婚約破棄の原因となった男爵家令嬢を池に落とした平民の私は悪役令嬢?
「フラン嬢、平民である君との婚約を破棄する」
婚約者の令息様が、横に赤毛でメロン胸の令嬢を立たせ、私に婚約破棄を宣言しました。
思い出したくないです。
「好きでもない政略結婚の話でしたけど、破棄されると、キツイですね」
学園でのお昼休み、庭園の池の脇にあるベンチ席、私のお気に入りの場所です。
一人で、席に浅く腰を下ろし、背筋を伸ばし、青空に浮かぶ白い雲を見上げます。
私の名前は、フラン、平民の女学生です。
制服のブレザーは、平民を示す薄い灰色で、下は、聖女見習いのため濃い灰色のパンツルックです。
銀色の髪の毛を後ろで一つに結び、ルリ色の瞳、飾り気は無く、自分で見ても地味です。
「お弁当のサンドイッチ、あ~、至福の時間です」
まさに、サンドイッチを食べようと、口を開けた時でした。
「貴女、平民ね、そこを、おどきなさい」
命令してきたのは、赤毛でメロン胸、ブレザーの色は男爵家をしめす黒で、下はスカートです。
あの浮気相手の、、、私の婚約者をたぶらかした令嬢です。
取り巻きが二人、こちらもブレザーが黒、皆さん男爵家令嬢です。
「わかりました、片付けますので、少しお待ち下さい」
テキパキとお弁当を片付けます。
「古いベンチ席ですが、どうぞお使い下さい」
ベンチ席を譲ります。
サッサと離れ、人目のない場所で、振り返ります。
「「キャー」」
三人が、池に転がり落ちました。
ベンチ席の背もたれが、壊れて、ひっくり返っています。
(あらら、平民を見下した天罰です)
私は、冷たく微笑みます。
「実に面白い」
この古臭いセリフを吐くのは? まさか?
「第一王子様!」
ブレザーは深い青色、公爵待遇の色です。下は白のパンツルック、金髪碧眼、イケメン、、、第一王子です。
私は、カーテシーをとります。
「たしか、1年生のフラン嬢だね」
「はい」
「楽にしてくれ」
びしょ濡れの令嬢が、三人そろって私に向かって来ました。
「貴女、あの席が危険だって知っていたでしょう!」
「古いとは思っていましたが、まさか壊れるとは」
頭を下げつつ、メロン胸に目がいくと、あれ? 左側だけがズレています。
(そのメロン胸は、まさか、詰め物だったの?)
「口ごたえしないで!」
三人は、顔を真っ赤にして、怒りで頭から湯気を出しています。
(令嬢たちは、胸の詰め物がズレたと気が付いていないですね)
「私が、会話に加わっても良いかな? ご令嬢がた」
(第一王子、その胸のことを、まさか、言うのですか?)
「「第一王子様!」」
三人の顔は、真っ白になりました。
「一人でくつろいでいたら、面白い場面を目撃してしまった」
第一王子の取り巻きがいません。見ていたのは、彼だけのようです。
「さて、ハラスメントの撲滅を、私が進めていることは、知っているかな?」
(第一王子は、メロン胸に全く興味が無いようです)
「も、もちろんでございます」
三人の顔が青ざめているのは、びしょ濡れだけが原因ではありませんね。
「それは良かった、次は無いからね」
第一王子の冷たい笑顔が、念を押します。
「では、早く着替えに行きなさい、風邪をひくよ」
うひゃー、最後は、イケメンの笑顔で締めくくりますか。
三人は急いで立ち去ります。
(え? メロン胸がズレたまま、校舎に入るのですか、地獄になりますよ!)
「ところで、貴女のお尻に、紙が貼り付いているのは、気が付いているのかな?」
「え?」
第一王子が、私のお尻から、紙を、はがしました。
(第一王子は、メロン胸より、私のお尻が気になっていたようです)
「危険! このベンチ席は壊れてます。使用しないで下さい」
第一王子が読み上げます。
「いつの間に…」
「私と、昼食の続きをしようか、それとも、なぜ貴女は壊れたベンチ席に座れていたのか話してくれるかな?」
「何のことでしょうか?」
シラを切ります。
庭園の木陰、新品のベンチ席で、私はサンドイッチを口にします。
隣に第一王子が座っています。
「美味しそうに食べるね」
「学生寮のお弁当は美味しいですから」
「食堂には行かないの?」
「平民は、貴族様と席を一緒にできません」
「今、君は王族と席を一緒にしているよ?」
第一王子は、王族用のお弁当、とても美味しそうなサンドイッチを口にしています。
「こ、これは、そうです、私は第一王子様を警護しているのです」
「それは頼もしい」
「では、毒見を頼もうか」
第一王子が、自分の口に運んでいたサンドイッチを、私の口に運びます。
「パクッ」
しまった、食い意地が!
第一王子が、キラキラと輝きながら、笑います。
誰か来ました。
「第一王子様、令嬢が池に落ちたそうです」
「少し騒ぎになっていますので、学生会室に戻って頂けませんか」
第一王子の取り巻きです。ブレザーは黄色、伯爵家令息です。
私を、眉をひそめて見ています。
(ズレたメロン胸で校舎内を歩けば、それは騒ぎになるでしょうね)
「3年生も、もう終わりなのに、楽はできないなぁ」
第一王子は、ベンチ席から腰を上げ、校舎に戻って行きました。
寂しく残された私一人、頂いたサンドイッチを飲み込みます。
「あれ? まさか間接キス?」
「まさかね、私は平民だもの」
王族も、貴族も、それぞれ立場があって、色々と面倒くさいみたいです。
「あ〜あ、楽して、幸せになりたいなぁ」
青空に浮かぶ白い雲に、願います。
━━ FIN ━━
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