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エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない  作者: 秋月真鳥
十章 ふーちゃんとまーちゃんの婚約
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18.オリヴァー殿とレーニちゃんを招待する

 夏休み前の試験で、わたくしはハインリヒ殿下を一問だけ押さえて首席になった。詩の解釈の試験もあったのでかなり厳しい争いとなったが、なんとか首席になることができてわたくしは安堵していた。

 オリヴァー殿もミリヤムちゃんも上位五位以内には入っていた。


 貼りだされた成績表では、二年生の順位も四年生の順位も六年生の順位も分かる。二年生はクリスタちゃんが首席で、レーニちゃんが二位だった。四年生はノルベルト殿下が当然のように首席だ。六年生はノエル殿下が首席だった。


 夏休み前の最後のお茶会には、オリヴァー殿も招かれていた。

 寮が違っても、ペオーニエ寮の寮生が誘えば、ペオーニエ寮のお茶会にリーリエ寮のオリヴァー殿も参加できる。


 わたくしは事前にノエル殿下とノルベルト殿下にお話ししておいたのだ。


「三年生に、ノエル殿下の詩を素晴らしく解釈できる生徒がおります。ノエル殿下の詩が大好きで、ノエル殿下のことを尊敬しているようです」

「それならば、一度お会いしてみたいですね」

「僕の愛するノエル殿下の詩をそんなに評価してくれている相手がいるのならば、話してみたいものですね」


 興味を持ったノエル殿下がノルベルト殿下に招待状を書いてもらって、オリヴァー殿のお茶会参加は実現したのだった。


「ノエル殿下、シュタール侯爵家のオリヴァー殿です」

「オリヴァー・シュタールです。辺境伯領から出ることがほとんどないので、ノエル殿下にはお初におめにかかります」

「ようこそいらっしゃいました。わたくしの詩を解釈して教諭に褒められているとのこと。わたくしの詩が大好きだと聞いておりますが」

「はい。ノエル殿下の詩には、生きることの喜び、人生を謳歌する明るい考えが組み込まれているような気がします。その明るさが私はとても好きです」

「そう言っていただけると嬉しいですわ。オリヴァー殿、今後わたくしのお茶会に招かれてくれますか?」

「ノエル殿下の新作の詩も聞けるのですね? ノエル殿下のお茶会は詩のサロンのようになっていると聞き及んでおります。そこに参加できるのは本当に嬉しいです」


 オリヴァー殿の言葉はノエル殿下の心に響いたようであるし、オリヴァー殿はこれからノエル殿下のお茶会に参加することになった。

 ノエル殿下の詩を深く理解する同級生がいるということは、わたくしにとってもハインリヒ殿下にとってもミリヤムちゃんにとっても心強いことだった。


「わたくし、久しぶりに詩を読みたくなってきましたわ。でも、すぐには思い付きません。夏休みが開けた最初のお茶会では新作の詩を披露しますので、オリヴァー殿も楽しみにしていてくださいね」

「心よりお待ちしております」


 深く頭を下げたオリヴァー殿にハインリヒ殿下が声をかける。


「クリスタ嬢の詩も見事なのです」

「クリスタ様の詩も教科書に載っているものを拝見しました。エリザベート様のハイクも、ハインリヒ殿下のハイクも」

「私のハイクも教科書に載っているのですか!?」

「私は詩の教科書が配られたときに、隅々まで目を通しました。新しい文化に触れるのはとても楽しいことなので」

「私は詩はよく理解できなかったので、全部に目を通してはいませんでした。オリヴァー殿からコツを教えてもらった今なら、理解ができそうです。夏休みの間に全部に目を通します」

「ぜひそうなさってください。素晴らしい詩がたくさんですから」


 ハインリヒ殿下とオリヴァー殿の間でも会話が弾んでいる。オリヴァー殿は爽やかで気持ちのいい青年のようだ。わたくしは小さな頃に見たエクムント様の姿と重なって、オリヴァー殿に何となく親近感がわく。


「クリスタ、エクムント様にお願いして、夏休みにオリヴァー殿を辺境伯家にお招きしようかと思っています」

「いいと思います。オリヴァー殿、わたくしの弟のフランツも詩を読むのです。三歳の頃から詩を読んでいますがとても才能があるのです」

「フランツ様のお噂も聞いています」

「フランツにも会ってやって、フランツの詩も聞いてやってください」

「喜んでお聞きします」


 クリスタちゃんに夏休みの予定を伝えると、オリヴァー殿にふーちゃんのことを話している。ふーちゃんも詩を理解してくださる方ならば会いたがるだろうし、詩を披露したがるだろう。


「夏休み、ディッペル公爵家とオリヴァー殿は辺境伯家に集まるのですね。わたくしも行きたいですわ」


 羨ましそうにしているレーニちゃんに、わたくしはすぐに声をかける。


「レーニ嬢もいらっしゃいますか?」

「よろしいのですか?」

「エクムント様に聞いてみないといけませんが、きっといいと言ってくださると思います」

「嬉しいです。わたくし、ディッペル家の皆様と夏休みを過ごしたかったのです」


 わたくしたちディッペル家の家族は一週間程度辺境伯家に泊まることになるだろうが、レーニちゃんはもっと短いかもしれない。そうであっても、レーニちゃんが辺境伯家に泊まって、わたくしたちと行動を共にすることがあれば、ふーちゃんも喜ぶだろうし、まーちゃんもレーニちゃんが大好きなので喜ぶだろう。


「レーニ嬢はフランツの婚約者ですもの。辺境伯家に一緒に泊まって悪いわけがありませんわ」

「エクムント様によろしくお伝えください。わたくしは母に許可をとります」

「はい、分かりました」


 レーニちゃんとも約束をして、わたくしはお茶会が終わると寮で荷物を纏めてディッペル公爵領に帰ったのだった。

 ディッペル公爵領に帰るとまずはエクムント様に手紙を書いて、レーニちゃんとオリヴァー殿のことをお伝えする。

 続いて、両親にも話をしておく。


「わたくしたち、辺境伯家に招かれているでしょう? レーニ嬢も一緒に行きたいと言ってくださったので、エクムント様にお願いの手紙を送っております」

「レーニ嬢が来るのですか?」

「フランツ、嬉しそうだね。エクムント殿はきっと許してくれるだろう」

「レーニ嬢は学園に入学する前からディッペル家に泊まったり、エリザベートとクリスタとフランツとマリアがリリエンタール家に泊まったりして、交友を深めて来ました。辺境伯家でも楽しく過ごせることでしょう」

「わたくしの同級生で、辺境伯領出身のオリヴァー・シュタール侯爵令息がノエル殿下の詩をとてもよく理解されていて、わたくしとハインリヒ殿下とミリヤム嬢に詩の解釈を教えてくださっているのです。辺境伯領の方が学園に来ているのは珍しいので仲良くなりたいと思って、エクムント様に辺境伯家に招待してくださるようにお願いしています」

「オリヴァー殿か、辺境伯領の貴族とはあまり交友がないが、エリザベートが辺境伯家に嫁ぐのだからこれからは辺境伯領の貴族とも交流を持って行かなければいけないね」

「同級生に優秀な方がいてよかったですね。辺境伯家でお会いできるのが楽しみです」


 両親はわたくしの申し出に賛成してくれた。

 安心してわたくしは部屋に戻って辺境伯家に持っていく荷物を用意する。


「お姉様、荷物が入りません」

「わたくしもです」


 大きなトランクでもかさばるドレスや靴を入れると、すぐにいっぱいになってしまう。わたくしとクリスタちゃんはトランクでパズルゲームをしている気分になっていた。


 ドレスやワンピース、下着や靴下やサンダルや靴、日除けの帽子と薄手の上着、トランクに詰め込んでいくとどうしても蓋が締まらない。


「何を減らせばいいのでしょう?」

「ドレスは二着は持って行きたいところですよね。ワンピースも四着は持って行きたいです。パジャマも必要だし、下着と靴下は日数分は必要ですよね。替えの靴も必要だし、サンダルも、日除けの帽子も、日除けの上着も必要です」

「もっと小さく畳めないものでしょうか」


 試行錯誤するわたくしとクリスタちゃんに、最終的にはマルレーンとデボラが手伝ってくれてトランクの蓋は無事に閉じたのだった。

読んでいただきありがとうございました。

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