表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/58

3

私はエリックから届いた手紙に目を通しにんまりと口角を上げた

舞台が整ったのだ


ただ、賢いエリックのことだ

私とイザベラのいざこざに気が付いたようだ

お手柔らかに

と書いてあった

私の事を一体何だと思っているのか


同じ悪役令嬢として、更生させたいといった気持ちもあるのだ

まさか地の底に落としてやりたいなんて気持ちはない


レオはというとすっかりイザベラに気に入られ

彼女の隣を平然と歩いていた

今朝、たまたま廊下ですれ違ったがイザベラに勝ち誇った顔で見下されなんだかもやもやした

なんて言って取り込んだのだろうか


無事メイドとのコンタクトにも成功したようで

今ではメイド長とも懇意の仲だ


距離の縮め方が短期間すぎる

我が従者ながらに恐ろしい


もちろん密会は出来ない為、エリックがくることが決まった事

アッシュと国王、王妃にその旨を伝えたこと

アッシュとエリックの懇話日時についてを密書としてしたためる


イザベラにはその日時はアッシュ不在日として知らせるようにと書き加える


そうして封をすると廊下に出る


ここから広間に向かう途中にある螺旋階段

その壁に飾られている花瓶の裏

柱で見えないそこに手紙を貼るのが私とレオの交流方法だ

毎日昼の13時と20時が手紙交換で私が訪れる時間だ


すでに貼られていた紙を引きはがし張り替える


そそくさと部屋に戻ると封を開ける

イザベラの最近の様子

私の今日のいやがらせ内容


そしてその指示書が入っていた


思わず顔がにやけて止まらなくなる

破棄するよう強く言われているであろうこの紙を手に入れられたということは

イザベラ付きのメイドたちはこちら側に倒れたということだろう


それに


動かぬ証拠が出てくれたおかげで彼女の言い逃れは不可能となったのだ



そうして今目の前に戦慄したイザベラと対峙するように私は座りにっこりと笑った


「エリック様、遠路はるばるいらっしゃっていただきありがとうございます」


お互いのあいさつの流れでイザベラが紹介されたがどこか上の空でエリックと挨拶をする

椅子に掛けた二人の前に紅茶が運ばれる


「それにしてもイザベラとクリスティーナ様が仲良くなってよかった

こうして毎日のようにイザベラがクリスティーナ様を誘ってお茶のもてなしと昼食をとっているんですよ」


何も言っていないのにそうアッシュから説明を受けるとエリックはさわやかな笑顔でそうですかと答える

きっと心の奥では苦笑いしているに違いない


「砂糖は?」


「ええ、ありがとうございます」


私とのお茶会の時点で用意されていた砂糖が砂なのは確認済みだ

机上に乗ったそれにアッシュが手を伸ばすとイザベラはガタリと立ち上がる


「えっと、そちらは・・・用意してから時間がたっておりますので新しいものを・・・」


アワアワとアッシュからシュガーポットを奪おうとする手をエリックが制する


「いえ、まだまだ残っておりますしわざわざ出していただくのも申し訳ありませんので」


その言葉でアッシュがサッとエリックの紅茶に砂を入れる

その様子を見てイザベラは明らかに顔を青くする


ゆっくりとエリックがカップに口をつけ顔をしかめる


「なんですか?これは」


その言葉にアッシュは少し紅茶を飲み首をかしげる


「特段変わりはありませんが」


その言葉に私は笑顔でエリックに向き直る


「こちらの地方では砂糖の代わりに砂を入れるものだと、イザベラ様が教えてくださいましたのよ

変わっていますわよね?」


そういって何食わぬ顔でじゃりじゃりとした紅茶を飲む

私のカップには先程イザベラがいやというほど砂を入れていた


私の言葉に顔を青くしたのはイザベラのみでなくアッシュもだった、慌ててシュガーポットに手を伸ばし一つまみ口に入れて吐き出す


「イザベラ、これはどういう」


詰め寄ろうとするアッシュをメイドの声が遮る


「お食事をお持ちしました」


その言葉にさらにイザベラは顔を青くする


確か、今日はサンドイッチだが

チキンではなくカエルが挟まっているはず

前にも一度カエルは出されたがさすがに食べれなかった


机に並べられたそれに私は盛大にため息をついた


「イザベラ様、郷土料理なのは存じ上げておりますが

わたくし、どうしてもカエルは食べれなくて」


そのつぶやきにアッシュが慌ててサンドイッチのパンをつまみ具を確認する

レタスの上に置かれたカエルがぴょんとはね出ていく


「イザベラ」


冷たい兄の言葉にイザベラは肩を揺らすと私をキッと睨みつける


「私、何にもしていません

その女・・・クリスティーナの罠よ!私を陥れようとしているんだわ!!」


叫びにも似た声にレオがトンっとイザベラの肩をたたく


「こちら、貴方様からお渡しいただきました指示書です」


小さな紙きれを何枚も机上に置かれる

どれも細かい嫌がらせの指示が書いてあるものだ


「おもてなしなんですよね?」


レオの言葉にイザベラは居ても立っても居られなかったのか逃げだすようにその場を後にしようとしたが

ドンっとたまたま顔を見せに来た自身のご両親とぶつかった


「おとうさま・・・おかぁさま・・」


消え入りそうな声で二人の名前を呟き

イザベラはその場でペタンと座り込んだ


お二人がくることは予想外だったが

良い鉄槌にはなっただろう



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ