お金のためなら
【第三十二話】
その日の晩、ドンガさんのお母さんが夕食を作ってくれた。
久しぶりの料理が食べられる。
私は別に食べなくてもいいんだけど、食欲が無いってわけじゃないので。
出された料理を食べてビックリ。何これ、美味しすぎる!
お母さん、治って良かったですね。って、私が治したんだけどね。
そして翌日、私達は騒々しい声で目が覚めた。
外を覗いてみると、何これ!? 長蛇の列が出来ていた。
ご近所さんのネットワークで広がっていったんだろうか、すごい人だ。
これ、一人当たりにかける時間を短くしないといけないな。
まあ、触るだけだから一瞬で治るんだけど、治してる風に演技もしないといけないので難しいな。
さて、始めますか。
何か、馬車が止まってるけど、あれは何だろう? ちょっと気になったけど、長い行列を見たらそのことは忘れていた。
まず最初は、年配のご婦人だった。
この人は、歩くのがおぼつかず、杖を突いてよろよろと歩いて、息子のお嫁さんに邪険に扱われているそうだ。
話を聞きながら、ご婦人の体をポンポンと触って「それは大変ですね~」と言ってあげた。
長くなるので、「ちょっと立ってみていただけますか?」と聞くと、
「私は立つのも大変なんですよ」と言いながらも、スッと立ち上がった。
本人が一番ビックリしていたみたいなので、「もう治りましたよ」と言うと、深く感謝された。
そして、スタスタと歩いて帰って行った。
それから何人治療したんだろうか。
子供が母親に連れられて来た。
何か変だな? と思ったら、この子、目をつむったままだった。
そうか、目が見えないのか。
私は、その子の後ろに回って背中に手を当てた。そして、
「私の手の形が分かるかな?」と言い、指を順に動かしていった。
そして、背中をさすってあげた。
その子の頭に手を当てた後、目の前に手を広げた状態で、「目を開けてみて」と言った。
恐る恐る目を開けたその子は、まだぼんやりした視界なのだろう。
やがてはっきり見えてきたみたいで、「これ、これだよ! さっき背中にあったのは!」と言った。
周りをキョロキョロ見て、「僕、見えるよ! 見えるよ!」と喜んでいた。
更に、10人位治療した後、立派な身なりの人がやってきた。
丁寧な口調で、「私の主が不治の病になり、困っております 何卒助けてはくれないだろうか?」と言われた。
「私はあなたの治療する姿を見てきて、この人に頼むしかないと確信しました 今すぐ来てはいただけないだろうか?」と。
え? あなたの後ろに大勢待っている人がいるんですけど。と言おうとしたら、
「治していただけたなら、報酬に100万エイル払おうと思っています」
私とティーナは、思わず顔を見合わせた。
これは、やるしかないでしょ。そして、私はすぐ行動に移した。
「皆さーん、今から2列になって並んで下さーい!」と言うと、皆は動き出した。
2列に並んだ所に行って、「一人分の隙間を開けてください」
と言って、間を詰めてもらった。
「皆さん、しゃがんでくださーい!」
皆は、そこにしゃがみ込んだ。
よし、用意は出来た。
私は、列の先頭の、左右の人の間に立った。
そして私は、両手で左右の人々の肩を触りながらダッシュした。
触った時間はごく短かったが、効果はあるはず。
「皆さーん、あなたたちはもう治っていますので大丈夫ですよ」と言うと、
皆困惑していたが、「おー、あんなに痛かったのが治ってる!」などと聞こえてきた。
皆、喜びの表情を浮かべていた。治療が終わったので、
「皆さーん、治療費はこの人に渡してくださいねー」
「ティーナ、後は頼むね」と言い、「では、行きましょう」とさっきの人に言った。
私は馬車に乗り、出発した。




