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エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない  作者: 秋月真鳥
十章 ふーちゃんとまーちゃんの婚約
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9.まーちゃんの白い薔薇

 ノルベルト殿下のお誕生日のお茶会で、ふーちゃんとまーちゃんはレーニちゃんを挟んで手を繋いでいた。

 ふーちゃんもまーちゃんもレーニちゃんのことが大好きなのだ。

 レーニちゃんはふーちゃんとまーちゃんのために座れる場所に移動していた。


「フランツ、マリア、レーニ嬢にご迷惑をおかけしないようにするのですよ」

「はい、私、レーニ嬢と楽しくお話しします」

「わたくし、レーニじょうがだいすきなのです。めいわくをおかけしたりしないわ」


 本当にふーちゃんとまーちゃんのことをレーニちゃんに全部任せていいのか迷ってしまったので、わたくしもエクムント様と同席することにした。


「二十五歳の私と、四歳のマリア嬢と、このテーブルは年齢の幅が広いですね」


 苦笑しているエクムント様に、わたくしは申し訳なくなる。


「フランツとマリアに付き合わせてしまって申し訳ありません」

「いいのですよ。私は小さい子は大好きです。末っ子で弟妹がいなかった分、甥や姪も可愛がっています。次兄のところにはまた甥が生まれたのですよ」

「そうなのですね! ガブリエラ嬢とフリーダ嬢とケヴィン殿は、弟が増えたのですね」

「そうです。名前はミヒャエルといって、とても可愛いのです」


 ガブリエラちゃんのところにはフリーダちゃんとケヴィンくんという妹と弟がいた。そこに更にミヒャエルくんが生まれたとなると、四人兄弟になる。


「ガブリエラ嬢、フリーダ嬢、ケヴィン殿、ミヒャエル殿……四人ですね。我が家と同じです」

「ディッペル家もご兄弟が四人でしたね。ガブリエラが長兄のところに養子に行っているので、正確には三人兄弟なのですが」

「そうでした。ガブリエラ嬢はキルヒマン侯爵夫妻の養子になっていました」

「わたくし、おねえさまがふたりいて、おにいさまもいて、とてもしあわせなのです。うまれてきたミヒャエルどのも、きっとかわいがられてしあわせなのでしょうね」


 ふーちゃんとまーちゃんの言葉にエクムント様は目を細めている。


「そうですね。そう思ってくれるようになったらいいと思います」

「エクムント様も甥が増えてよかったですね」


 ミヒャエルくんの誕生をわたくしは心からお祝いした。


 晩餐会にはふーちゃんとまーちゃんは出られなかったが、翌日には国王陛下からお茶会のお誘いを受けているので、大人しく部屋に戻って行った。

 国王陛下のお茶会には、エクムント様もレーニちゃんも招かれているようだ。

 エクムント様はわたくしの婚約者として、レーニちゃんはふーちゃんの婚約者として国王陛下のお茶会に出席する。


 まーちゃんにとっては、毎年そこでお誕生日を祝ってもらっているので、とても楽しみな日になるだろう。


 晩餐会が終わると、わたくしとクリスタちゃんは部屋に戻った。

 ドレスを脱いでお風呂に入って、歯磨きも終えてわたくしが寝ようとすると、クリスタちゃんは簡易な机に向かって何か書いている。


「もしかして、詩ですか?」

「はい! ハインリヒ殿下のお誕生日に詩を捧げるとお約束しました。最高のものを作らねばなりません」

「夜更かしはつらいのではないですか?」

「下書きだけでも今夜中に書き上げておきたいのです」

「明日のお散歩はわたくしとふーちゃんとまーちゃんだけで行きますから、その間に書けばいいのではないですか?」

「お姉様、協力してくださるのですか!?」

「クリスタちゃんのためですからね」


 明日のお散歩はわたくしとふーちゃんとまーちゃんだけで行くと言えば、クリスタちゃんは感謝してくれた。

 クリスタちゃんも夜更かしすることなく眠って、わたくしとクリスタちゃんは翌朝はふーちゃんとまーちゃんに起こされて、クリスタちゃんは部屋で詩作をして、わたくしはふーちゃんとまーちゃんとお散歩に出ようとする。だが、ふーちゃんとまーちゃんはクリスタちゃんが来ないのが疑問のようだった。


「クリスタお姉様はどうして来られないの?」

「くりすたおねえさまは、おびょうきなの?」

「違いますよ。クリスタちゃんは、ハインリヒ殿下のために詩を作っているのです」

「クリスタお姉様が詩を!?」

「わたくし、しはよくわかりません……」


 困った顔になっているまーちゃんを置いて、ふーちゃんは部屋の中に入ってしまった。


「クリスタお姉様、私も一緒に詩を作ります」

「ふーちゃんも詩を作るのですか?」

「レーニちゃんに、詩をプレゼントしたいのです」

「それはとても素敵な考えだと思います。一緒に詩を作りますか」

「はい、クリスタお姉様」


 ふーちゃんとクリスタちゃんが意気投合しているのを見ていると、まーちゃんがわたくしの手を引っ張る。


「わたくし、おさんぽのほうがいいです。エリザベートおねえさま、おさんぽにいきましょう」

「まーちゃんはお散歩がいいのですね、では、行きましょう」


 まーちゃんと手を繋いでわたくしは王宮の庭に出た。

 王宮の庭は広いが行く場所は大体決まっているので、レーニちゃんとデニスくんとゲオルグくんに会うことができた。


「おはようございます、エリザベートお姉様、まーちゃん」

「おはようございます、レーニちゃん、デニスくん、ゲオルグくん」

「今日はふーちゃんはいないのですね、クリスタちゃんも」

「二人は用事があるようで、部屋にいます」

「体調が悪いとかではないのですね」

「はい、二人とも元気ですよ」


 クリスタちゃんとふーちゃんがいないので体調不良を気にしていたレーニちゃんだったが、二人とも元気だと告げると笑顔になる。


「チューリップは咲いていませんが、白薔薇が咲いていますよ。とても綺麗です」

「しろばら……わたくし、いちりんほしいです」


 白薔薇を見て欲しがるまーちゃんに、デニスくんが教えてくれている。


「このおにわのおはなは、かってにきってはいけないとおねえさまがいっていました。おうきゅうのにわしさんにきょかをとらなければいけないって」

「わたくし、しろばら、ほしかった……」


 まーちゃんが白薔薇の茂みを見上げてしょんぼりしていると、レーニちゃんが庭師を探して来てくれる。


「わたくしはリリエンタール家のレーニです。ディッペル家のマリア嬢が白薔薇を一輪いただきたいと言っているのですが、一輪分けてくださいませんか?」

「一輪ならば問題はないでしょう。お切りいたします。棘も取りましょう」


 庭師はまーちゃんのために白薔薇を一輪切ってくれて、棘も取ってくれた。


「レーニじょうほんとうにありがとうございます」


 まーちゃんはお礼を言って白薔薇を受け取った。


 朝食と昼食を食べてゆっくりしていると、お茶の時間が近付く。クリスタちゃんとふーちゃんはわたくしがゆっくりしている間も詩作に励んでいるようだった。


 お茶の時間にはエクムント様がわたくしを、ハインリヒ殿下がクリスタちゃんを迎えに来てくださった。


「お父様、レーニ嬢を迎えに行きたいのです」

「それでは、一緒に行こうか」


 ふーちゃんはレーニちゃんを迎えに行っていた。


 国王陛下と王妃殿下に許可された者しか入れない王宮の庭のサンルームに行けば、お茶会の準備が整っていた。

 わたくしはエクムント様の隣りに、クリスタちゃんはハインリヒ殿下の隣りに、ふーちゃんとまーちゃんはレーニちゃんを挟んで座る。


 ノルベルト殿下はノエル殿下と仲睦まじく隣り同士で座っていた。


「ユストゥス、今日はそう呼ばせてもらうよ」

「ベルノルト陛下、学生時代に戻ったようですね」

「テレーゼ夫人、今日はよろしくおねがいします。マリア嬢のお誕生日のケーキも準備しました」

「お気遣いありがとうございます」


 国王陛下と父は学生時代のように呼び合い、王妃殿下も母と親し気に話している。ユリアーナ殿下は国王陛下と王妃殿下の間に座っていた。

 お茶会は和やかに始まった。

読んでいただきありがとうございました。

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