槍姫様の武闘会
王宮の庭園を、一人の少女が駆け回っていた。
槍を振り回して遊ぶ。その先端をあちらへこちらへと突き刺して周囲の花を散らしながら、それでも気にせずにはしゃいでいる。
彼女の名前はシュペーア。このZ王国のお姫様である。
本当なら淑女らしく大人しくしていなければならない姫だが、彼女はかなりおてんばだ。隙さえあればすぐに部屋を飛び出して、飛んだり跳ねたりして遊びまくっているのだ。
そんなシュペーアには大好きなことがあった。それは、槍を使うこと。
幼い頃、兄が武術の修練をしているのを見て自分もやってみたくなった。しかし剣は重たすぎる。そして駄々をこねた挙句、兄から槍を買ってもらえたわけである。
「これなら女にもできるだろう」と。
それからシュペーアは夢中になって練習し、槍の腕を上げた。兄はもちろん、達人でも驚くほどの腕。
巷では「槍姫様」とまで呼ばれるようになっていた。
「いつかこの槍を思う存分使ってみたいですわ」
シュペーアはいつもそんなことを夢見ていた。
しかし父からは、姫なのだから大人しくしろと言われる。なので今は庭園で遊ぶことしかできないのだ。
「いい加減飽きましたわ。どうにかならないものかしら……?」
槍を抱えて庭園のベンチに座り、ため息を漏らすシュペーア。
そこへ突然、メイドがやってきた。
「姫様。国王陛下がお呼びです」
「あら、お父様が?」
父に呼び出されるなんて珍しい。一体何の用だろう。
首を傾げながら、彼女は王の部屋へ足を向けた。
* * * * * * * * * * * * * * *
王の部屋へ入ると、父はすでにシュペーアを待ち構えていた。
玉座に座る彼は威厳というか威圧感が半端ない。すっかり慣れているのだが、それでも思わず背筋を正してしまうほど。
「ご用件は何ですの?」
「シュペーア。少し話があるのだ」
王は重々しく、そう切り出した。
「お前ももう十六。庭で子供のように跳ね回っているだけで、恥ずかしいとは思わないのか」
「思いませんわ」シュペーアははっきりと答える。
もし仮に「やめろ」と言われたとしても、やめてやらないつもりだ。城を飛び出してもいいくらいの覚悟を持っていた。
「どうしても続けたいと申すならいいが、同時に淑女の嗜みも学ばねばなるまい。故に、今度の舞踏会へ出席せよ」
斜め上からの意外な話に、目を丸くするシュペーア。
「舞踏会って」
「王族や貴族が揃って出席し、踊りを交わす宴のことだ。今までお前にはまだ早いと思っていたが、もうやらねばならない時期だろう。どうだ?」
言われて、シュペーアは真紅の瞳を伏せ、少しだけ考え込んだ。
しかし彼女はすぐに顔を上げ、そして――。
「わかりましたわお父様。では今度『ブトウカイ』に出てみますわね」
そう言って悪戯っぽく笑ったのだった。
* * * * * * * * * * * * * * *
――ひと月が経ち、舞踏会の日がやってきた。
舞踏会は公爵邸で開かれる。公爵家は他の家と付き合いがよく、王族から他の中流・下級貴族まで幅広い身分の貴人たちがこぞって訪れた。
華やかな音楽の中、男女が絡み合うようにして踊り狂っている。
王も踊りはしないものの、公爵と酒を交わそうと思ってきていた。しばらくは他の賓客の舞踏を眺めていたのだが、何かがおかしいことに気づいた。
何が妙なのか。それは、本来であればいるはずの人物の姿がないことである。
王は、ちょうど踊り終えたばかりの息子を呼び止めた。
「シュペーアがどこか知っているか?」
王子は首を振り、肩をすくめた。「さあ。全然見かけなかったけどなあ」
これはますます変だ。
慌てて一人で城に戻り、使用人を問い詰める。するとすぐに口を割った。
「シュペーア姫様は、槍を片手にお城を出ていかれました。『ブトウカイに戦いに行くから』とおっしゃっていて……」
その時、王は全てを理解した。
そして己の愚かさを悔やむ間も惜しいと声を張り上げる。
「兵士よ。大至急、シュペーアを連れて参れ。場所は、北のY皇国。そこで開かれている武闘会だ」
* * * * * * * * * * * * * * *
シュペーアは馬車に乗り、北のY皇国へとやってきていた。
もちろんのこと、一人で抜け出してきたのではない。その手も考えたが、さすがにすぐ見つかってしまうから無理だ。
ではどうやってここまできたかというと、御者や護衛を全員手懐けているのである。
「お兄様ったら、本当に頼りになりますわ」
護衛たちを手懐けたのはシュペーア自身ではなく、彼女の兄だ。
前々から北の国で開かれる武闘会の話は聞いていた。そこで、兄に相談したのである。
「お父様が舞踏会に出ろって言うんですのよ。でも私、そんなのに興味ありませんわ。そこで武闘会に出てやろうと思うのですけれど」
兄は「妙案だな」と頷いた。その上で手伝ってくれるとのこと。
ちょうど舞踏会と武闘会が同日なので、出かけても全く変に思われないのが幸い。そして当日、兄がシュペーアの自室へ入ってきて言った。
「お待たせ。御者と護衛は言い包めておいたぜ」
なんて頼もしい兄だろう。そう思い、シュペーアは彼に抱きついた。「ありがとう、お兄様」
照れ臭そうに笑う兄。彼は妹の頭を撫で、一言。
「頑張って勝ってこいよ」
「はい、もちろんですわ」
……と、いうことで無事にY皇国に入り込めたわけだ。
馬車は順調に進み、やがて目的地へ辿り着いた。
「姫様。到着いたしました。行ってらっしゃいませ」
護衛の声がするなり、シュペーアは馬車から飛び出した。
そして足を踏み入れたのは、Y皇国の城。
Z王国の城より倍以上はデカく、迫力満点だ。
入り口に軍隊と思われる人々が立っている。躊躇うことなく彼らに話しかけた。
「軍人さん。ここが武闘会の会場で間違いないかしら?」
「ああそうだが」軍人の一人がこちらを睨む。「一般の観客か?」
「あら。私がお客に見えまして? 私、武闘会に参加しようと思っておりますの」
軍人たちは目を剥いて驚いた。
「にょ、女人が大会に出るというのか? 何故にそんなことを?」
「『ブトウカイ』に出てきなさいと、お父様が。とにかくお通しなすって」
結局、彼らは素直に通してくれた。無駄な揉めごとを起こしたくないのでありがたい。
城内を行くと、たくさんの人々が群がっていた。おそらく一般の観客だろうが、つまりこの大会は見せものというわけか。
「少し気に入りませんけれど、仕方ないですわね」
散々探し回ってやっと参加申し込み場を見つけ、そちらへ赴いた。
「あの。武闘会に参加したいのですが宜しいいかしら」
最初は女なのにと驚かれるのがお決まり。面倒臭いながらに説き伏せると、次は名前を聞かれる。
「槍姫とでも名乗っておきますわ」
槍姫はかなり有名な呼び名なのであるが、他国のここでは何も疑われることはない。
もし万が一身バレしていたら即追い出されていただろう。しかしシュペーアはちっともそんなことは気にしなかった。
「槍姫、控え室へ向かえ。もうじき勝負が始まるのでな」
* * * * * * * * * * * * * * *
城の真ん中、そこに広がる豪華なスタジアム。
ここで今から熱戦が繰り広げられようとしていた。
出場者は国内外から集められた腕に自信のある者たち。その中の紅一点が槍姫、シュペーアである。
戦いが行われるのはスタジアムの天井から吊り下げられた小さな檻。大人五人が身を寄せ合っても入れるかどうかという狭さの中、試合をするのだ。
「さあ始まりました皇国武闘会。勝者には名誉が与えられます~」
司会の男が喋り出した。
「さて今回はどんな試合が見られるのでしょうか。では、スタート!」
前に出るシュペーア。控え室から伸びる橋を伝って檻の中へ身を投じる。
その瞬間、歓声が湧き上がった。原因は彼女の容姿にある。
すらりと長い足、引き締まったボディに整った顔。後で一つに結わえた長い黒髪が美しく、情熱的な赤い瞳が眩しい。
紅色の細身のドレスを身に纏ったその姿は、可憐としか言いようがなかった。
……もっとも彼女自身は気づいておらず、腕に抱える金色の槍を見て驚いたのだろうと思っているのだが。
それはさておくとして。
続いて檻に入ってきたのは、特にこれといった特徴のない普通の男だ。
こちらにはあまり観客からの反応がなかった。
「初戦は『毒男』VS『槍姫』です! どうぞお楽しみあれ!」
毒男。彼が手にするのは短いナイフだ。それに毒が塗られているのだと、シュペーアは直感していた。
気をつけなければと気を引き締め、向かい合う。
――第一戦が、幕を開けた。
「きしゃあああ――――!」
最初に仕掛けたのは毒男。
甲高い奇声を発し、シュペーアへ飛びかかってきたのだ。
しかしシュペーアはドレスを翻しそれを避けると、槍を男の肩へ一突き。苦鳴を上げ、毒男がすっ転ぶ。
少女は隙を逃さず、毒ナイフを奪って檻の外へ投げ落とす。そのまま槍の柄を使い、男を見事なまでに押さえつけた。
「弱すぎますわ。出直していらっしゃいな」
ふふんと笑い、シュペーアは男を見下ろした。男はすっかり昏倒してしまっている。
完全なる圧勝であった。
「おおっと!? 勝負ありましたでしょうか、勝者『槍姫』!」
第一戦は物足りなかったので次に期待しよう。
男は檻から運び出され、次の対戦者が現れた。
「お次は『槍姫』VS『ビッグマン』の対戦です。どうぞ!」
* * * * * * * * * * * * * * *
二人目の敵は少々手こずったものの、シュペーアの槍技にかかれば朝飯前。
筋肉自慢の男に対して勝利策は一つ。股間の『それ』を刺し貫いたのだ。
悲鳴とともにもんどりうって倒れ込み、筋肉男『ビッグマン』は敗した。
観客は大興奮。スタジアム中に熱気が溢れ出しているようにさえ感じる。
「またも『槍姫』の勝利! いやあ、女人がここまでやるとは! 次の相手は『スターダンディー』!」
小柄な体に見合わぬ小男が、大きな鉄球を引きずって現れた。
そして勝負が始まるや否や、息を荒げることなく無音で鉄球を振りかざす。
「きゃっ」
すぐ耳元を鉄球がかすめ、思わず悲鳴をあげるシュペーア。危ないところだった。
しかし安心している暇はない。二撃目がくる。
と、思ったその時。
「――ぬ?」
鉄球の小男が顔を歪めた。
シュペーアへ向けて容赦なく放たれた鉄球、それがガンと大きな金属音を立てて、檻に絡んでしまったのだ。
普通なら圧倒的有利となる鉄球、それがこの『檻の中』という環境では不利となったのだ。
シュペーアはその一瞬の緩みを狙いをつける。
「やぁ――!」と叫び、槍で小男の腕を抉った。
血飛沫が飛び散る中、ようやく鉄球を外した小男がうめきながら襲いかかってくる。
しかし向こうの方が不利。
「狭いところでは、槍の方が何倍も便利でしてよ! くらいなさい!」
凄まじい槍の一撃に横腹を打たれ、小男が檻の隅まで飛ばされ、地面を転がった。
意外に強敵ではあったが、完全に環境がシュペーアに味方した形である。
「おお! またまた『槍姫』に軍配が上がる! お次は第四戦です!」
三回戦を終えて、シュペーアは少しも疲労を感じていない。
初めて存分に槍を使えるのだ、嬉しくてたまらない。
「もっともっとやってやりますわよ。……武闘会はこれからですわ」
* * * * * * * * * * * * * * *
四回戦ともなれば慣れてきたのもあり、余裕だった。
対戦相手は大きなハンマーを掲げた老人。しかし向こうが自慢のハンマーを振り下ろす前に叩きのめしてしまった。
そして運命の、第五戦。
「――さあて、最終戦となります! 今まで『槍姫』が四連勝! 会場の全員が圧巻されていることでしょう! しかしそう簡単にはいかせません! 『剣王』、ご入場願います!」
司会者の呼びかけに応えて入ってきた人物に、シュペーアは目を奪われた。
金髪を巻いた美しい青年だ。
澄んだ碧眼はじっとこちらを見つめている。彼の手には、立派な長剣が握られている。
「初めまして。……お嬢さんか。僕はあまり女性を傷つける趣味はないんだけど、覚悟はあるかい? 僕はこれでも、この国一番の剣の腕と言われているんだが」
我に返ったシュペーアが慌てて首を振る。
「いいえ。私だって槍には自信がありますの。遠慮なんていりません」
「そうか」と頷くと、青年は剣を構えた。
「じゃあ本気で行かせてもらうよ」
「もちろん」
そして直後、両者の衝突が起きる。
グワっと嵐の如く観客がどよめいた。
長剣と槍が交わり、かと思えば離れてまたぶつかる。
あまりに激しいので、足場の檻がぐらんと大きく揺れた。その間にもシュペーアと『剣王』の二人は際どい戦いを続ける。
狙うは腕。そう思い、槍を届かそうと奮闘するも、いとも容易く薙ぎ払われてしまう。
と同時に、防御も忘れてはならない。隙あらばこちらの胸の谷間を狙ってくる剣を、軽い身のこなしで避け続けなければいけないのだから。
「槍姫がんばれ――!」
「剣王様、負けるなぁっ! 細っこい女なんかぶっ倒せ!」
観客大盛り上がりだ。
神経を削るような戦いは、一秒を争う。
なるべく早くねじ伏せねば、そう考え、跳躍して青年の背後へ回ったシュペーアだが――。
「ごめんよ」
長剣の柄の一撃によって呻き、檻の柵に強く背中を打ち付けられていた。
痛みで動けないでいる彼女へ、すかさず『剣王』がとどめを刺しにかかる。
だが、
「……一瞬、気を抜きましたわね」
瞬きの間に膝蹴りをかまし、剣を蹴落とした『槍姫』。
使えるのは槍だけではないのだ。体術だって、多少は習っている。
そしてそのまま体当たりをかまして逆に青年を檻の向こう側へ押しやり、最後に――。
「油断大敵。次から学ぶことですわ。……あなたの負けです、剣王」
青年の細い喉元へ、槍の先端を突きつけていた。
手を上げ、青年がゆるゆるとかぶりを振る。これは降参の印だ。
シュペーアは静かに武器を下ろす。一応は身構えていたが、彼は紳士のようでもう戦意は感じられなかった。
「これは素直に参ったよ。楽しい戦いをありがとう、槍の姫君」
司会者が「今武闘会の優勝者は、『槍姫』です!」と叫び、スタジアムには拍手と歓声が巻き起こった。
天井に吊り下げられた檻の上、激戦を交えた二人は微笑み合う。
そっと青年が手を差し出してきて、シュペーアはそれを強く握る。友情の証だった。
「僕はフェヒター。姫君、君の名前は?」
「シュペーアですわ。フェヒター様、こちらこそ素敵な武闘に感謝を」
――こうして、槍姫様の武闘会は幕を下ろしたのである。
* * * * * * * * * * * * * * *
青年――フェヒターと一緒にスタジアムの外へ出る。
と、そこには黒い人影がずらりと待ち構えていた。
「シュペーア姫様。お迎えにあがりました」
驚いたことに、それは王国の兵士たちだった。どうやって紛れ込んだのか、というか目立ちすぎるし、どういう話で城の門を通されているのか謎だ。
「私を連れ戻しに? あいにく、今しがた武闘会は終わったところでしてよ」
「ともかくお戻りくださいませ。陛下の命令ですぞ」
兵士数人がシュペーアを取り押さえにかかる。
抵抗したら大問題になるかも知れない。その考えが一瞬頭をよぎり、行動が遅れた。
シュペーアの細腕が絡め取られる。槍もその時に取り上げられてしまった。
「おい君たち、やめないか!」
しかし一人でなかったことが幸いした。
剣の名手フェヒターが、あっさりと兵士たちを薙ぎ倒してしまったのである。それも剣の柄だけで。
「貴様っ。姫様に何をするつもりだっ」
「いや僕は別に何もしないが?」
あまりにもクール過ぎて、かっこいい。
結局兵士の力は及ばずだった。
「我が国へ戻るならこの方とがいいわ。フェヒター様、よろしいかしら?」
「構わないよ。君は他の国の生まれだったのか、僕もZ国には一度足を運んでみたいと思っていたんだ」
シュペーアとフェヒターは軽く話し合い、彼の同行が決定した。
それからは一緒に馬車へ乗り込み、祖国へ。行きと違って人数はかなり多いが、兵士たちは彼ら専用の馬車に詰め込んだので問題なく帰れた。
――Z王国の王城にて。
シュペーアとフェヒターが並んで王の部屋へ入ると、国王は目を丸くして驚いた。
「シュペーア、ようやく戻ったか。やっ。その隣の者はなんだ」
「この方はフェヒター様です。武闘会にて私と対戦したお方ですわ」
怒りの形相の王は、なおも問いかけを続ける。
「これは一体どういうつもりなのだ。勝手に他国の武闘会に参加するなど、あってはならぬことだぞ。姫の名が穢れる」
「でも優勝しましたわ。何かご不満でも?」
少女の赤い瞳は、自信たっぷりに煌々と輝いている。全く悪びれる様子がない。
そしてどこからともなく現れた彼女の兄である王子が、助け舟を出した。
「父上。俺はいいと思います。父上は少し保守派すぎる。だからシュペーアが嫌がるのです」
「黙れ!」王は初めて怒声を上げた。
「子供に何がわかる。どこの馬の骨とも知れぬ若造を連れてきおって!」
「僕はY皇国の第一皇子、フェヒターだよZ国王。安易にそんなことを言ってしまっていいのかな?」
フェヒターのこの一言に、国王や王子はもちろんシュペーアまで驚愕した。
まさか、彼が皇子であるだなんて夢にも思わなかったのだ。皇子で剣の名手なんて最高ではないか。
おまけに彼は、その証である徽章まで取り出して見せつけた。これはもう信じるしかあるまい。
「素晴らしいですわフェヒター様。私、ますますあなたのことが好きになりました」
「照れるな~」
一方、王はというと。
「む、むぅ……。大変失礼を致した。Y国の皇子であったとは」
「いいんだよ」余裕の笑みもまた素晴らしく晴れやか。
とうとう国王が頭を垂れ、降参した。
兄はやれやれという顔。シュペーアは素直に喜び、皇子と抱き合った。
* * * * * * * * * * * * * * *
全ては丸く収まり、まもなくシュペーアはフェヒター皇子と結ばれた。
そんな今でもシュペーアの槍の腕はますます上がるばかりで、皇国へ嫁いだ後も武闘会に毎度のように参加しては、フェヒターと熱い戦いを繰り広げその度にねじ伏せている。
毎年、「次こそは~」と奮闘する夫を見るのも楽しみの一つ。
「いつかあなたが勝てるその日を、私は待っていますわね」
もちろん、手加減など一切しないが。
――ドレスを整え、小さな檻へと向かう。スタジアム中が割れそうなほどの歓声が響き渡った。
槍姫様は今日も槍を振り回し、民衆を圧巻させるべく武闘会へ臨むのである。
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