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「な・・・な・・・・!?」
ようやくついた宮殿で私は肩を震わせる
「似合いすぎていますわ・・・!!」
着せられたドレスに鏡に張り付く
露出は多いがとてもかわいい
「あー、それ確かデザイナーの趣味だな
それじゃあ踊り子だろって思ったんだが・・・アラジンのお姫様はこの格好だったとかでごり押しされたな・・・まぁ可愛いからいいか」
着替えが済み、通されたレオが何やら呟いている
綺麗な紺の布地に金の刺繍
散りばめられた宝石も綺麗でなんとも魅力的だ
広がったバルーン型のズボンは生地が薄く歩くたびにふわりと揺れる
「普段のドレスよりずっと動きやすいのもとってもいいですわ
風通しもいいし・・・お腹回りが出ているのは少し恥ずかしいですけれど・・・慣れてくるのかしらね」
くるくると回りながらドレスを確認している私にレオは薄く笑う
「お嬢はなんでも似合うな」
「当然ですわ」
薄く笑いレオの方をツンと押す
「貴方も素敵ですわよ」
白を基調とした民族衣装に身を包んだレオは肌が褐色なせいか現地の人にしか見えない
「俺こっちの出身なんかな?」
クスクスと笑いあいふぅと一息つく
「それでは謁見の間に行きますか」
レオの言葉に頷くと慌てて一人侍女は私を呼び止める
「こちらをお付けになってください」
「えぇ」
首に掛けられたひときわ大きな宝石の輝くネックレス
こんな仰々しいもの必要ないんじゃとも思ったが綺麗なので良しとしよう
一足先に薄暗い廊下に出ていたレオに寄り添い謁見の間を目指す
「すごく立派なネックレスですわよね・・・」
ちらりと見せるとレオがサァっと顔を青くする
「お嬢それ・・・ッ」
慌ててレオが止めにかかるが謁見の間が開き中に促される
また後でと合図を送るが引き留めようとレオが私に手を伸ばす
侍女たちに押さえつけられるように引き離されたレオに違和感を覚えたがもう進むしかない
通された部屋に私も固まる
ワァァァァ
国民からの盛大な歓声に包まれたそこは城下の広間を城から見渡せる
いわゆる国王が民衆にスピーチなどを行うバルコニーだった
ごほん
隣でされた咳払いに私はあわててそちらに目を向ける
「我が息子ハキームの戴冠式だ」
耳元でささやかれた言葉にあぁと頷いたがいや待てよ
聞いていない
それに現国王が私の隣に、その奥に后妃
そして今広間で演説をしているハキーム王子・・・
いや、今正式に王になるのか
ここに私が立っているのはおかしい
これではまるで・・・
血の気が引くのが分かった
振り向いたハキーム王子は赤い髪が印象的な好青年だった
手を引かれるようにハキーム王子に前へと出されその絶望的なフレーズを聞いた
「我が妃に向かえた人を紹介しようクリスティーナだ」
そのあとに続く私の紹介は耳に入らなかった
言われたことの衝撃に唖然としているうちに演説は終わっていた
◆
肩を抱かれるようにしてたどり着いた部屋で私はようやく正気に戻った
サイードの手を振り払い睨みつける
「貴方、どういうおつもりですの・・・」
ハキームはふぅと力が抜けたようにソファにだらしなく座ると私を見る
「はぁ・・・面倒だな・・」
パンパンと手を二回たたくと従者の男性がスッと入ってくる
「クリスティーナ嬢に説明を」
めんどくさそうに声を上げるハキームに思わず殴り掛かりたい気持ちに駆られたがここは抑えておこう
「今回、エルミタージュ国王からご依頼いただいております提案ですが、あちらの詔書を認知しておりますのは私と、ハキーム国王陛下のみでございます」
「・・・は?」
何を言っているんだ、判明すれは国際問題だ
いや、私を無理矢理妻に迎えた時点でこれは国際問題なのだが
「ハキーム国王陛下は第8王子の為、王位継承は非常に困難でしたがクリスティーナ様との婚姻はその後押しになります」
ロドワール家とつながりは大きなバックヤードになる
なにせエルミタージュの宰相を務める家だ
「その為、ハキーム王子は一番にお目通しになった詔書を隠蔽、クリスティーナ様の訪問理由をかねてより自身との恋仲とし
結婚の為後宮に入るという内容に偽造し、こうして王位の獲得に至りました」
息が詰まりそうだ
「わたくしは、すでにエリック様と婚姻済みですわ」
私の言葉をハキームは鼻で笑う
「まだ、な?
知ってるぜ、婚約破棄目前だろ?
確か・・・そう、リリアンとか言ったっけ?」
ニヤリと笑われこぶしを強く握る
「いいじゃねぇか
規模は小さくなるが念願の后妃様様だろ?
どうせ捨てられるんだ、拾ってやった俺にむしろ感謝を述べるんだな」
その言葉についに耐えられなくなりハキームの頬を叩いた
「貴方、口にはお気を付けになって
そんなお飾りの立場・・・願い下げですわ」
瞬間強く髪をつかまれる
床に押し付けられるようにして叩きつけられ、強く背中を打った
「立場を弁えろよ、お前は今俺の機嫌一つでどうなるか分からないんだぞ」
強く押さえつけたられたまますごまれたが怖くなんかない
「貴方の言いなりになるくらいなら死んだ方がましですわ
自分の感情すら抑えられないお子様に・・・国を治められるかしら?」
ハンっと笑うとハキームは血走った瞳で私を睨みつけ従者の男に向き直る
「連れていけ、既成事実でも作ってしまえば良い」
その言葉に固まる
「今夜、楽しみにしているんだな」
ニタリと笑われる
そのおぞましさに唇を強く噛んだ




