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 ルルハ、ルルカを道連れ……ではなく説得に成功した私は次なるターゲットの元へと向かっていた。

 これは私怨などという下賤な考えからではなく、単純に一緒に来て欲しいという想いからだ。

 フローレンス。

 前回王宮へ出向いた時、彼女は屋敷でお留守番状態だった。

 だが今回は違う。

 とある理由により、私はラスティ他、優秀な護衛を連れて行くことをしない。イヴァ、アル、フレッドはもちろんその対象である。

 今回はルルカ、ルルハを連れて行けるようになったものの、それでも周囲の護衛が少し物足りない感じがするのだ。

 そこでフローレンスの出番となる!

 女性でありながら、イヴァ達と同等の実力を有している彼女。体術面ではやはり男性の護衛に劣るものの、魔法を交えるとなると話は変わる。

 戦闘面において言うと、ルルカ、ルルハの上位互換。

 王都までの道のりを護衛してもらうにはうってつけの人材である。


「フローレンス入るわよ」


 フローレンスの部屋の前までやってきた私は軽くノックをし、そのまま入室をした。

 中では何やら怪しい植物の鉢植えを抱えたフレッドとその植物に必死な面持ちで魔法を掛けている最中のフローレンスがいた。

 ナニコレ……。


「お嬢様、こんな時間にどうなさいましたか?」

「いや、ちょっと用事があって……二人こそ何してるの?」


 あからさまに怪しい実験。

 恋仲同士の二人で一緒の部屋にいたのにも関わらず、こんな異様なことをしているとは……。

 もっと普通にくつろぎながら談笑とかしてて欲しかった。これでは反応に困る……。


「これはその」


 すかさず説明をしようとするフレッド。

 植物の入った鉢植えをこちらに見せつけるように向けた。


「植物に身体強化の魔法を掛けたら、動き出すって本に書いてあったので、本当に動き出すのかという検証をしていました」

「結果、何も変わりませんでしたけどね」


 なんというか……ものすごく下らない。

 え、そんなことのためにあんなに頑張って身体強化の魔法使ってたの?

 フローレンスの魔法の腕は凄いけど、使い方を間違えている。私は才能の無駄遣いという言葉の意味を噛みしめるように理解した。


「二人のやってたことは分かったわ。私は帰るから気の済むまで続けてていいわよ」

「えっ、用事があったんじゃ……」

「また後ででいいわよ」


 なんだか嫌な予感がする。

 ここにいたら二人の実験に付き合わされる未来が薄っすらと浮かぶのだ。

『お嬢様の掛ける身体強化の魔法なら、本当に植物が動くかもしれません』みたいな、意味のわからないこと言い出しそうなのである。

 面倒ごとの首を突っ込むとろくなことにならない。それと同じで意味不明な実験の最中に部屋に長居することも、最終的に害が及ぶ気がする。


「そんなこと言わず、お嬢様もこっちに来てください!」

「いや、私はそういうのはちょっと……って、手を離して〜」


 ほーら、やっぱりこうなった。

 今度誰かの部屋を訪ねるときは、入る前に部屋の中をちゃんと確認してからにしよう。

 そう心に深く刻み込んだのだった。


「それで、私は何をすればいいのかしら?」

 ※ソニアは逃げるのを諦めた。


「はい。身体強化による植物の動性化は失敗したので、別の実験をしたいと思います! 次の実験はですね〜、一度枯れた植物に治癒魔法と暗黒空間を同時に与えます」

「そしたら、どうなるの?」

「植物が動く……らしいです」


 また動く系なのね……。

 というか、治癒魔法はともかく暗黒空間とは中々珍しい魔法を使うものだ。

 闇属性の魔法であるものの、発動時間の長さと持続時間中に消費する魔力量がとんでもなく多いことから、あまり使われることのない魔法。

 対象に対しての効果は視界の一時的消失、運動能力の低下、思考力の遅速化、移動制限というような影響を及ぼす状態異常攻撃。

 攻撃魔法ばかりを使うフローレンスやフレッドには無縁の魔法である。


 ……ん、二人には無縁の魔法?


 ……まさか。


「私に暗黒空間をやれってこと?」

「察しがいいですね。流石お嬢様といったところでしょうか」


 フレッドが感銘を受けたかのようなにこやかな笑みを浮かべる。

 いやいや、私の魔力量が多いことをいいことに、嫌な役目押し付けましたね!

 やっぱりろくなことにならない。


「治癒魔法は私が掛けます。フレッドが空間隔離の魔法を使って、周囲に影響がでないようにしたら、お嬢様は暗黒空間を植物に放ってください!」

「分かったわ」


 無駄に抵抗すると、余計に労力を消費する。

 大人しく従うか。


 フレッドの空間隔離の魔法を感知、私はすかさず暗黒空間の術式を構築する。

 単純な攻撃魔法と違い、細かな術を頭の中で作り上げないといけない暗黒空間はとても面倒くさい魔法。発動に時間が掛かるのも、それが影響している。


「行くわよ」

「はい、お嬢様に合わせます」


 暗黒空間は範囲的に作用する魔法。でも、今回の対象はフレッド持っている鉢植えの植物だけである。

 範囲は本当に小さくで十分。

 あまり範囲が広すぎると、フローレンスやフレッドにまで効果が及んでしまうからだ。

 範囲が小さいと魔力消費も少なく済む。

 なるほど、実戦で使う分にはかなりの魔力量を有する暗黒空間であるが、小規模のお試しサンプル的な感じに使うとそこまで燃費が悪いとは感じられない。


 暗黒空間をゆっくりと発動。

 合わせてフローレンスの治癒魔法も植物に作用した。

 そして、僅か数分間で実験は終了した。


「「「……」」」


 二つの魔法に干渉された植物は……。


 



 なんの変化もなかった。


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