼロッテ嬢にわたくしが声をかけるが、残念な気持ちは消えないようだった。


「初めて乗馬で参加しましたが、馬との相性がよくて、一位になれました」

「ノルベルト兄上の気持ちが馬に通じたのですね」

「そうかもしれないね」


 ノルベルト殿下は初めての乗馬の競技で成績を残せて笑顔を見せている。


「オリヴァー殿は速かったけれど、ペオーニエ寮の総合力で勝ったようなものですね」

「ペオーニエ寮の生徒の足は本当に速かったです」


 ハインリヒ殿下とオリヴァー殿はお互いの健闘を称えあっていた。


 諍いもなくいい運動会だったので、わたくしたちはお茶会を終えて寮に戻ってゆっくり休むことにした。

 真夏ではないとはいえお日様の光を長時間浴びていたので、わたくしもクリスタちゃんも日焼けしていた。

 わたくしもクリスタちゃんも日焼けすると肌が浅黒くなるのではなくて、肌が赤くなって皮が剥けたり、酷いときには水膨れになるような体質なので、日焼けには気をつけておかなければいけなかった。


 わたくしが一年生のときに同室になってくださっていたゲオルギーネ嬢に教えられたローションを持ってシャワールームに行く。レーニちゃんもシャワールームの順番を待っていた。


「レーニ嬢も日焼けをしたでしょう。日焼けにはこのローションがよく効くのです」

「お借りしてもいいですか?」

「使ってください」


 レーニちゃんにもローションを貸して、シャワーを浴びてからわたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんはそのローションをしっかりと日焼けしたところに塗っておいた。ローションはひんやりと冷たく、日焼けで火照った体に心地よい。


「このローション、どこで買いましたか?」

「一年生のときに同室だったゲオルギーネ・ザックス嬢が教えてくれたのです」

「わたくしも買っておきますわ」


 レーニちゃんも日焼けをすると赤くなる体質のようで、そのローションの売っている店を教えるとメモを取っていた。


 寮生活をしている間は、食事は基本的に食堂でとる。

 シャワーも浴びてローションも塗ってすっきりとした体で食堂に行くと、リーゼロッテ嬢とミリヤムちゃんとオリヴァー殿も来ていた。ペオーニエ寮のテーブルに招いて一緒に夕食を食べる。


「明日からは通常の授業に戻りますね」

「分からないところがあるのですが、教えてもらえますか?」

「私でよければ」


 リーゼロッテ嬢が同じリーリエ寮のオリヴァー殿に勉強を教わっている。わたくしはリーゼロッテ嬢に関して気になっていることがあった。


「リーゼロッテ嬢は同級生とは仲がいいのですか?」

「はい。仲のいい同級生もいます」

「同級生には勉強を聞かないのですか?」

「同級生に聞くよりもオリヴァー様に聞く方がよく分かるのです」


 それでわたくしは気付いた。


「もしかして、リーゼロッテ嬢は二年生の首席ですか?」

「はい。そうです」


 それならば、同級生に聞いても分からないというのも理由が分かる。リーゼロッテ嬢の方が勉強ができるので、リーゼロッテ嬢には聞く相手がいないのだ。


「わたくしもよろしければいつでも教えますわ。聞いてください」

「ありがとうございます、エリザベート様」


 お礼を言うリーゼロッテ嬢にわたくしは当然のことだと思っていたが、リーゼロッテ嬢は恥ずかし気に目を伏せた。


「わたくし、エリザベート様の主催のお茶会に招かれたとき、恥ずかしいことに、お茶会で無視されて馬鹿にされて苛められるのだと思っていました」

「そんなことは致しませんわ」

「そうされて当然のことをわたくしの兄や叔父や叔父の養子はしてきました。ですので、例えそうであっても、それでエリザベート様たちの気が収まるのならば、わたくしは耐えようと思っていました」

「リーゼロッテ嬢……」

「それなのに、エリザベート様はわたくしを温かく迎えてくださって、クリスタ様もレーニ様もミリヤム嬢もオリヴァー様も、ハインリヒ殿下やノルベルト殿下までわたくしと話してくださることがあります。わたくしはこの幸運にどれだけ感謝してもし足りないほどです。エリザベート様、本当にありがとうございます」


 リーゼロッテ嬢の生家であるホルツマン家はそれまで酷かった。

 兄のラルフ・ホルツマン殿は従兄であるとはいえ、身分違いのレーニちゃんに近寄って、結婚を迫っていた。レーニちゃんはホルツマン家の前の父親がレーニちゃんを全く愛さずに、妾とその娘を可愛がっていたので、ホルツマン家とお近付きになりたくないと思っていたのに、近付かないでほしいと言われたら手紙を送ってくるような酷い勘違いぶりだったのだ。

 それもレーニちゃんがふーちゃんと婚約することで収まり、ラルフ殿は学園を辞めて蟄居を命じられた。

 その後もホルツマン家の養子になっていたローザ嬢がクリスタちゃんに絡んできて、挙句の果てにノルベルト殿下を侮辱するようなことを言おうとしたのだ。それは寸前で止められたが、ホルツマン家はローザ嬢と義理の父親を病死ということにして処理しようとまで考えた。

 人が死ぬような事態はわたくしは本意ではなかったので、止めて、ローザ嬢は一生修道院から出られないようにして、義理の父親は断種の上、監視をしながら平民に落とすという内容で双方が納得した。


 こんなことがあったからリーゼロッテ嬢がわたくしにお茶会に誘われたときに、警戒したのは仕方がないことだろう。それにしても、リーゼロッテ嬢は苛められるかもしれないという恐怖に打ち勝って、お茶会に参加して耐えることでホルツマン家の犯した罪を償おうとしたのだ。


「わたくしはリーゼロッテ嬢がローザ嬢を止めようとしていたことも知っています。そのときにまっとうなことを言っていたのも知っています。リーゼロッテ嬢は胸を張ってわたくしのお茶会に招かれていいのです」

「ありがとうございます、エリザベート様」


 リーゼロッテ嬢の手を握って言えば、リーゼロッテ嬢は深く頭を下げてお礼を言っていた。


「そういえば、リーゼロッテ嬢も日焼けをしたのではないですか?」

「はい、赤くなっています」


 答えたリーゼロッテ嬢にわたくしはゲオルギーネ嬢が教えてくれたローションを教えるつもりだった。


読んでいただきありがとうございました。

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