表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/58

8

一人の少年が暗闇をうっすらとカンテラで照らす


小さな明かりは暗闇を照らすには心許なく揺れている


「入りなさい」


従者と言えどこんな夜更けにうら若き乙女の部屋に入るのは御法度だろう

閉ざされた扉により再度暗闇に戻る長い廊下は2人を隠すように静まり返る




「手を出して」


ベットに座らせた従者見習いの手の上に箱を乗せる


確かにあの時、光っていたはずなのにそれはうんともすんとも言わない


「充電切れか?」


彼はそれを慣れたように掴む

じゅうでん、、とはなんだろう


「バッテリーがおかしいのかな・・・どれ、」


バカっと後ろを開けられ思わず叫びそうになる


「何をなさるの!!壊れたらどう責任を!」


まくし立てようと近づく私を制すると彼は瞳をあげる


「お嬢、これどこで手に入れた?」


射抜くような金色の瞳

ライオンのような、獰猛な捕食者の瞳だ


「どこって、落ちていたんですわ、そこに」


そう言って座っているレオの足元を指す

起きて、ベットから立ち上がった時足に当たったのだから、確かそのへんだ


「これが何かは知っているのか?」


その質問に応えようとして口篭る

何か、と言われたらわからない

知っているのはどんな選択の先にも自分の未来はないというのを教えてくれたということだけ


「ハッキリは分かりませんが・・・何をしても私が助からないということだけは分かりましたわ」


私がそうつぶやくと彼はカッと目を見開く


「なんだ、もうプレイ済みか

んで、どうだった感想は?」


どう、も何も


「とても面白かったですわ

これがこの先起きる未来を暗示したものだと知る前までは、ですけれど」


私の言葉にうーんとレオはうなる


「暗示っつーかなんつーか」

ブツブツと呟いてから顔を上げる


「いいか、この話を聞いても俺を頭のおかしいやつだなんて思うなよ?」


そう言ってレオは腹を括ったように色々と話し始めた




「という訳だ、俺の世界ではそれは物語に過ぎないからな

俺からしたら自分が書いた小説に迷い込んだ気分だ」


まぁ、ここは現実なんだが


そう続ける彼にわなわなと肩を震わす


「あなた、わたくしになにか恨みがあって?

何故こんなにわたくしばかり苦行な作品になさいましたの!」


怒った私のセリフに彼はうーんと頭を悩ませる


「こういうかませ犬みたいな存在がいると盛り上がんだよ、物語はよ」


やれやれと言われたセリフに私だって言わずにはいられない

命がかかってるんだ、こっちは


「改編してくださいませ!!」


そう叫ぶ私にレオはポカンと口を開ける


「いやいや、俺ももう登場人物の1人だからな

やったか?レオルートは」


それもそうだ、彼がここから何かをして物語が変えられるなんて都合のいい事、

出来るわけがない

そもそもここは彼が書いた物語なんかでは無い

ちゃんとした現実だ

当初の通り予言書を手に入れた、とでも思っておいた方が良さそうだ


「いいえ、やってませんわ」


少し落ち着いてからそう答えるレオはふーんと興味がなさそうに答える

そっちが聞いたんじゃないか


「んで、誰を攻略したんだよ」


「攻略って・・・なんだか人聞き悪いですわね

エリックルートと、従兄弟のレイクスのルートですわ」


言っていて少し恥ずかしくなる

バレてしまうじゃないか

従兄弟のレオリックに憧れていたということが

まぁ、幼い頃のそれが今も続いている訳では無いが


私が得体の知れない箱に夢中になったのはこれだ

スタートと同時に憧れていた従兄弟そっくりなキャラクターがたまたま同じ名前だったのだ

ついつい夢中になってしまったが

よく考えたらおかしな話だ

レオリックルートに出てくるお邪魔キャラは彼の従姉妹のクリスティーナなんだから


モジモジしている私にレオは頭を抱える


「おいおい、たった2人かよ

このゲームに何人攻略キャラがいると思ってんだよ」


「仕方ないじゃない、動かなくなってしまったんだもの」


それもそうかと彼はぴーえすぴーと呼んでいたそれをベットにポンっと投げた


「乱暴にしないでくださいませ」


それは私の命綱なのだから


私の言葉を無視したレオはウンウンと唸ったあと顔を上げる


「もうストーリーは進んじまってるしな

俺もお嬢のことは助けてぇし

協力してやるよ、結末を知っているもの同士頑張ろうぜ」


主人に対してその言い方

失礼だと叫んでもやりたかったが許してやることにした

正直、心細かったのだ

1人で立ち向かうのは


「悪役令嬢はヒロインになれるのかね」


そう呟いたレオに少なからず安心感を覚えてその日は解散になった



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ