19
※2019/07/12 21:11に18を改編致しました。
今後のストーリーに影響がある変更がございます
私は気まずそうに前に座るエリックを見つめていた
はぁっとため息をつく
「どうして王様はエリック様がわたくしを好きだなんて勘違いをしてしまったのかしら」
わたしの言葉にエリックは気まずそうに眼を泳がせる
「んもぅ、確かに仲はいいかもしれませんがそういうのではないのに
それで婚約まで一気に進めるなんて、なんだか張り切ってますわね」
文句をいくら言ったところでこうなってしまったものは仕方がない
私からは破棄することの出来ない婚約だ
「一つ、初めに言わせてくださいませ」
気まずそうに眼を伏せていたエリックが少しだけ視線を上げる
「わたくし、もしエリック様に好きな人ができましても邪魔や犯罪まがいな嫌がらせなどは致しませんわ
ですからどうぞ、そうなったときは婚約を破棄してくださいませ」
その言葉に明確に室温が一度下がった
「お嬢、さすがにかわいそうです」
レオの言葉に首をかしげる
彼なら知っているはずなのに
この後の婚約破棄イベントも、その先に待つ破滅も
「別に勘違いじゃないのに」
ぼそりとエリックが何かつぶやいたが聞こえなかった
ぽんっとレオがエリックの肩に手をのせる
エリックは疲れたようにうなだれた
◆
「いやぁ、まさかクリスティーナが王子の婚約者になるとはな」
「からかわないでくださいませ、レイクスお兄様」
家に戻ると書斎に従兄弟のレイクスの姿があった
「お前性格きついからなー、愛想つかされないようにな」
豪快に笑うレイクスの言葉に顔が引きつる
どうせ愛想つかされますよ
16歳で婚約破棄されますもの
大体、あなただって
彼は、婚約破棄の時も何のフォローもしない
さらに彼のルートの際にはヒロインに散々な嫌がらせを行うクリスティーナに激高し
父に勘当を進めたり
わざとクリスティーナにいじめてくださいという場面を作り陥れたりするのだ
まぁ、きつく当たっていただけで嫌がらせではないが
マナーのなっていない彼女にどこかれ構わず注意する姿は悪役にでも見えるのだろう
まぁ、私も彼もまだそういったことをしていない為
責めることはできないわけだが
「婚約祝いに何か買ってやるよ、街に出ようか」
パッと私の手から本を取り上げるとスッと本棚に戻す
「お手をどうぞ」
優雅に腕を差し出される
ずるい、私の憧れを彼はきっと理解してやっているのだ
「大事にしないとな、未来の后妃様?」
にやりと笑われ顔が熱くなる
◆
「素敵、とっても活気があるわね」
少し離れた隣町まで馬車を走らせる
王国から適度に離れたここは納税額も王都に比べれば安く
多くの商人で賑わい活気に満ちている
「あんまり離れるなよ」
後ろの声にはーいと返事をする
何が欲しいかは決まっていないが
私は迷わずに足を進める
自分のお金で買いたいなと思っているものがある
私の瞳のような
青いサファイアの指輪だ
私ばかりがこの赤い指輪を持っていることをなんだか少しムズムズとした気持ちでいた
彼の心臓
と、そう言っていた
私は手袋の上から指輪に触れる
ガラスのように砕けるもの
それが誰かの手に常にある恐怖は計り知れない
誰よりも強いのに
誰よりも弱い
ほんの少し握られただけで潰れてしまうかもしれないのだ
そこでふと、気になった
何人もの所持者と言っていたけれども
いつから呪いを受けて、彼は何年生きているのだろう
聞いてもはぐらかされる気がしたが悠久の時とか言っていた
もしかしてもう何十何百と生きているのかもしれない
「13歳相手に色気を振りまくおじいちゃん・・・なかなかシュールですわね」
その時、キラリと光る青を見つけた
「あら、これ」
澄んだ青がとても美しい指輪
華奢過ぎず男性がつけても変じゃないだろう
「お嬢ちゃん、目の付け所がいいね!」
店主が嬉しそうに笑う
「おいくらですの?」
そう尋ねようとした時だ
「おっとごめん」
横からの衝撃に足がふらつく
つまんでいた指輪は落としてしまったのか手元にない
「あら?」
しゃがんで指輪を探すがなかなか見つからない
「そんな、どうしましょう」
先程まで朗らかに笑っていた店主は眉根を寄せる
「おいおい・・・お嬢ちゃん指輪は・・・」
「ごめんなさい、落としてしまったみたいで
お金はちゃんと払いますわ!」
そう言ってローブのポケットに手を入れるが
ない
間違いなくいれてきたはずなのに小銭袋が無くなっている
「そんなっ」
慌てる私に店主はみるみる不機嫌になる
「困るよお嬢ちゃん、指輪の金払ってくれねぇと」
「えぇ、ただその私に手持ちがなくて・・・連れがいますわ」
焦りながら答え後ろを振り向こうとすると手を強く握られる
「逃げようってのか?
多方、さっきぶつかった少年とグルなんだろ」
そこで初めて気づいた
そうか、私はスリにあったのか
「おい!どうしてくれんだ!」
怒気を孕んだ声色にビクリと肩が揺れる
「店主、その指輪いくらだ?」
横から風の吹くような清々しい青年の声がした
「なんだ、嬢ちゃんの連れか?」
サバサバとした快活な青年がニコッと笑う
首をふろうとしたが目で合図されぎこちなく
「え・・・えぇ」
と返事をする
「これで丁度だろう」
そう言ってお金を出すとこちらに向き直り優しく目を細める
私が固まったのは決して顔が整いキラキラとした爽やかさを感じさせる青年と対面したからではない
攻略対象の1人
隣国の王子その人だったからだ
ぼんやりとする私に心配そうに彼は顔を覗き込む
「大丈夫か?
この辺は活気があって楽しいがすりも多いんだよなー」
人懐っこい笑顔で笑う彼に私はハッとして頭を下げる
「あの、ありがとうございます
お金・・・!」
「あぁ、いいよいいよ
俺も初めてこの街に来た時にすりにあってさ」
今度俺が困ってるのを見つけたら君が助けてよ
そう続ける彼に私はクスリと微笑む
「えぇ、絶対に助けますわ
連れがいるのは本当なの、どうかお礼をさせて?」
伺うように覗き込む私に彼はいいよと遠慮したが
私の気が済みませんの!
と強く言うとそれならと首を縦に振ってくれた




