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#87
「オイラたちって、どゆことッスか?」
テツヤの問いに、ハギは薄い胸をずずいと張って答える。
「そんなの決まっていますわ。この宿がペリン商会なんかにみかじめ料を払っているのは、連中がこの町で一番強い組織だからです。でしたら、もっと強い組織を作ってしまえばいいんです」
「作るって」
目玉焼きか何かみたいに言われたって、テツヤも困る。
「そりゃオイラは、何したってこの世界で食っていかなきゃいけないから構わないッス。けど、ハギさんはいいんスか? 実家に帰ったりしなくって」
『実家』のフレーズが出た途端、ハギの額から汗がタッラー。露骨に怪しい。
「えーと、ワタクシはエルフの郷を出る時に『ヒャッハー、ワタクシのように優秀なエルフは、王都で宮廷魔導師として君臨しながら、人間どもを手駒にして栄華を極めるのです! 貴方たち雑魚エルフは、森で葉っぱでもかじって暮らしてりゃいいのですわ!』なんて言った手前、今さら郷には帰れませんから……」
「ありとあらゆる意味で最悪ッスね」




