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ようやく執務がすべて終わりほっと一息つく
思えば、クリスティーナが来てすぐ変なトラブルや小さな案件が大量に自分のところに流れてきた
きっとイザベラの仕業だったのだろう
仲良くしているようだしとイザベラに案内などをすべて一任したが随分と大変な目に遭っていたようだ
サンドイッチから飛び出るカエルを無表情で見つめていたクリスティーナを思い出し罪悪感が沸く
どれだけやられればあんなに反応しなくなるのだろうか
約三週間
耐えかねた彼女の仕返しはイザベラを勘当まで追い込んだがクリスティーナ本人が止めたようだ
正直イザベラの態度は横柄で何度も注意を促したが
「お兄様は貴族が何か、お分かりにならないでしょう?」
そう言って笑う彼女にさじを投げたのは事実だ
結果クリスティーナに迷惑をかけ、あのような行動まで起こさせいてしまった
申し訳なさでいっぱいだ
今日はクリスティーナと城下視察
午後は国際情勢についての講義がある
お互いの国についてどのように教えているのかを実際に聞き
相違や一方からの観点に偏った教えがないかすり合わせるといったものだ
少し睡眠時間を削って公務をしてしまった
コーヒーでも飲んで頭をさえさせた方がよさそうだ
下に降りるとアワアワとしたメイドや従者たちが行きかっていた
「・・・どうした?」
そう尋ねると少し気まずそうに厨房を見る
何かと顔をのぞかせると厨房内の小さな丸机にイザベラとクリスティーナが突っ伏して寝ていた
机にはお皿
コンロには焦げ付いた卵と野菜が少しだけ残っていた
「昨夜、イザベラ様に色々なさってくれたみたいで・・・」
よく見るとクリスティーナは救急箱を抱えて寝ており
イザベラの手はあちこち絆創膏が貼ってあった
「なるほど・・・」
やっぱりクリスティーナは面白い
あんなことがあったのに勘当から庇い世話まで焼くとは
貴族らしく、王族でないとと気を張り詰めていた自分に
その方がずっといいと平民の姿を進めたり
ベットに運ぶべきかと考えあぐねていると横をすたすたと黒髪、褐色の少年が通り過ぎる
「お嬢、体痛いでしょ・・・そんなところで寝たら」
「んー?レオ??」
「ほら、寝室行きますよっと」
寝ぼけ眼のクリスティーナを軽々と抱き上げると颯爽と横を通り過ぎる
「・・・好きなら中途半端なことすんなよ」
通り過ぎ様につぶやかれた言葉に思わず振り返った
お姫様のように抱き上げられたクリスティーナを驚くほど優しい眼差しで見つめる彼に思わず息を止める
眼光の鋭い冷たい少年だと思っていたが
あれは自分に対する牽制か
一か月という長い期間クリスティーナを引き留めようと動いた
そのうえで妹によるいじめに気が付けなかった間抜けな王子
きっと彼の目にそう映っているだろう
否定なんてできそうにないが
「イザベラ様は・・・?」
おずおずと申し出たコック長の言葉に
うんうんうなっている妹に目線を落とす
移動してやる義理はないが
起こすくらいならいいだろう
面倒だが血はつながっているのだ
小さくため息を落とし気の重いまま手を伸ばす
この愚妹はきっと起きたらまた騒がしいのだろう




