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アレイデア王国編

「ジルは、もしかしたらリリアンの魅了から解けたのかもしれませんわね」


馬車に揺られながら口にした私の言葉にレオは少し考えこむ


「それも考えられるが、ジルはもともとクリスティーナを擁護するキャラクターだしな・・・

まだストーリー上いつどんな動きをするかは分からないしなぁ」


その言葉にレオをジトリと見つめる


「貴方も、ストーリーの呪縛から外れたとかおっしゃってたけれど・・・

まだリリアンに直接魅了されたわけではないのでしょう?」


私の言葉にレオは苦笑いする


「まぁそうだけど・・・なんかこう、あったんだよ歯車から外れた感じというか

解き放たれたような・・・」


うーんと考え込む彼にふふんと鼻を鳴らす


「まぁ、わたくしに危害さえ加えようとしてこなければ、リリアンと恋に落ちるのは自由でしてよ」


私の言葉にレオは少し複雑そうにした後まぁいいかとため息をつく


物語では、まず最初に誰と恋に落ちたいか選択し、それによってヒロインの立場が変わる

途中での相手変更は不可

よくお城にいる事を考えるとリリアンはエリックかジルルートのどちらかにいる

高確率でエリックだろうが

現実の恋煩いというものが移り気なことくらい私だって知っている

物語と違ってルート変更ぐらいあり得るだろう


うっとりとリリアンを見つめるエリックを思い出す

彼女がターゲットとして選ぶとああなってしまうのだとしたら


ゾクリと背筋に冷たいものが走る

何人に移り気を起こすか分からない

まぁその対処としてこうして諸国巡りをしているのだが


そうして次の国の資料に目を向ける


アレイデア王国・・・馬車を半日乗り継ぎ、船で一日、砂漠をラクダでさらに一日半行ったところにある国家

ここと、熱帯雨林にあるビーステイン王国は行ったことが無い

他は兄や父に連れられて足を踏み入れたことはあるが

砂漠をラクダに乗っていく行中に少し胸を躍らせる

多くの貴族令嬢たちは嫌がりそうだが・・・面白そうではないか



「う゛ぉえぇぇえ゛ぇえぇえ゛ぇぇ」


甲板に突っ伏す私をレオが苦笑いで背中をさする


「お父様とお兄様が・・・アレイデアとビーステインに足を運ばない理由が分かりましたわ」


青い顔で起き上がるとレオが水を差しだしてくれる


「お二人はラクダも気持ち悪くなるとおっしゃってましたよ」


追い打ちの言葉に再度船から顔を突き出しこみ上げるものを吐き出す


「痩せそうですわね・・・」


「クスリとか無いか聞いてくる」


走っていくレオをわき目に沈んでいると同じように隣で苦しむ少女がいた

ジルと同い年くらいだろうか

相当つらいのか泣きながら甲板に這いつくばっている

船内に走っていったレオを見て同じようなことを思いついたのか少女の隣に立ちおろおろしていた年配男性も慌てて船内に掛ける


同志よ・・・


生暖かい目で見守りつつも私も自分のことで精いっぱいだ

ぐわんと揺れる船に私たちは同時に船から顔を突き出した


「お嬢、お待たせしました」


走ってきたレオにクスリと水を渡される


「ありがとう・・・」


震える手で受け取クスリを飲もうとしたが手を止めた

しょんぼりとした年配男性が少女に首を振る


どうやらクスリはこれしかなかったようだ

正直なやんだが仕方がない

私は震える手でクスリを隣の少女に突き出す


「飲むといいわ・・・わたくしは・・だいじょう・・う゛っ」


「で・・も・・・」


困惑したように震える彼女の手にクスリを押し付ける


「わたくしの・・これは決して船酔いでは・・・っ」


甲板に沈む私に少女はこくりと頷きクスリを飲む


少しして収まったのか少女はすやすやと寝息を立て始める

疲れるものね・・・吐くのって

いまだ絶え間ない吐き気と闘いながら私は年配男性に抱えられていく少女を見送る

去り際に一礼したその男性に軽く会釈を返すので精いっぱいの私をレオが背中をさすりながら代理にお大事にと添える

そんなにいいわけではない身なりだったが、綺麗な一礼だった

もしかしたら王宮で働いているのかもしれない



一日中吐いて死ぬような思いでようやくついた港に私は目を輝かせる

出港時の石造りで灯台や白い家の立ち並ぶ港町も素敵だが


並ぶ露店とエキゾチックな着物

木組みの簡易的な足場も何とも言えない魅力がある


風が吹けば黄砂が舞い

キラキラと金色の雪を降らせる


ランプで照らされた夜市と香辛料の香りに沈んでいた気持ちが向上する


「素敵・・・!」


船から降りて商店に掛けたい気持ちに駆られたがぐらりと体が傾く


「お嬢・・・!とりあえず一度宿で休憩しましょう」


「え・・・えぇ・・」


抱えられるようにして宿に運ばれ今日は幕を閉じた



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