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6

少し外に出ると予想以上に自分を探す追手が溢れかえっておりぎょっとした

こんな簡単な仮装でどうにかなるなんて思えないが

誰一人私がクリスティーナだと疑う様子もない


それもそのはず

囁かれる特徴はひどいのだ


金髪 吊り目 白い肌 青い宝石のネックレスなど割と見た目の特徴も多く上げられているが


悪魔のような女

話しかけただけで罵られる

目を見ると石になるなんて噂もまことしやかに囁かれている


私をなんだど思っているんだ

だから多少怪しまれても・・・


グイッとつかまれた肩にウルウルの瞳で振り返る


「おいお前・・・」


「なんでしょうか・・・」


か細い声を出せばこちらを見た衛兵たちは勝手にクリスティーナではないと思うようだ

後宮出身の側室の子だと思い帰り道はあっちだとまで指示してくる有様

大丈夫かこの城は


「・・・あのっ」


恐る恐る後宮への道のりを教えてくれている近衛兵らしき人を見上げる


「何があったのでしょうか・・・?」


おどおどと

あくまでただの迷子に見えるように言葉尻をすぼめて聞くと少しあたりをきょろきょろした後その男性は私の耳に唇を寄せる


「后妃になったばかりのクリスティーナ様が行方知れずなんだが・・・どうやら前王を殺害したらしいんだ」


「・・・えぇっ!?」


叫び声に慌ててその男は私の口をふさぐ


「勘弁してくれよ!」


コクコクト頷くと解放される


「とにかく、ハキーム殿下はとんでもない女を娶っちまったってことで

捕らえて送り返すなり処刑するなりするんだろ」


その言葉に気絶しそうになる

無実の罪で処刑なんてされてたまるものか


「教えてくれてありがとう」


慌てて駆け出したのは後宮の私がいた部屋

笛を置きっぱなしだ


なんとなくあれはとっておいた方がいい気がした



「・・・ふむ」


死体を前に集められた兄弟たちは未だ生々しく残る血痕を前に重く沈黙していた

集まったのは全部で20人程度

母親は違えどみんな同じく王の子供で15歳という成人を迎えた男のみだ

他にも沢山後宮には兄弟がいるが、成人しているのはこの20名だ


重い沈黙にフッと息を吐くと俺はようやく口を開いた


「ハキーム、お前の婚約者は暗殺者か何かを雇ったのか?」


その言葉に顔を上げたハキームは俺ににらみを利かせる

まぁ、クリスティーナは昨夜自分と一緒にいたし

間違いなく犯人じゃないのは分かっている

裸を見ただけで大騒ぎする女だ

人の死体なんてきっと気絶物だ

どうも血なまぐさいこの国は一夫多妻制なこともあり兄弟間の暗殺やらなんやらは日常茶飯事だ

現王も兄弟に手をかけたりなんなりでこの地位にのし上がったのだ


「本人による感情的犯行だと聞いている」


一拍後に口を開いたハキームに目を細める


「第一発見者がお前なのに誰に聞くんだ?」


あからさまな疑いの目にハキームも強い嫌悪感を隠さずに口をひらく


「何を疑ってるのか知らんが、従者が走り去るクリスティーナを見て報告に来たんだ」


イライラと指を動かすハキームにザイドは口角を上げる


「初夜に夜伽もないとは・・・お前から逃げるためにクリスティーナは走っていてのでは?」


カッと顔を赤くして俺に殴り掛かろうとするハキームをラシャドが一喝する


「やめないか、二人とも!

ザイド、どうしてそんなに突っかかるんだ!ハキームは兄で、王なんだぞ!!」


その言葉にラシャドをちらりと見る

確認の時はアリが来ていたようだが、さすがに本人が来たか・・・

簡単にハキームを王などと・・だから貴様は王にふさわしくないのだ


「どうして突っかかるか?

おかしいと思わないのか・・・本当にだれも?」


ハンッと鼻で笑い床に落ちる血痕に1歩近づく


「・・・即死か、女性の手で殺すとなれば不意を突いたとして・・・首に刃は届くかな?」


首を切られて死んだのは運ばれる前に確認している

数人の王子たちが少しハキームを気にしながら躊躇いがちに頷いている


王は高身長で185cm近くあった

それを160cmやそこらのクリスティーナが殺せるだろうか


「就寝中襲われたのでは?」


そのハキームの言葉には反吐が出そうになったが堪えた


「だったら死体は寝台の上だろう」


この部屋には壁に本棚と、リラックスできるようなソファと机が置いてある

寝る前に軽く一杯昔付き合わされたのを思い出し柄にもなく懐古心に浸る


1杯煽っていた所、部屋に入ってきた人がいた

きっとある程度信頼していた人物だ

入れと促し

何かを言われソファを立った所で首を切られたのだろう

そのまま横に倒れて死んだと血痕と遺体の位置で分かった


つまり、クリスティーナ自身には不可能なのだ

そもそも夜遅くにクリスティーナが訪れたとして

単身の彼女をこの部屋に王が入れる筈がない


ラシャドが神妙な面持ちで眉間にシワを寄せる

まだアリの方がいい考察ができるだろう


やれやれと溜息をつき俺はワシワシと頭をかいた

とりあえず、従者を探すと足取り軽く部屋を出たクリスティーナがハキームの兵に見つかったら面倒だ

早々に見つけ出して回収しなくては



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