三角形の面積の公式は「底辺×高さ」
4限目の教室は、虹色だ。
コの字型に並べられた席は、クラスのみんなの姿がよく見える。
眠っている子、外を眺めている子、手紙をまわしている子、
漫画を読んでいる子、ソワソワしている子、落書きをしている子。
先生は教科書を片手に黒板に何かを書いている。
「よし。じゃあーこの公式がわかる人?」
先生はチョークの粉を両手を擦って落とし、私たちの方を向いた。
黒板には三角形と面積という文字が描かれている。
4限目の教室は、虹色だ。
当てられないように下を向く子、教科書で答えを探している子、
何もせず先生をただ見ている子、隣の席の子に答えを聞いている子、
そして手を挙げている子。
「よし。じゃあ田中」
その子は立ち上がり、先生の方へ体を向けて言った。
「底辺×高さです!」
その答えに虹色だった教室が一色に染まっていくのを感じた。
「・・・ふふ違うよ」
コソコソとそんな声が聞こえ始める。
「う〜ん。違うな。他に誰か答えられる人?」
「底辺×高さ×1/2です」
すぐに次の子が手を挙げて答えると、
再び教室が虹色に染まっていく。
「正解。よしじゃあ次は〜
あっ田中。さっきの姿勢は良かったぞ」
田中は答えを間違えて笑われた。
でも田中は少し誇らしげな顔だった。
私はふとした時にこの瞬間を思い出す。