2/350
#2
その時、チンピラの懐からピロロ、ピロロって電子音。
慌てて取り出したのは、携帯ショップなんかで売ってるプリペイドの携帯電話。
ウナギでも掴んでるんじゃねえかってくらいオロオロした手つきで通話ボタンを押して、初期設定そのままの電子音を強制ストッピング。
音が鳴るのがイヤなら、最初からマナーモードにしときゃいいのに。
『おう、俺だ』
「あ、アニキ。お疲れ様ッス」
声だけで相手が誰だか識別したチンピラは、向こうには見えやしないのに携帯持ったまま背筋ピーンって直立不動。おまえはバッキンガム宮殿の兵隊か。
『そっちの様子はどうだ、テツ』
「アニキ、オイラテツじゃねえッス。テツヤッス」
直立不動のままで意見する自称テツヤ。けど通話の相手は聞く余地ナッシング。