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「クリスティーナ、クッキーおいしい?」


なぜかとってもなついたジル王子に私は笑みを返す


「えぇ、とってもおいしいですわ

呼んでくれてありがとうございますジル王子」



私の返答に少しむくれるとジル王子は椅子から飛び降りてテーブル越しの向かいに座る私の近くに寄ってきた


「王子じゃないよ、ジルがいい、敬語も好きじゃない」


あらかわいい

まだ10歳だったかしら


柔らかい髪につい手を伸ばすと私は微笑む

できるだけ優しく

女神のように


「それじゃあジルとお呼びしようかしら

昨日のバラ園はとっても綺麗だったわね・・・他にはそんなお花が咲いているの?」


私の言葉にジルは嬉しそうに笑うとちょっと待っててと駆けだした

私の為に花を摘んでくれるようだ


「ジル、怪我はしないようにね」


優しく見送るエリック王子

フフッと微笑ましく笑いながら見送る


ここからが勝負だ


「ジルは随分と君に懐いたようだね」


穏やかな顔でそうつぶやく彼を正面にしながら私も淑女の笑みを浮かべる


「とても仲がいいんですのね・・・てっきりその・・」


「あぁ、派閥争いなど色々言っている方が多いようですね

私は先日ではありますが成人しましたが・・・ジルはまだ10歳です

幼い弟を可愛がるのは普通ですよ」


口元は綺麗な笑みだが瞳は笑っていない

エリック王子は腹黒な策略家・・・ヒロインには甘々だが攻略も難しい

純粋無垢な彼女にあてられるが

私にはそういった方法は出来そうにない


「ジル王子は可愛いものね」


ふわりと賛同の笑みを浮かべた後

落とすのは小さな爆弾


「髪も銀色で国王陛下そっくり」


ピクリとエリック王子の眉が動く


王様の髪色はシルバーカラー

皇太妃様の髪も透き通るような白

つまり金色は生まれないはず

旧国王陛下は金色だったようだから可能性はゼロではないが

第一王子も綺麗な銀の髪だと聞くし

第三王子もご覧の通りだ


彼だけ、違うのだ


第一王子や第三王子を推薦する派閥からは彼は妾の子だとまことしやかい囁かれている

まぁ、噂に過ぎないが


「クリスティーナ様は何か言いたいことでもおありなようですね」


綺麗な笑みだが少し黒く見える

やはり気に触っているようだ

物語でもそうだが、まぁそうじゃなくてもここは気にするかもしれない


「東の森の奥、精霊の湖、小さな山小屋」


物語の設定だ

エンディングの後のエピローグで見れる

彼だけの秘密


私のつぶやきに彼は目を見開き

途端に表情を険しくした


「どこで、それを」


震える唇に頭の奥がチクリと痛くなる

これはもう確信せざるを得ない

こんな設定まで、物語と一緒なはずがないのだから

あの物語は、現実だ


私は片手をあげて自分の家からついてきたメイドを下がらせる

それを見てエリック王子もハッとしたのか同じように側使えを下がらせた


これで完全に二人きりだ


「わたくしは、あなたに害をなすつもりはありませんわ

先程の情報も、まだ私しか知りませんわ

お父様にもまだ言っていないですし」


すこしまだを強調すると目を細めた

向かいの彼も先程の動揺が嘘のように冷静に目を細める




エリック王子の実の母親はただのメイドだ

側室でもなければ妾でもない

立場のない貧乏な女


皇太妃様は焦る

思いのほか見目麗しく生まれた第二の跡継ぎの存在に

聡明に育つ自分の子ではない存在に


ただ、殺害するには王は彼女を寵愛していた


だから閉じ込めたのだ

森の奥に


寵愛のみがエリックの母をなんとかこの世につないでいたが

義弟が生まれた今

いつその愛が枯れるかも分からない

いや、もう枯れているのかもしれない

森に王が姿を消すところを、もうしばらく見ていない


エリックが次期国王との呼び声高い今

世代交代の際の報復を恐れて手にかけられていないか

寵愛を失い

第三王子が正当な後継者となってしまっては彼の母はこの世にいられなくなる


エリックは焦る

幼少期のみであるが優しい母のぬくもりは確かに自分に残っている

だから近づいたのだ

幼い義弟に

彼に慕われて兄と呼ばれること

兄の為に頑張りたいと思わせることで次期国王を自然と譲らせる

だがそれだけでは足りない

自分には必要なのだ

大きな力が

揺るがない支援者が



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