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「何だ、テメー関係ねえだろ」
いきなりクソデブ呼ばわりされた中年男は老人に背を向けて、テツヤに視線をロックオン。
「関係はねえけど、賭場でジタバタするのは見苦しいッスよ」
「ンだとコラァ!?」
賭場でのマナーについてはアニキにかなりしつけられたせいで、できてない客にはつい厳しくなっちゃう。
「このジジイがイカサマしやがったんだよ」
「証拠はあるんスか?」
テツヤの問いに、中年は「ぐ」って黙る。勢いだけで言ったのは明らか。
「別にジジイの味方するつもりはねえけど、イカサマを見抜くのも技量のうちッス。見抜けねえヤツにゴチャゴチャ文句言う資格はねえッス」
テツヤの言葉に、中年は「ぐぬぬ」ってうなりながら殺気にまみれた視線を向ける。
「そこまで言うんだったら、テメーが勝負しろよ」
「いや、オイラ金持ってないッスから」
「だったらテメーの目玉賭けろや」
そう言って、中年はアイスピックを取り出す。こいつやべーヤツだ。




