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13

門をくぐると同時に飛び込んできた小さな体を受け止める

目にいっぱいの涙をためてジルはクリスティーナを見上げた


「大丈夫、何ともありませんわ」


柔らかい銀髪に指を絡めるとぎゅっとジルの腕にも力がこもる


「次は、僕が絶対に守るから」


ぽろぽろと涙をこぼしながらそう言われキュンッと胸がときめいた


「本当に何もないですか?」


きっとジルは先走ってかけてきたのだろう

後ろからエリックが歩いてきた


「えぇ、一時はどうなるかと思いましたけれどこうしてピンピンしておりますわ」


寝込んでいたのも誘拐騒動というより魔力に充てられただけだ


「ジル、そろそろ・・・

クリスティーナ、庭にお茶を用意させたから」


朗らかに笑うエリックの言葉でようやく離れたジルに、あの日以来初めて彼をちゃんと確認した

よかった、守りきれたんだわ

ほっと安心すると同時にはたと目を奪われる

ジルの両手はぐるぐると包帯で覆われジワリと血が滲んでいた


「怪我してるじゃない!!」


前を歩き出したジルの腕につかみかかると驚いたように振り返る


「一体いつ・・・あぁもうどうしましょう」


頭を抱える私にエリックはクスクスと笑う


「クリスティーナ、それはジルが剣の鍛錬でできた傷だから」




「そう・・・毎日なさってるの」


「ジルなりに思うところもあったんじゃないかな

すっかり見違えて、座学もまじめに受けてるし教育係も驚いていたよ」


「あまり無理をなさらないといいけれど」


挨拶だけ済ませてすぐにまた剣の練習に行ってしまったジルを思う

もう少し私がうまく立ち回れたら、彼が責任を感じて根詰めることもなかったのかもしれないと少し思った


「そういえば」


声色が変わりティーカップに落としていた視線をエリックに向けた


「ジルが、悪魔が助けに来たって騒いでいたけれど・・・」


そういいながら視線が向いたのは真っ赤に輝く妖艶な指輪

きらきらと輝く宝石自身がかたどるリングは世にも珍しく怪しい魅力が漂う


「綺麗ですけれど外れないんですの、少し困りますわよね」


そう一言添えて手を机の下のしまう


「わたくしも気絶してしまいましたし、状況が状況だもの」


普通に助けに来た男の人がそう見えてもおかしくない状況だったと含ませて話を終える

別に隠す必要はないのかもしれないが

レヴィリアのような存在はあまり公にしな方がいい

王国にとって不利益だの

始末したほうがいいなどの話が出たら大変だ

王国が滅びかねない


これ以上話すことはないと茶菓子に手を伸ばすとエリックも察して話をやめる



薄暗い部屋


この屋敷で一番高くに位置するそこは限られた訪問者を除いてほとんど人が寄り付くことはない

固く閉ざされた扉は、まるで中のものを決して外に出さないとでもいうように何重にもカギがかけられている


扉の下が10センチにも満たないほど空いており

まるで囚人のようにその隙間から食事が差し出される

境遇にしては似つかわしくなく豪華な食事だ


長く伸びた髪で表情こそ読めないが細身のその男は食事に一切目もくれず窓の外をぼんやりと眺める


そしてにやりといびつに口元をゆがめた


「あぁ・・・感じる

レヴィリア様がお近くにおられる・・・」


呟きにこたえるのは静寂のみ

動物のように這い窓に近づく

見えるはずもないほど遠い庭に弟たちと一緒に歩く金髪の少女が見えた


手元にはきらりと赤い宝石が輝く


「あぁあぁぁあぁ」


漏れ出る声は歓喜と狂気が入り混じっていた


「エリック・・・使用人の子が国を得る・・」


クックックと喉の奥で笑う


「正当な後継者がだれか知らずに」


長く伸びた銀髪を掻き上げ塔の上で怪しくその男は笑う

狂気に満ちたその姿を暗示するかのように空は曇り

強い風が嵐の前触れを知らせていた



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