未来が分かればこっちのものなはず
コツン
つま先に当たったものをしゃがんで拾い上げる
「なにかしら、これ」
ベッドの横に落ちていた見慣れないそれに首をかしげる
コンコン
叩かれた扉に目を向ける
「お嬢様、お目覚めでしょうか」
メイドの声に思わず拾い上げたものを隠し返事をする
「えぇ、起きているわ。着替えを手伝ってちょうだい」
この摩訶不思議な箱を拾ったのは今から一週間前のことだった
◆
「あぁ!やっと終わったわ!!」
そう声を上げてベットの上でバタバタと足をばたつかせる
この箱をだれにも伝えずにいじくりまわしたのは正解だったのかもしれない
私はまだ抜けない余韻の中うっとりと目を細める
ある日突然私の寝室に落ちていたこれはとても不思議なもの
簡単に言えば恋愛ものの絵本
ただ、ヒロインになって選択を選び色々な男性と恋愛ができるのだ
はじめは何かと怪しんでいたが素敵な殿方たちとともに現れた
≪7大国と秘密のプリンス≫
このタイトルに少し興味を惹かれカチャカチャといじりだしたのが運の尽き
すっかり一日の終わりにこれをするのが楽しみになってしまった
「それにしても、今回もこの女が手ごわかったわね」
主人公の恋敵やライバルとして現れる悪役令嬢が今回もひどく煩わしかった
様々な嫌がらせにイライラとしたが最後の展開には同情する
「従者からの裏切りで民衆による虐殺・・・」
スカッとする展開なのだろうが少し身震いをした
「私と同じ名前だからかしら、妙に同情心が強く出てしまうじゃない」
ふっと息を吐き箱を横に置く
わたくしはどちらかというとあの悪役令嬢側かしら
ヒロインの彼女とってもいい子だけれどもドジだし
かわいいけれども身分や礼儀はいまいちだわ
クリスティーナ
悪役な彼女は身分も高く完ぺき主義
礼儀やしきたりに厳しく、ヒロインにきつく当たる
私に少し性格は似ていますが・・・わたくしはあんなドジ踏みませんわ
断罪イベントではことごとく悪事が見破られるのだ
わたくしだったらもっと完璧に・・・
っていやだわ!これじゃあ完全に悪役じゃない
少し巡らせた思考を振り払い枕もとの灯りを消す
明日はわたくしの初めての社交界だ
厳しく自分を律し、完璧な教育の元育てられた自分に万が一の不安はないが早めに寝るに越したことはない
目をつぶると心地いい眠気がクリスティーナを包んだ