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#6
幸いなことに誰にも通報されないで興奮すること5分ほど。
ようやく我に返ったテツヤは携帯を懐に戻して、代わりにドスを取り出す。
柄も含めて20センチ近く、サバイバルナイフなんかと較べたらやや細身だけど、銃刀法にも引っかかるれっきとした短刀。
鞘から抜けばネオンの光を受けて、刃がビカビカ光る。そのビカビカを見て、テツヤのテンションは再び赤マル急上昇。
「干柿、見とけよオラー……」
店の内部は、事前に何度か客として入って確認済み。
干柿がいつもどのテーブルで、どこの席に座るかもちゃんと調べはつけてある。
後はテツヤが店へカチコんで、座ってる干柿を刺すだけっていう簡単なお仕事。
「アニキ、見ててください。オイラやってやるッス」
ドスに向かって話しかけるテツヤ。さっきの直立不動よりもさらに不審者ぶりがグレードアップしてる。