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「あー、アレン兄ちゃんだー」
子供の声に後ろを振り向くと街の子供たちだろう
たくさんの子供たちに隣の彼が囲まれる
「なんだお前ら、ちゃんといい子にしてんのかー?また悪さしてねぇだろうな」
しゃがんで砕けた言葉で子供たちとじゃれあう
相当慕われているのだろう、子供たちもしてねーよーと楽しそうに笑う
てっきり、隣国のアシュレイン王子かと思った思ったが
違ったのだろうか
境に位置するといっても、こんな町で慕われるほどに子供たちと密接にかかわっている人が隣国の王子な訳がない
攻略したわけではないので性格も普段の生活ぶりも知らない為、そんな設定がある場合もあるが
確率は低いだろう
「このねーちゃんだれー?」
「兄ちゃんの女かー?」
いつの間にこんなに近くに子供たちが寄ってきたのだろうか
気が付けば子供に囲まれていた
「こーら、困ってるだろ?レディを困らせるな」
子供たちを散らせると
ごめんな?と私をのぞき込んでくる
「いいえ、とっても慕われていますのね」
そういって微笑むとアレンは照れたように笑う
「慕われてるっていうかいい遊び相手とでも思ってるんだろ」
そんな会話をしているとツンっとローブが引かれる
振り返ると女の子が私のローブからさっと手を放す
「どうしましたの?」
中腰になって目線を合わせると少女は後ろから突き出すようにして少年を私の前に出させた
「これ・・・ごめん」
そう渡されたのは青い指輪とロドワール家の家紋の入った小銭入りの袋だ
つまり、この少年が犯人ということだろう
「アレンにいちゃんの彼女だって知らなかったんだよ」
唇を尖らせ拗ねたように言う
彼女じゃなかったら盗っていいって訳じゃないのに
ただ、そう言いつけるには決して裕福じゃなさそうな身なりが私の口をふさぐ
「じゃあ」
アレンに見つかる前にと少年は走り出す
それを見てか周りにいた子たちもあっという間に走り去っていく
「あいつら急にどうしたんだ?」
きょとんとした声を上げるアレンに私は取り戻した指輪と小銭入れを見せる
「あいつら・・・後で説教だな」
そうつぶやいた彼に私は指輪の代金を払おうと小銭入れを開く
「先ほど、お支払いしていただいたのお返ししますわ」
「いや、いい
謝罪として受け取ってほしい」
先程までとは打って変わった表情にきょとんとする
「そんな、アレン様は助けてくださっただけですわ、お金はお渡しします」
「頼む、ロドワール嬢」
唐突に出た名前と真剣な声色にはたと顔を上げた
家紋を見て私が貴族と知った彼は焦っているのだ
子供たちに処罰を与えないかと
そっと小銭入れを下す私に彼は少し安堵すると改まって一礼した
「寛大なお心に感謝いたしますロドワール嬢、
申し遅れました、私はアシュレイン・トリヴァス・シュタインと申します」
やっぱりシュタイン王国のアシュレイン様だった
そう思うと同時に先程のきらきらした瞳も、人懐っこい笑みも消え
王子様然とした笑顔や紳士な振る舞いに強い違和感を覚えてなんだかおかしくなってしまった
この人の本当の性格を知ってしまうと頑張て気を張り詰めているのだろうと思うとそれだけで
「フフッ」
つい笑いを零す私にアレン様はきょとんとした顔をした
「ごめんなさい、なんだかおかしくなっちゃって
無理に取り繕わないでくださいませ、先程のお姿をわたくし、拝見してますのよ?」
クスクスと肩を震わせて彼をみる
「アレン兄ちゃんの時のあなたのほうがよっぽど魅力的で素敵だわ」
そういうと彼の手を握り小銭入れごと渡す
「こんなもので処罰を与えるほど、わたくし落ちぶれてなくってよ」
フンッと威張ってみせるとアレンの気の抜けたような笑い声が聞こえた
「噂以上に気が強いな」
ロドワール嬢と続きそうな声を遮るように口を開いた
「クリスティーナよ」
私の言葉に笑うとよろしくクリスティーナと先程少年たちに見せていたような人懐っこい笑みを私に向けた




