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村から追放、でも魔女に拾われました

がんばります。

「アベル申し訳ないが、この村を出て行ってくれ。」


いきなり村長に呼びだされた僕に唐突に村からの追放を言い渡された。


それを言い放ったのは、僕の後見人であり、幼なじみのアリアの父であるローレンだ。

この客間にはローレンの横にはこの村では見たことのない身なりのいい自分より年上の男が座っている


「ちょっと待ってください!!?僕、何かしましたか?罪に問われるようなことをして追放なんですか?」


「いや、罪に問われることは何もしておらん。」


「なら……」


「お前は、アリアと親友だと思っているらしいな」


横の男が口角を上げ、睨みつけながら言う


「アリアは俺の婚約者だ!君見たいのがいるといい迷惑なんだよ」


「え、それはどう言う……」


初聞きの情報に知らない男にいきなり罵倒されていることも忘れてしまう。


「こちらの方はマーオくんと言ってダインカ商会会長の一人息子だ。」


「そして、アリアの婚約者だ。」


村長とマーオの言葉を理解するのに頭が追いつかない。

アリアが結婚?婚約者?


アリアとは僕の幼馴染みで、村長の家に居候させてもらっている僕にとっては生まれてきてから一緒に暮らしていた家族だ。

流れるような銀髪でこの村のアイドル的存在、それがアリアだ。

僕はアリアが好きで、アリアも僕のことを好いていると思っていた、将来、本当の意味で僕たちは家族になれるんだと、そう思っていた。


ショックで言葉も出ない僕にマーオは口角をさらに上げ気持ちの悪い笑みを浮かべながら


「君のことはアリアからよく聞いているよ」


「僕の話?」


笑いを堪えるのに必死な様子で笑いながら


「あぁ、少し、優しくしただけで付き纏ってくるストーカー野郎だってなぁ!!」



「アリアがそんなこと言うわけないだろう!!彼女を貶めるな!!」


「彼女は君に会いたくないってさ、代わりに手紙を預かってきた。読んでみろよ」


懐に入っていた手紙を指で弾き、自分との間に設置してある机に滑らせる。

僕はその手紙を取り、内容を確認する。確かにこの丸みを帯びている字はアリアの字であり手紙の内容を見た瞬間、世界が急に色あせて行った。


「婚約者がいるのにその関係を壊そうとしている。君は悪いやつだなぁ」


ソファからゆっくりと立ち上がり、僕の方に向かってくる。


「今回のことは重く見ていてねこれが続くとなれば、我が商会は今後、この村の援助の停止も考えねばならんと思っていてね」


あぁ、そっか、これは全部、結果が決まっていることなんだ。

そう、考えないと自分が壊れるとアベルは思ってしまった。


「今後、この村を一つの商業のポイントとしている我々としてはお互いに損でしかない。そこで君さえ居なくなればローレンさんは我々の信頼を取り戻し、アリアもストーカーの君が居なくなり、安心する。もちろん僕もだ。」


どさり

机の上に手のひらに収まるくらいの小袋を置くマーオ

「ただ、無一文の子供である君がこの村を出て行ってもすぐに魔物に襲われて死んでしまうだろう。これは餞別だ受け取りたまえ」


「要らない、そんな金!!」


そう言い、その小袋をはたき、机から勢い良く落とす。


「村長、僕は今まであなたのこと家族だと思っていました。いつか本当の意味でもなれるんじゃないかって」


悔しくて悔しくて悔しくて堪らなかった。涙が溢れでてうまく村長の顔が見れない。

だがあの手紙を見た時からこうなるんだろうと感じていた。もう、僕は赤の他人だ。


「さようなら」


その日の夜1人の少年が村から飛び出して行った。その後の行方は皆知らない。










「くそぉぉぉぉぉぉ!!!!!アリアの糞ヴィッチががぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


村をすぐに出たアベルはもう知ったことかと言わんばかりに大声で罵倒を繰り返していた。


魔女が支配していると言われているこの森では、魔女に見つからないように通り抜けるのが基本だが


「ローレンの糞ジジィもなんだよ、途中から何も言わずにただ座っているだけなんか言えやゴラぁぁぁぁぁぁ!!!」


今まで、溜まっていた鬱憤を吐き出す。

村にいた時は常に人の顔色を窺って生きてきたアベルにとって吐き出す行為はなかなかに爽快であった。しかし


「はぁ、虚しい」


「誰か、オレを助けてくれよぉ」


いつも一緒にいたアリアはもういない。家族だと思っていたのは自分だけでみんなはそうじゃなかった。誰もが邪魔だと思っていた存在。自分を1人の人間として見てくれるそんな存在にアベルは渇望していた。


そんな時


「なら、私が助けてあげましょうか、坊や」


「えっっ!!」


後ろを振り向くとそこには女性がいた。

 

第一印象は、綺麗な女性だと思った。


 黒く黒曜石を思わせる瞳に、黒く綺麗でクセのない髪の毛を腰まで伸ばした、気の強そうな人だった。


片手に杖を持っており、なんと地面に足がついていなかった。


「あなた、あそこの村に居た坊やよね? 見た所、野営するわけでもなさそうだけれど何をしてるの?早く村に戻りなさい。ここは魔物もでて危険なのよ」


 心底心配そうに俺を見る。


「あなたは大丈夫なんですか?」


「あら、心配してくれるの?でも大丈夫私、この森の管理者だから、この森に起こっていることは大体把握してるのよ」


「じゃあ、貴方がこの森の魔女………」


「えぇ、そうよ。だから早く帰んなさい。家族の元へ」


「家族」その言葉を聞き、胸が苦しくなる。


「家族は居ません。村からも追い出されたんです。僕」


少しでも心配させないように笑顔を取り繕う。

でも


「そんな、笑顔見せられたら余計心配しちゃうっての……」


「え……」


「もう、さっき言ったでしょう。森に起こったことは大体把握してるって」


「はい……」

「私って人の感情もある程度わかるの。つまり、あんたが心配させないように気を使っていることも丸わかりってこと。」


「え、えっと……」


上手い言い訳が思いつかず言い淀んでいると


「私もね、一人なの。奇遇ね」


どこか、母を感じる、その優しい微笑みに涙が溢れそうになる。


「坊や、怖くないのなら私の所にこない?」


「えっ?」


「あなた、放って置けないもの。それに私が管理する森で死んじゃってても目覚めが悪いし。私も喋り相手がちょうど欲しかったところなのよ」


「あ、あの」


「ん?」


「よろしくお願いします!!」


「うん、私はシャル、ただのシャル。よろしくね」


「はい、僕の名前は、アベルって言います!よ、よろしくおねぎします」


こうして僕、アベルは森の管理者であり魔女のシャルとの奇妙な共同生活を始めることとなった。


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