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「断わる」


きっぱりと言われた言葉に私はムッと顔をしかめる


「わたくしが話しかけるほうが自然ですわ

いざとなった時もあなたよりわたくしのほうが強いですし」


そういって指輪をなでる

レオは少し複雑そうな顔をした後ため息をつく


「それは最終手段だろ・・・事も大きくなるし

・・・俺のほうが設定資料とか詳しく知ってる

医療従事者じゃないがそれなりにうまく近づけるはずだ」


レオの言葉に私は押し黙る

まぁ、今はまだレオに行ってもらった方がいいだろう


私は庭園の柱の陰に隠れながらレオが近づき呼び止めた人を監視する

端正な顔立ちの落ち着いた雰囲気の男性

優しそうな眼と物腰の柔らかい話し方

とてもじゃないが犯人とは思えない


王宮お抱え医師の一人のディアン

人柄はもちろんだが腕もよく城内のすべての人に慕われている

何より

クロルド王子に医療の道を教えたのも彼だ


昨夜、クロルド王子の部屋に忍び込み少し話したが

彼の頭の中はナイルをドラッグとして販売した人の特定にはあまり向いていなかった

どうやって中毒者を更生させるかや

中和する薬の作成などに向いている


犯人を特定して、何とかやめさせようと説得する私とレオにそういったことは君たちで頼むとそっぽを向かれてしまった

根源から立つのが基本だと思ったが、現在薬物に侵されている人に対する罪悪感も強いのだろう

ある程度の証拠収集までは私とレオでやるしかなさそうだ


「相手がだれであろうと、協力なさってね

わたくしたちだけの証言じゃ、あまり動いてくれない可能性もありますもの」


私の言葉に微妙な顔をするクロルド王子を思い出しながら

にこやかな顔で奥へと案内をされるレオを確認する

どうやらうまくいったようだ

ディアンと談笑しながら扉の奥に消えていった

とりあえずは信頼を勝ち取ってもらう

手掛かりはきっとそうすぐに得られるものではないだろう





「・・・どうやって入ったんだ」


夜ご飯をもってクロルド王子の部屋に入ると呆れたような恐れたような声でクロルドが尋ねてくる


「どうもなにもありませんわよ

正面と裏口が塞がれた今、残るは窓のみ、ですわ」


実は昨夜、裏通路がクロルドによって閉鎖されたことを受け

私は奥の手を使った

血の一滴ですぐさま来てくれる漆黒の魔王様


「どうした、クリスティーナ・・・余に会いたくなったか?」


妖艶に微笑み顎をつかみクイッとあげられる


「レヴィリア様」


熱っぽい視線に侵される思考で無意識に名前を口にした

優しく甘く耳に唇を寄せられ腰が砕けるような刺激が体を駆け抜けた


「はいストップゥー

お嬢、失礼しますねーレヴィリア様こちらにおかけください」


間に入ったレオにイライラとした顔のまま無理やり座らさせられたがすぐに片肘をつきやれやれとため息をつく

レオが用意した紅茶をすすると視線を私に向けた


「こほん・・・レヴィリア様、お呼び立てしてしまい大変申し訳ございませんわ」


まだドキドキと高鳴る胸を必死で抑えながら優雅に一礼する


「お願いしたいことがあってお呼びいたしましたの」


にこりと笑う私の隣でレオが複雑そうにため息をつくのが分かった



こうして私が手に入れたのはプチワープだ

半径100m以内でしっかりとイメージができるところにワープができるというものだ

もっと広範囲だったら家に帰れるがレヴィリア曰く、体への負担が大きく人間には耐えられないとのことだった

つまり、与えられた客間から瞬時にクロルド王子の部屋に瞬間移動ができるようになったという事だ




「くそ、窓もなんとかしないとな」


親指を噛みながらそう声を上げるクロルド王子ににこりと微笑みを向ける


「窓を閉め切ったら実験に支障が出ますわよ?

それに、その程度で私がこなくなるとでも?」


私の言葉にクロルドはうなだれる


「そのうち地面からも湧きそうだな」


「あら、よくお分かりで」


得意げに言い放つとクロルドはやれやれと私を見た


「食事を持ってきてくれたんだろう? ありがとう」


素直に食事に手を伸ばされキョトンとする


「あら・・・観念なさいましたの?」


私の言葉にクロルドは少し考えた後口を開いた


「時期后妃として努めようとする君を、こんなことに巻き込んでしまって・・・」


机上にはいくつもの解毒剤のサンプルがある

それを見つめながらクロルドは黙った

申し訳ないと、そう思っているのだろう

すぐに自責の念に駆られてしまうようだ

ナイル蔓延の件といい

私が協力関係を申し出た件といい


「わたくしは、チャンスだと思っていましてよ

もしこの問題が私によって解決してしまえば良い貸しになりますもの?」


ニヤリと笑うとクロルドもぎこちなく笑う


ありがとうと小さく囁かれた言葉はあえて聞き流した



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