一稿スタート!にできるか?
あなたの人生を切り取ってテレビドラマ化したら?
毎週30分、朝に放送される。
あなたは・・・・・・「少しズレてはいるが大きな枠でみれば、普通の人間」
自分のことをそう思っている。
となると、ドラマのジャンルは日常もの。
視聴者はあなたの何気ない毎日のちょっとした面白エピソードなんかを期待している。
でも、人生色々あるでしょう?穏やかな日常の枠を外れた心苦しいトラブル、もしかしたら、1日だけ、命と勇気をかけた冒険の日があったかもしれない。
そういう日は、「劇場版の1日」なんです。
今から、僕の人生の「劇場版の1日」をお話しします。
でも、その日、僕は駅のホームに置かれたベンチに座ってから、一歩も動いていません。
誰もそこにいる僕に話しかけたりしないし、僕も話しかけないし、目の前で人身事故が起きるわけでもありません。
僕はずうっとスマートフォンを操作していただけです。
始発の前、改札のシャッターが上がってから、日が変わって終電車が出るまでの時間・・・・・・19時間ほどだったかな。
その19時間、ベンチの上でスマホを操作していただけの1日が、僕にとって「劇場版の1日」だったのです。
ベンチに座って、腰掛けて、無意識にスマホをつけて目に入ったニュースが僕をその場に縛り付けました。
「オークションの結果、ゲームのセーブデータが999億円で落札」
そんな見出しでした。僕はすぐに、自分が仕事で関わっているゲームのことだと思いました。
意識の全てがスマホの画面に吸い込まれました。
次に我に返ったのは、それからおよそ6時間後、充電ランプが赤を示し、鞄からモバイルバッテリーを取り出した瞬間だけです。
ですから、本当におよそ19時間まるまるスマホの画面に集中していたことになると思います。
落札価格、999億円。まるで子どもが考えた数字。
まさかこんなに早く落札されるとは思っていなかったし、なにより、額に驚きました。
思わず「安すぎる」と声に出しました。
いえ、分かります。
あなたはご存じでしょうが、普通の人からしたら、色々し難いニュースですよね?
たかが「ゲームソフト」の、それも本体ではなく「セーブデータ」が999億円で落札されるなんて、いったい何事かと。
金の使い道のないお金持ちが、金持ち自慢のためのオークションで買ったのか?と思われるでしょう。
変ですよね。
しかもそれを、出品者でも落札者でもない僕が「安すぎる」だなんて、いったいどういう状況かと。
感情的には、自分の生まれ育った国がどこぞの一個人に「999億円」で買われたのと同じ衝撃です。
その「セーブデータ」には、私の人生が、友が、恋人が、家族が、夢が、資産が、すべて入っているのです・・・・・・
「夜ノ文化祭」
それがデータ名です。




