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#10
「え、やっぱりって何スか? どゆことッスか?」
アニキが漏らしたつぶやきを、テツヤは聞き逃さない。
「だってアニキ、信頼できるスジからの情報だって言ってたッスよね?それじゃまるで、罠だってわかっててオイラを行かせたみたいじゃ――」
『おうテツ』
「テツヤッス」
『うるせえ。おまえは組員でもねえただのチンピラだ。だからおまえが何を白状しようと、何の証拠にもならねえ』
「え、どゆことッスかアニキ? だって干柿の命獲ったら、組員にしてくれるって――」
『ドブン、ゴボゴボ』
水音を最後に通話はエンド。どうやらアニキは川だか便所だか、とにかく水の中に携帯を投げ捨てた模様。
「アニキ? ねえアニキ、どゆことッスかアニキってばァァァ!」
「うっせえんだよ!」
元気よく蹴られるテツヤ。




