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「あら、お兄様が?」


ストーリーにないエリックの話に私は目を見開く

なぜか長男が回復したとかで病室から出たのだという

おめでたい話なのだろうが、王位継承権を脅かす存在でもある

少し複雑そうにエリックは口を開く


「・・・ただ、義母上がとても怯えていて

理由は分からないのですが、後宮の者全てに出歩かないよう指示したみたいで」


私はレオとちらりと目線を絡ませるがレオは知らない、といったように首をすくめた


「きっと何かおありなのでしょうね

お兄様はずっとお部屋にいらっしゃったのですよね?」


「病に倒れてとしか聞き及んでおらず・・・ただ・・・」


少し言い淀んだのち、エリックはいやっと首を振る


「杞憂かもしれません」


「お話になって?」


私の言葉にエリックは少し青い顔のまま頭ににそっと手を添えた


「病に伏せていたとは思えないほどに今の政情に詳しく、私やジルにもとても優しくしてくださるのです

が」


使用人の若い女性を見る目に違和感を覚えたとつづけた

色目でもなければ決して性的ではない

ただただ見つめる眼光が鋭く、何か獲物でも見るような目だったという


「考えすぎでしょうか、柔和で優しい兄なのですが、あまりに義母上が怯えているので・・・」


激化が予想される継承権争いに彼もいろいろと忙しいのだろう

疲れた顔をしていた


「念のためですが、当分はジルにも会いに来ない方がいいかもしれません

定期的にこちらから伺います」


「えぇ・・・」


ふわりとした微笑みを残しエリックは手短に帰っていった


「心配ですね」



見送りながらそうレオがつぶやく


「そうね」



「エリック様たちのお兄様の設定を教えてほしいわ」


恒例になった夜の会議で私はレオと向かい合っていた


「設定も何も・・・なぁ」


聞けばエリックとジルの設定を作るにあたって、いきなり側室の子供だけっていうのも違和感があるだろう

的なノリで病弱な兄がいる

という設定にしたそうだ

つまり、分かっているのはエリックの五つ年上ということと病弱ということ


「名前すらわかりませんの!?」


「魔王を出す出さないで揉めたりしてて時間なかったんだよ」


なんということなの

これしか知らないなんて

いっそ製作者の一人だということを疑いたくなる


「エリック王子の話だと病弱な兄が完治して完璧王子として自分の前に立ちふさがってんだろ?」


「えぇ、それだけなら気になりませんが

后妃様が怯えてらっしゃるというのが気がかりですわね」


私の言葉に同調するとレオは頷く


「病というのも本当かどうか・・・とにかくストーリーにない展開はお嬢にとっては転機だ

新たな破滅ルートを作らないように頑張れよ」


憎まれ口を最後に今夜の会議は終了となった



「それでね、えっとね」


「はいはい、落ち着いて

食べてるときはしゃべるのをおやめなさい」


嬉しそうに話すジルの口元をふきながら話を聞く

今日はお昼にジルが遊びに来た

数人のメイドに連れられて来ると

庭で剣の腕を見せ、すごいとほめると上機嫌にこちらを見上げる


「うん、リビアおにいちゃんが教えてくれたの」


どうやらすっかりジルを手懐けたようだ


「どうしてお城に来てくれなくなったの?

リビアおにいちゃん、クリスティーナにも会わせたいのに」


拗ねたように口をとがらせる

あぁ可愛い


「その・・・社交界が忙しくて

婚約者の一人もいないと年齢も年齢ですし」


エリックに止められたのもあるがこれも本当だ

15歳で成人とみなされるのだが、ここまでに婚約者の一人もいないと陰でこそこそ言われるのがこの世界だ

まだ二年あるがもう二年しかないのだ


これから長い時を一緒にするのだ

政略結婚も少なくないが少しでも気の合う人と婚約したいと思うのは当然のことだ

私の言葉に目をぱちぱちとさせるとジルはぱぁぁと満面の笑みを見せる


「僕がいるじゃん!!」


10歳の男の子からの求婚

勢いよく言われて苦笑いをする


「うれしいわ、私が成人してもどなたにも相手にされず、壁の花になってしまっていたらよろしく頼むわね」


「うーん」


少し悲しそうな顔をしていた気がするが

私は知っているのだ

彼もいずれ、ヒロインの彼女に恋をするのだと


ジルも、エリックも、レオも

みんな彼女と恋に落ちる

私のような性格の女性が彼らの求めるそれと違うことは百も承知だ

そこを頼りになんてしない


そういった意味では、第一王子は少し魅力的な存在だ

気になることもあるがレヴィリアと違い原案すらしっかりと出ていない

多分少数派だが勝ち気で高飛車な女性がタイプかもしれない


そんなことを考えた夜に、なぜか窓に挟まった手紙を見つけた

妖艶な香りに誘われるように手紙を開く


リビアという差出人を目にした時点でクリスティーナはふわりと体が浮くような感覚とともに意識が甘く深く沈んでいった


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