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エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない  作者: 秋月真鳥
六章 ハインリヒ殿下たちとの交流
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24.リリエンタール侯爵領の産業

 毎年、国王陛下の生誕の式典には両親が出かけてしまって、子どもたちだけが残されるのでずっと心細く寂しい日々だった。

 特にブリギッテ様が無礼な訪問をしたときには、わたくしは何としてもクリスタちゃんを守らねばならないと必死になっていた。

 今はふーちゃんとまーちゃんもいて、寂しさは少しは薄れているのだが、心細いことには変わりない。


 両親がいない間、わたくしがディッペル家の長女として弟妹を守らなければいけないと気を張っているし、わたくしももう十一歳なので寂しがってばかりではいけないとは分かっている。

 それでも、わたくしは両親がいないと心細い子どもだった。


 それが今年はその期間リリエンタール家に滞在することが決まった。

 リリエンタール家にはリリエンタール侯爵の夫が留守番役としていてくれて、頼れる大人もいるし、レーニちゃんやデニスくんもいる。

 ふーちゃんとまーちゃんも連れて行くので、寂しくはない。


 レーニちゃんと過ごせる時間をわたくしは楽しみにしていた。


 両親のお誕生日のお茶会にもリリエンタール侯爵とレーニちゃんは来てくれていた。

 両親のお誕生日のお茶会は、父の願いでふーちゃんとまーちゃんも出席する。

 ふーちゃんとまーちゃんの遊ぶスペースの前で両親はリリエンタール侯爵と話をしていた。


「国王陛下の生誕の式典の日には、エリザベートとクリスタがお世話になります」

「夫がしっかりと歓迎いたしますわ。レーニも楽しみにしておりますのよ」

「まだエリザベートもクリスタも国王陛下の生誕の式典に出席できる年ではないので、私たちの不在のときには寂しがっているようで、楽しみができてあり難いです」

「わたくしの方も、レーニがエリザベート様とクリスタ様の訪問を心待ちにしているので、お願いされてよかったと思っておりますのよ」


 和やかな両親とリリエンタール侯爵との話の間、ふーちゃんとまーちゃんがおもちゃを持ってリリエンタール侯爵に見せていた。


「こえ、ちゅっぽ。わたちの、だいじだいじ」

「にぃに、ぽっぽ。だーじ」


 まーちゃんはふーちゃんに列車のおもちゃを貸してもらっているようだ。リリエンタール侯爵はオモチャを見せられて微笑んでいる。


「素敵な列車ですね。フランツ様のは王都行きの特急列車で、マリア様のは辺境行きの特別列車ですね」

「おー! しゅごい! こっちは?」

「こっちは、ディッペル公爵領を走る普通列車ですね」

「おー! おー!」


 わたくしでも見分けがつかない列車を次々と当てるリリエンタール侯爵に、ふーちゃんは仰け反って感激しているし、まーちゃんも喜んで手を打ち鳴らして拍手をしている。


「リリエンタール侯爵は列車に詳しいのですね」

「リリエンタール侯爵領の主な産業は、製鉄とその加工ですからね。列車もリリエンタール侯爵領で作られたものがほとんどなのですよ」

「そうだったのですね!」


 わたくしもクリスタちゃんもリリエンタール侯爵に聞いて驚いてしまう。

 リリエンタール侯爵領が製鉄と加工を主な産業としていたなんて全く知らなかった。わたくしたちがこれまで乗っていた列車はリリエンタール侯爵領で製造されたもののようだ。


「フランツ様とマリア様が列車を好きでいてくれてとても嬉しいです。わたくしの領地の仕事が認められた気分です」

「フランツは今も小さいですが、もっと小さな頃から列車が大好きなのです」

「それでしたら、夫に頼んで列車の製造所で作られた本物の鉄で作られたおもちゃを用意させましょう」

「いいのですか!? フランツ、リリエンタール侯爵が本物の鉄で作られたおもちゃを用意してくださるそうですよ」

「おー! おー! あいがちょ!」

「そんなに喜んでもらえるとこちらも嬉しくなりますね」


 ふーちゃんは鉄の列車をもらえるかもしれないということで、とても興奮していた。


「クリスタ様、エリザベート様、わたくしに折り紙を教えてくださいますか?」

「いいですよ。どんな折り紙がいいでしょう?」

「お二人がお手紙に入れてくださった、アイリスの花を教えて欲しいです」

「リリエンタール侯爵家に伺うときに、色紙を持って行きますね」

「わたくし、辺境伯領で買った、綺麗な模様のついた色紙をたくさん持っているのです。それを持って行きましょう」


 レーニちゃんともリリエンタール侯爵家で遊ぶ予定ができて、わたくしもクリスタちゃんもリリエンタール侯爵家に行くのをとても楽しみにしていた。


 両親のお誕生日には国王陛下も来られていて、ハインリヒ殿下とノルベルト殿下もいらっしゃっていた。

 エクムント様は相変わらずカサンドラ様とご一緒で、わたくしはエクムント様をお茶に誘いたかったけれど、レーニちゃんとも話したくて困ってしまった。


「エリザベート様、エクムント様をお誘いするのでしょう?」

「レーニ嬢ともお話ししたいのです」

「わたくし、お邪魔にならないようにクリスタ様とノルベルト殿下とハインリヒ殿下とお茶を致しますわ」

「それなら、エクムント様もそこに合流していただきましょう」


 エクムント様を誘いに行くと、カサンドラ様が気付いてエクムント様をわたくしの方に押し出してくださる。


「エクムント様、お茶をご一緒致しませんか?」

「リリエンタール侯爵の御令嬢とお茶をされるのではないのですか?」

「エクムント様もご一緒にいかがですか?」

「私だけ年上で申し訳ないですが、お誘いいただいたので行かせていただきます」


 エクムント様が自分が年上なことを気にしているとは思っていなかった。

 わたくしばかりが自分の年齢を気にしていると思っていたが、エクムント様はエクムント様で自分の年齢を気にしていらした。

 立派な大人として、辺境伯として、公爵に並ぶとも劣らない地位を持ったエクムント様が、十一歳のわたくしや九歳のクリスタちゃんとレーニちゃん、十一歳のハインリヒ殿下と十二歳のノルベルト殿下に遠慮してしまうのは少し不思議だった。


「エクムント様、助言をいただけませんか? ネックレスとイヤリングのお礼にノエル殿下から詩集をいただいたのです。お返しはした方がいいのでしょうか?」

「最初にネックレスとイヤリングを差し上げて、そのお礼ということですので、そこで終わりでいいと思います。また別に何かいただいたら、そのお返しを考えたらよろしいのではないでしょうか」

「ありがとうございます。それでは、今回はこれでお終いということにしておきます」


 身を乗り出して挨拶もせずにエクムント様に聞いているノルベルト殿下は、それだけ早く答えが欲しかったのだろう。エクムント様の前ではノルベルト殿下も年相応の顔をしているので、エクムント様を年上の大人の男性として頼っているに違いない。


「国王陛下の生誕の式典の期間、わたくしとお姉様とフランツとマリアでリリエンタール侯爵家に行くことになりました。リリエンタール侯爵家はレーニ嬢のお父様がいらっしゃるので、安心して行ってきていいと両親も言ってくれています」

「それはいいですね。楽しんでこられてください」

「僕たちはユリアーナのお披露目があるので、それが楽しみなのですよ」

「ユリアーナ殿下のお披露目があるのですか!?」

「ユリアーナが初めて公の場に出ます」


 王妃殿下が公務に戻るのと同時に、今回の国王陛下の生誕の式典では、ユリアーナ殿下もお披露目されるようだ。ユリアーナ殿下とは夏に会っていたが、それよりもずっと大きくなっているだろうお姿が見られるのは羨ましかった。


「ユリアーナ殿下にもお会いしてみたいです」

「わたくしとお姉様は夏に国王陛下の別荘に招かれたのですが、とても小さくて可愛かったですよ」

「ユリアーナ殿下とデニスは同じ学年になるのでしょうか?」

「わたくし、学園のことはよく分からないけれど、生まれた年は同じですよね?」

「はい、そうだと思います」


 学園は春から年度が変わって、クリスタちゃんのお誕生日がちょうど年度の最後の方だということを聞いたことがあるが、わたくしもクリスタちゃんと同じく詳しいことは分からなかった。


 将来ユリアーナ殿下とデニスくんが同じ時期に学園に通うことがあるのだろうか。

 その頃にはふーちゃんもまーちゃんも学園に通っているはずだ。

 そこまでにはまだ十二年も時間があるのだと思うと、わたくしは気が遠くなる思いだった。

読んでいただきありがとうございました。

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