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「ニア〜!」

「お、お父様⁉︎ ちょっ、苦しいです」


 ファラステラ公爵家。

 私はようやく屋敷に帰宅した。

 お父様より先に王宮を出たはずの私は交戦によって帰宅が遅れた。

 既にお父様は帰宅しており、私のことを大層心配していたみたいだった。

 ただ、玄関の扉を開いた瞬間、急に抱きついてくるのは勘弁してほしい……。

 お召したドレスには少しだけ返り血も付いているし、護衛の中には軽症ではあるものの怪我をした者だっている。早めに手当てを済ませて、今日はもう休みたい。そんな気持ちで一杯だった。


「怪我はないかい。はっ、血が出でいるではないか‼︎」

「お父様、これは返り血ですので大丈夫です」

「返り血⁉︎ まさか賊に襲われたとかではないだろうね?」

「はい。襲われました」

「なんだって‼︎」


 まあ、返り討ちにしましたけどね……私の護衛が。


「本当に大丈夫です。私にはラスティがいますから」


 ラスティはこの屋敷でもトップクラスに強い私の護衛。生半可な相手ではラスティに傷一つ付けることすらできない。

 取り敢えずラスティを近くに置いておけば、私が怪我をしたりする可能性は限りなくゼロに近い。

 

「そ、そうか。それならいいのだが……」


 ようやく落ち着いたのか、お父様はこほんと咳払いを一つして、私から離れた。


「お父様、今回の襲撃に関して少し調べてほしいのですが……」

「聡明なニアがそう言うのなら黒幕がいるということかな?」

「推測ですが、おそらくは」


 あれだけの人数、そして充実した装備品。

 ただ通りかかった人を襲う盗賊とは訳が違う。

 あの手のやり方。裏では何かしらの貴族、王族が私を暗殺しようと手引きしているとしか思えない。

 それに的確に私を狙ってきていた。ただの盗賊ではあり得ないことだ。

 お父様は暫し考えたように目を瞑り、やがてこちらを見据えてきた。


「分かった。公爵家直轄の諜報機関に調べさせるとしよう。可愛いニアを狙うなんて許さないからね」

「ありがとうございます。お父様!」


 流石に私個人の情報網では手に入れられるものは限られてくる。

 こればかりは公爵家の力を最大限に活用できるお父様に全てお任せするのがいいでしょう。

 私はまだ5歳だ。

 こんなちんちくりんでは、取り合ってくれる人間も限られてくる。屋敷内の者だけでは、調べきれないことだってある。

 でも、念のためルーシドに調査を依頼しておきましょうか。

 

「今日は疲れただろう。夜も遅いしもう寝なさい」

 

 私に気を遣ってくれたお父様はそう言い、部屋へ戻るように促してくる。

 どっちにしても、もう夜も遅い。

 捕獲した二人から情報を取るのは明日だってできる。


「分かりました。おやすみなさいお父様」

「ああ、おやすみ」


 私はラスティを連れて、自室へと向かう。

 

「ラスティ、分かっているわね」

「はい」


 もちろん、このまま寝るわけではない。

 私の呼び出せる霊獣のうちの一体であるルシードを呼び出す。

 しかし、呼び出すためには代償を支払わなくてはならない。アレを呼び出したら私は1日寝込むことになる。

 だからラスティに伝言を頼むのだ。


「ルシードへ私に対して敵意を持つものを1人残らず洗い出して貰うように言ってちょうだい。お父様がしてくれる調査結果と照らし合わせて、今回の黒幕を確実に特定します」

「かしこまりました。伝言はお任せください」


 私がもう少し歳を取っていたら寝込むなんていう面倒な事態を招かなくて済むのだが、10歳程度では1日に使える魔力量もかなり制限される。

 それでも、強力な霊獣を召喚することを考えればこれくらいのことは実に軽い代償だと言えよう。

 『暗闇姫』の異名を持つ私だから出来ること。一般的な闇の魔力保持者が霊獣を召喚しようものなら代償に命を落とす。

 ラスティであっても例外ではない。


「じゃあ、頼んだわよ」


 そう言い残し、私は闇の悪霊ルシードを呼び出すために莫大な魔力を両手に込める。

 召喚と言っても、呪文や詠唱があるわけではない。私の場合、ただ「ルシード」と心の中で呼び、呼び出すのに必要な魔力を用意してあげればいいのだ。

 やがて部屋は真っ黒い霧に包まれる。

 ルシードがここに来る。

 残念ながら、私はこのまま意識を失うので一日待たなければルシードの姿を見ることができない。


「おやすみ、なさい……」


 揺れる視界。

 「あとは任せな」

 態度の軽いその声を最後に私の意識は深く沈んだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 執筆作業おつかれさまです。 読ませていただいておりますが、主人公の年齢が1話では10歳でしたが、4話では5歳となっておりますが、4話は過去の話と云うことでしょうか。
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