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夜の新宿。
建てたヤツの正気を疑う物量の高層ビルがドッカンドッカン立ち並んで、欲望とネオンがギンギラギンのビッカビカー。
そんなビルとビルの隙間、飲み残しのビールとかゲロとか精液とか、ありとあらゆるツイキーなオイニーが混ざり合ったデッドスペースでバカみたいに突っ立ってる男が1人。
年は20歳前後だろうか。脱色の途中で美容師がどっかエスケープしたみたいに雑な茶髪に、小さい文字で一面に「大腸」ってプリントされた、ハワイ感ゼロのアロハシャツ。
辞書で「チンピラ」って引いたら挿絵に出てきそうな、それはもう小物感に満ち溢れたどチンピラ。
そのどチンピラはデッドスペースに身を潜めて、すぐそばのビルにあるクラブらしき店の入口をガン見してる。
どうやら誰か店に入ってこないか、窺ってる模様。