表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/58

17

「あぁ、我が王・・・・麗しのレヴィリア様」


恍惚とした顔で天を仰ぐ

地面に書かれた魔法陣が赤く光る


全身がびりびりと痛い


「ちょっと、こんなことしなくてもレヴィリア様でしたらわたくし、存じ上げておりますわ!!」


うなる地面の音にかき消されないようにと声を張り上げる


「こんなことおやめなさい!!」


叫べど目の前の男は頬を紅潮させうっとりと月を見上げる

こちらの声など、陶酔し切った彼には届かない


月の光が魔法陣を照らす

地響きがどんどんと強くなる

四肢が引き裂かれるように熱く、痛い


見れば周囲の女性たちもうめき声をあげている

足や手から血が滲み始めている子までいる


「あぁ、もう!!

レヴィリア様、妻が死に絶えそうだというのに何をなさってますの!!」


力の限り叫ぶと体が金縛りのような拘束から外れた

ピタリと地響きが収まり

月の光を大きな影が隠す


漆黒の長い髪と深い赤が私を見つめる

あまりに近い端正な顔立ちに一気に顔に熱が集まるのが分かった


妖艶に笑うと彼は私をお姫様のように抱き上げる


パジャマでさえなければもっと素敵だっただろう

うっとりするほど甘い瞳で私を見つめる


「しかと聞いたぞ、クリスティーナ・・・余の妻だと認めたな」


甘く囁くように言われ頭がのぼせたように沸騰する


「い・・・言っておりませんわ!!」


「いいや、だから呼びかけに答えたのだ、言い逃れは出来ん」


頬に摺り寄せるように顔を近づけられる


「二言はないぞ」


心まで射貫くような赤い瞳


「男性にはないかもしれませんが、女性に二言はありましてよ」


必死に目をそらしてそういう


「やった、やったぞ!!成功だ!!!」


後ろから発せられた雄たけびにハッとする

そういえば、問題が残っていた


高笑いをした後覚束ない足取りでレヴィリアに近づく


「こやつは誰だ?」


ズバッといわれたリビアはスッと片膝をつく


「申し遅れました、私エルミタージュ家長男のリビアと申します

突然あなた様をお呼び立てしてしまい申し訳ございません」


跪く彼にレヴィリアは訳が分からないという顔をする


「貴様は何を申しているのだ・・・?

余はクリスティーナが会いたいと願うから来たにすぎぬぞ?」


「えぇ、そちらの女がつけている指輪にレヴィリア様の力を感じ誘拐は致しましたが

貴方様をお呼びしたのはわたくしです」


一瞬無機質にこちらを見たがすぐに陶酔した視線をレヴィリアに向ける

レヴィリアはギロリとリビアをにらみつける


「クリスティーナを誘拐だと

誰に断りを入れて我が妃にその手を近づけたのだ

第一、余は自分の意志でしか赴かぬ

こんなこと・・・これで余が来たと勘違いするとは、片腹痛い」


レヴィリアが指をついっと横に動かしただけで悪趣味な床の魔法陣は消え

女性たちも一人、また一人と消えていく


「なぜ貴様、余を知っておる」


跪いたままの彼を見下ろしレヴィリアは続ける


「余を模ったその名も不快だ、貴様の名はリビアではなかろう」


完全に否定されたリビアは肩を震わせる

少し哀れにさえ思えてきた


「ではこの瞳は!!

貴方様が下さったのでしょう!!地の果てまでもを見通せるこの力を!!」


悲鳴にも似た叫び声にレヴィリアはあっけらかんと答える


「あぁ、ここに飛んでいたのか

爪を切ったとき、ずいぶん遠くに飛んだことがあったな」


そういってリビアの左目に片手をかざす


「ぐぅぅぅぅあぁぁっ」


唸り声をあげる彼の目から赤黒い小さな円錐状の爪が出てきた


「これでいい、まったくいつの世も力を手に入れた人間は厄介だ」


取り出した爪がゴゥッと音を立てて燃え、灰になる


「改心するのだな、人の世で余を信仰するとろくなことが無いぞ」


そうつぶやいた彼は、少し寂しそうに見えた


「送ろう」


そう私に呟き


窓にそっと足をかける


「少し、散歩をしよう」


ふわっと空に歩を進める

満点の星空が驚くほど近い


あまりの高さに怖いはずなのに

抱きかかえられているからか怖くなかった


後にした窓からがやがやと人の声がした


「ヨシュア・・・どうして・・!」


后妃に泣き縋られる彼の名は神の御使いのものだった




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ