メグ
夜ノ文化祭の「原作」は、空襲によって失われた「古代の箱庭郡」と世間一般には公表されている。
那由多メグが記憶を頼りにその箱庭をブロックとして再現し、ユーザー達によって作られた~のがネットの方の夜ノ文化祭。
真実は異なる。「原作」は、空襲ではなく那由多メグ自身の手によって遺棄されていた(*残骸もある)。
那由多メグはOLの頃、「ラピスラズリの洞窟」を発見する。その奥で「姫」と出会う。(*戦後OLになったわけなので、空襲とは時系列が異なる。それが主人公が謎を解くヒントとして登場。実際空襲で失われたものもあるが、メグがそこだけクローズアップしたのには、メグがつくる作品構造上の表紙の役割)
暗い洞窟の中に明かりは少ない。夏の真昼の太陽光が洞窟内に差し込み、壁面を覆うサファイアに反射した瞬間だけ、姫の美しい顔が覗える。
姫がいったい何者なのか?いつからそこにいるのか?いつの時代から生きているのかもメグには分からない。
姫はメグの友として、師として、あるいは恋人として関わっていく。メグの創作的才能を引き出していく。
その「授業」の内容は、神話を語り、それとメグの人生を照らし合わせて考察していく事だった。(これと似たようなことを主人公がしていくのが本編の大部分を占める)
「わたしの命が尽きる前に、君に全てをあげる」
メグの目標は当然、「姫」のような存在になる事だった。
最後の儀式の日がやってくる。洞窟内がやけに明るい。壁を覆う箱庭郡の、暗い中ではインパクトの薄かった「戦争の表現」の部分がやけに輝いている。
最奥に「石造りの寝殿」が用意されている。ステンドグラスのように洞窟内が複雑に反射し眩しい。熱いほどに。
「寝殿」の上でメグは姫に「妊娠できない体」にされる。痛みで何度も気絶する。
術後「姫」は献身的にメグを看護する。
しかし全快し、一旦家に帰ってから(当然家では一悶着)の後また戻ると、「姫」は箱庭を磨きながら、なぜか一言もメグの言葉に返事をしない。いると分かっていながら、無視をする。メグが邪魔をすると、メグの方からどくまで無言で立ち続ける。
そんな日々がおよそ2年も続く。メグの精神は疲弊し、消耗していく。
あるとき、その地域で文明が発生してから最大規模の大雨が降る。洞窟は地下洞の形になっているので、メグは心配して観に行こうとするが、家族に止められる。晴れてから行くと、洞窟内が水で満ちていた。水面から中を覗きたいが当然見えない。さらに、以来洞窟内の水は引かなかった。
だが、メグは心配していなかった。メグの元に、「箱庭手紙」が届いたからだ(その古代文明は文字の代わりに箱庭を用いる)。
そこには心配しなくて良い、自分は安全な場所に避難している。と書かれていた。なぜ無視をしたのかは書かれていなかった。
そして季節が巡り、メグがはじめて姫と出会った時期になった。メグは洞窟に通う頻度を減らしていたが、ふと予感がして向かった。
そして【あの日と同じ時間】になると、水底から乱反射して、姫が男と抱き合っている姿が浮かぶ。
メグは意を決して水に潜った。まるで硝酸に入ったかのように全身が燃える痛みに包まれる。
しかし、それ以外の五感はむしろ研ぎ澄まされている。「男」がその手で姫をなぞる感覚が、匂いが、味が、メグに伝わってくる。
水中を泳いだままメグは「二人」の元にたどり着く。姫をこの手に取り戻そうとする。しかし、水をかくだけで、何も取り戻せない。
「すべて」が映し終わると、不思議と水は消えていた。そこには「輝きを失った箱庭宝石」たちがあった。
それだけが、子どもを埋めなくなったメグに最後に残された物だった。
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当然、メグの考察…魂を傷つけ続け彫刻を目指すような内省の人生が始まる。




