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#5
『いいかテツ』
「テ……へい」
ギリギリでこらえた。
『今のおまえは頭の悪い、中卒のチンピラだ。けど刑務所帰りってなりゃあハクが付くし、何より月餅会幹部の干柿を殺ったヤツとなりゃあ、組が放っとくワケがねえ』
「へいっ!」
元気よく答えるテツヤ。さっきまであんだけ物音立てないように注意してたのは、もはや脳から完全にロスト。
『だから安心して行ってこい。おまえの居場所は、俺がちゃんと空けといてやる』
「へい、オイラ殺ってくるッス! 絶対に干柿の命、獲ってやるッス!」
通話が終わってもテツヤの興奮は冷めないまま、直立不動のまま鼻息も荒く「ウーッウーッ」ってうなってる。傍から見たらもはや完全に不審者。