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エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない  作者: 秋月真鳥
九章 クリスタちゃんの婚約と学園入学
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42.ディッペル家への帰還

 ディッペル家に帰るとふーちゃんとまーちゃんが部屋から出て来てわたくしとクリスタちゃんに飛び付く。重いトランクは護衛に預けているので安心だったが、勢いよく飛び付かれてわたくしもクリスタちゃんもバランスを崩しそうになった。


「フランツもマリアも自分たちが大きくなっていることに気付いてください。エリザベートとクリスタがこけてしまいますよ」

「おかあさま、おねえさまたちがかえってきたのがうれしくて」

「おかあさま、ごめんなさい」

「お母様じゃなくて、エリザベートとクリスタに謝りなさい」

「エリザベートおねえさま、ごめんなさい」

「クリスタおねえさま、つぎからきをつけます」


 素直に謝られてしまうと、わたくしもクリスタちゃんもふーちゃんとまーちゃんが可愛いのであっさりと許してしまう。

 手を繋いで行ったのは子ども部屋だった。


「じぶんたちのおへやはできたけど、ひとりであそぶのはたのしくないから」

「おにいさまとあそぶために、こどもべやにいっているの」


 自分たちの部屋ができても遊ぶときには一緒に過ごせるようにふーちゃんとまーちゃんは子ども部屋で過ごしているようだ。オモチャも子ども部屋に移動させてきていた。

 荷物を部屋に置いて、着替えて子ども部屋に戻れば、ふーちゃんとまーちゃんがソファに座って待っている。


「エリザベートおねえさま、えほんをよんで!」

「わたくし、じぶんでよめるようになったけど、よんでもらうのもすきなの」


 ふーちゃんとまーちゃんはまだ小さい。自分で字が読めるからといって、絵本を自分で読むのは少し早いのかもしれない。絵本を読んで欲しがっても仕方がない年齢だと納得して、わたくしはふーちゃんとまーちゃんが持ってくる絵本を読んだ。


「わたくし、ピアノのれんしゅうとおうたのれんしゅうもはじめたの」

「わたしはダンスとけんじゅつのれんしゅうをはじめたよ」


 まーちゃんはピアノと声楽のレッスンを始めて、ふーちゃんはダンスと剣術を習い始めたようだ。二人の成長にわたくしはにこにこしてしまう。


「エラとジルのあいだにうまれたポニーにものっているんだ」

「おなまえは、ジェニファーにしたのよ」

「ジェニーってよんでるんだ」


 ポニーで乗馬の練習も始めたと教えてくれるふーちゃんとまーちゃん。二人の話を聞いているとわたくしも学園の話がしたくなってきた。


「わたくし、乗馬の競技で運動会に出ましたよ」

「エリザベートおねえさま、なんいだったか、あてるから、いわないで」

「いちいにきまってるわ!」

「わたしもそうおもう!」


 興味を持って聞いてくれるふーちゃんとまーちゃんにわたくしは笑顔で答える。


「当たりです。わたくしの馬が頑張ってくれたので一位を取れましたわ」

「クリスタおねえさまは、じょうばでなんいだったの?」

「エリザベートおねえさまがいちいだったから、にい?」


 運動会に乗馬の競技があると教えると、乗馬しかないのかと思い込んでしまったふーちゃんとまーちゃんがクリスタちゃんに聞いている。


「わたくしは大縄跳びをしましたの」

「おおなわとびってなぁに?」

「なわとびとちがうの?」

「十五人で並んで大きな縄を跳ぶんです。わたくしは残念ながら一位にはなれませんでしたが、レーニちゃんも一緒に頑張っていましたよ」

「レーニじょうもごいっしょだったの?」

「レーニじょうはなんかいとんだの?」

「跳んだ回数は、大縄跳びで全員で跳ぶのでわたくしと同じです」


 大縄跳びの説明を聞いているふーちゃんとまーちゃんのお目目が輝いてくる。


「おおなわとび、やってみたい!」

「わたくし、おにいさまといっしょにとびたいですわ」


 ふーちゃんとまーちゃんが跳んで、わたくしとクリスタちゃんが縄を回すのならば、普通の縄跳びでもできなくはない。

 外に行くためのコートを着てマフラーを巻いて、わたくしとクリスタちゃんはふーちゃんとまーちゃんと縄跳びをするために外に出た。

 二人では大縄跳びとは言えないかもしれないが、雰囲気だけでも味わえるだろう。


 わたくしとクリスタちゃんが縄を持って、ふーちゃんとまーちゃんが縄の横に立って飛ぶ準備をする。


「いきますよ」

「はい!」

「はーい!」


 縄を回すと、最初はふーちゃんもまーちゃんも引っかかって上手く飛べないでいた。


「縄が地面を叩く音が聞こえたら跳んでみてください」

「じめんをたたくおと」

「ぱちんって、おとがするわ」


 コツをクリスタちゃんが教えると、ふーちゃんもまーちゃんも飛べるようになってくる。


「一、二、三、四、五、六、七……七回跳べましたね」

「エリザベートおねえさま、クリスタおねえさま、もういっかい!」

「もっととびたいわ!」


 何度も縄を回して、わたくしもクリスタちゃんもふーちゃんもまーちゃんも白い息を吐きながら、頬を真っ赤にして庭で日が暮れるまで縄跳びで遊んだ。

 縄を回すのもふーちゃんとまーちゃんが跳びやすいようにしなければいけないので、なかなか大変だったのだ。

 楽しく遊んだ後は、部屋に戻ってコートを脱いでマフラーを外して、手を洗ってうがいをした。


 夕食の席ではふーちゃんとまーちゃんは興奮して両親に報告していた。


「きょうは、エリザベートおねえさまとクリスタおねえさまがなわをまわしてくれて、マリアとおおなわとびをしました」

「さいしょはぜんぜんとべなくて、つまらなかったけれど、クリスタおねえさまがとびかたをおしえてくれてからとべるようになったの」

「ごかいか、ろっかいでひっかかることがおおかったけど、さいこうじゅうごかいとべました」

「わたくし、とってもたのしかったわ」


 嬉しそうに報告するふーちゃんとまーちゃんを両親は笑顔で見守っている。


「フランツもマリアも久しぶりにエリザベートとクリスタに会えて、遊んでもらえてよかったね」

「庭で遊んでいる声がお屋敷の中まで聞こえて来ていましたよ。とても楽しそうでした」

「わたくしもついついエキサイトしてしまいました」

「縄を回すのも楽しかったですわ。フランツもマリアも上達が早いんですもの」

「フランツとマリアはいいお姉様がいて幸せだね」

「エリザベート、クリスタ、フランツとマリアと遊んでくれてありがとうございます」

「わたくしはフランツとマリアのお姉様ですもの」

「わたくしも楽しかったですわ」


 両親とわたくしとクリスタちゃんが話していると、ふーちゃんとまーちゃんの頭がぐらぐらし始めているのに気付いていた。外で元気いっぱい遊んだので今日は疲れたのだろう。


「フランツとマリアはお風呂に入っておいで」

「お休みなさい、フランツ、マリア。ヘルマンさん、レギーナ、頼みましたよ」

「心得ました、奥様」

「参りましょう、フランツ様、マリア様」


 ヘルマンさんとレギーナがふーちゃんとまーちゃんを連れて部屋に戻っていく。お風呂に入って、歯磨きをして、ふーちゃんとまーちゃんは眠るのだろう。

 わたくしとクリスタちゃんは両親と食後に紅茶を飲みながら少し話をした。

 久しぶりに両親と持てる時間にわたくしもクリスタちゃんも喜びを感じていた。


「試験の成績はわたくしが一年生の首席で、お姉様が二年生の首席でした」

「二人とも立派な成績だね」

「ディッペル家の誇りですわ」

「運動会はわたくしは大縄跳びでレーニ嬢と一緒に跳びました。一位にはなれなかったけれど楽しかったです」

「わたくしは乗馬の競技で一位になりました」

「クリスタもエリザベートも学園生活を楽しんでいるようで安心したよ」

「お姉様が同室なのです。とても安心します」

「クリスタが同室だと、気を遣わないでいいので楽です」

「姉妹で同室にしてもらえてよかったですわ」


 学園のこと、寮生活のこと、ノエル殿下とハインリヒ殿下とノルベルト殿下とレーニちゃんとミリヤムちゃんとのお茶会のこと、話したいことはたくさんあったが、わたくしもクリスタちゃんも列車で帰ってきた日なので疲れていた。

 欠伸を噛み殺していると、両親がそれに気付く。


「エリザベートもクリスタもそろそろお休み」

「明日も話はたくさんできますからね」

「はい、お父様、お母様」

「ディッペル家に帰って来て、お父様もお母様もフランツもマリアもいて、幸せですわ」


 わたくしとクリスタちゃんは答えて、手を繋いで階段を上って部屋まで行った。

 着替えを持って順番にお風呂に入って、ストーブの火で髪を乾かして、ベッドに入る。

 ベッドの脇にはクリスタちゃんの部屋と繋がる窓があった。


「クリスタちゃんまだ起きていますか?」

「眠いですけど、起きています」

「明日もふーちゃんとまーちゃんとたくさん遊んであげましょうね」

「まーちゃんのお歌とピアノが聞きたいですわ」

「ふーちゃんのダンスと剣術も見たいですね」


 話しながらわたくしは眠りに落ちて行った。

読んでいただきありがとうございました。

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