状況説明-4
「ん?これのことか?」
「あぁ...そのような武器は見たことがない。」
そういえばこの世界はだいたい中世位の時代だったな。話を聞く限りマスケット銃ですら開発されていない様だ。
「...すまないが詳しくは言えない。」
「何故だ?」
「まず一つ目は、この武器は簡単に生き物を殺せる。例え、非力な子供でもだ。こんなものが世界に渡れば恐ろしいことが起きる。次に二つ目だが...」
その時俺の腹が『ぐぅ~』という音を出しながら鳴った。この体でも食事はとらないといけないのね。
「腹が減った。」
目の前の女騎士は軽くずっこけるようなしぐさをする。ほかの騎士も見てみると呆れている者や女騎士と同じようにずっこける者など、様々なリアクションをしていた。
「...分かった。取り敢えず貴様のことは我が騎士団で監視しよう。先ずは街に戻るぞ。」
取り敢えず俺は騎士団という組織に監視されることになった。何故解放されないのだ。
「ほら、食事だ。」
騎士団の建物の客室で先程の女騎士と筋肉ムキムキで顔に傷跡が見える騎士が接待してくれている。
そして、女騎士が持ってきた食事を俺の目の前の机に置き、二人で俺の向かい側に座る。そして、女騎士の方が俺に問いかけてきた。
「しかし、君に会った時から気になっていたが...その仮面はなんだ?」
「ん?この仮面か?この仮面はだな、敵に素顔が知られないようにするためのものだ。軍が俺に支給した装備品の一つだ。」
実際は俺のアバターの顔に原因があるのだがな。ついでにアバターの声も原因の一つである。これが原因でどれだけ分隊仲間にいじられたことか...。
「そうか...で、どうやって食べるんだ?」
それが問題なのだ。顔はできるだけ見せたくないのだが...どうするかな...。
「すまないが、仮面を外したいので外に出てもらえないか?」
「それはできない。一応監視という名目のもと保護しているんだからな。」
無理か...しょうがない、俺も腹をくくるしかないか。
「分かった。ただ出来れば笑わないでほしい。」
「あぁ、出来るだけ笑わないように努めよう。」
俺はおもむろに仮面を外し始めた。
「「!?」」
俺の仮面の下の顔には左目の辺りに縦に大きな傷跡があり右目は明らかに人工物、つまり電子義眼になっている『女顔』だ。俺は『女形アバター』でプレイしている。いわゆるネカマの一人だ。実は幼○戦○というアニメに影響され女性のアバターで作ってしまったのだ。因みに背丈まで影響でちっさい。
さらにアバターを作った時の俺は中二病という病気を患っていたため右目が義眼で軍服と言うローラーアバターになってしまった。今は物凄く後悔している。俺のフレンドにはかなり馬鹿にされた覚えがある。
その時、女騎士が不意に謝ってきた。
「すまない...その...まさか顔にこんな酷い傷を持っていたとは思わなくてな...」
その後ずっと黙っていた騎士も謝ってきた。
「すまない、その...貴殿のような美しい女性にこのような思いをさせてしまい...」
「あーその俺は...いや、女性で合ってるのか...あ~クソォ...」
「? どうしたのだ?」
「いや、気にしないでくれ。」
男だと否定したいが、アバターが女性だから否定できない...。物凄く否定したい。何か話題をそらせられるものは...。
「あ、あとついでに左腕は義手だから。」
「ぎしゅ?」
そうか...この世界には機械は存在しなかったんだな。俺は義手を見せるために左腕の袖をまくる。
「あぁ...えぇと...これだよ。」
「これは...」
「なんて酷い...」
二人とも俺の傷や腕を見て同情してくれているようだ。全てキャラメイキングで俺が設定したことだけどな。
「これらはへレーナに言ってあるが、この傷などはすべて我が国の作戦の時に出来たものだ。」
「こんな傷ができるほどの戦いなんて...一体どんな戦いだったの?」
うぅ...ありもしない戦いの説明をするの難しそうだな...。何かの戦いを元にするにも、俺は銃にしか興味なかったからなぁ...。
「先ずはこの武器について簡単に説明しようか。」
「え?さっきは教えれないって。」
「さっきは念の為だ。それにこれを再現することは難しいだろうしな。」
ついでに言うと目の前の騎士は恐らくこの施設内のお偉いさんだろうな。でへレーナは副団長とかそこらへんじゃないか?
「話を続けるが、この武器は簡単に言うと弓よりも小型の矢で速くそして遠くに飛ばすことが出来る武器だ。」
「そんな武器があるのか...初めて知ったな。」
やはりこの世界にはマスケット銃すら無い様だ。最悪の場合、大砲すらないんじゃないか?
「その武器をもって敵地に行くんだ。...敵も同じ武器をもっている中に。」
「それはかなり危険じゃないのか?四方八方から矢が飛んでくるのと同じだろう?」
「あぁ、その通りさ。その中を走っていくんだ。腕や目が持っていかれてもおかしくないさ。」
実際にプレイ中にアンチマテリアルライフルに腕を撃ち抜かれたことがある。その時は持っていたAK-47を撃つたびに照準がぶれまくっていたのを覚えている。しかし...
「すまない。監視というのはいつ終わるんだ?私もそろそろこの部屋から出たいのだが。」
そう言うと目の前の騎士が『あっそういえば。』のような表情をした後に真剣な表情に変わる。忘れるなよ。
「あぁそうだな...分かった。へレーナ、『デレスト王国国王権限』を以って監視の任を解く。」
「...まて、今『国王』と言わなかったか?」
目の前の騎士は頷くと、
「いかにも、私はデレスト王国国王 スウィル=ハッテムだ。」
と自己紹介した。
いや、国王さん...ふつうこういう怪しい人の前にのこのこと出てきちゃだめだよ...