第95部
案内された場所は、収集室として機能していた場所であった。今は、ほとんど何もはいっていなかった。その中で、箱にしまわれ大切に保存されていた宝があった。それこそが、神の宝であった。
「これが、余が持っている宝だ」
そこには、学達が持っているのとあわしても、7つしかなかった。
「あと、2つ」
学が言った。その時、神が実体化し始めた。
「あと、2人か。とにかく、ここいる者達全員実体化すべきだな」
カオス神の提案により、学達が持っていた、ガイエン神、アントイン神、サイン神、カオス神。ネロが持っていた、カオイン神、エクセウン神、イフニ神。全員が実体を持った。
「さてと、ネロよ。おぬしは長生きしすぎたな。だが、これからも、我々の手足となって働くのであれば、生きさせてやろう。それこそ、飽きるほどに」
「ありがたき幸せでございます」
右胸に左手の拳を押し当てて、お辞儀をした。そして、神同士はすさまじい早さで討論し、そして、ひとつの結論を得た。
「そうか、そうしか無いだろうな」
「どうしたんですか?」
神は、勇雄に向き直り、そして、言った。
「すまんが、君の使い魔を見せてくれ。おそらく、ほとんど使っておらんと思うがな」
「あ、はい」
ポンポンという軽い音で、ファインドとデフレクトが現れた。
「なんでしょうか」
ファインドが言った。
「こいつが、ファインドか、いや、ファインドという名前ではないな。さあ、元の姿になりたまえ、イフニ・スタディン。それに、イフニ・クシャトル」
ファインドとデフレクトは、突然まぶしい光を出し、二人の人間になった。
「ふう。ようやく戻れた」
「これも、お兄ちゃんのせいよ。だって、妖精みたいになったほうが、エネルギーを制御しやすいって言ったから…」
「こら!そんな言い方はないだろ?って、あれ?皆さんおそろいで…どうしたんですか?」
「単純な事だ。君達に、扉を開いてもらいたい」
「それは、難しいですね」
他の者達をほったらかしにして話が進んで言った。
「なにせ、鍵がありません。特殊な鍵で、向こう側とこちら側、一対ずつしかありません。その鍵は、誰かに渡しそのまま、歴史の奥深くへ消えて無くなりました」
「それはしてはいけない事だと思うがな。まあよい、では、その鍵の特徴は?」
「ええっと、金色で、長さは、5cmほどで、フラクスタル図形を描いています」
「ちょっと待って、フラクスタル図形の鍵?それって、エリスのお父さんが…」
「うん、私、その鍵持ってます」
「え?本当か?」
「はい、これでしょう?」
ポケットにしまっていた鍵をスタディン神に渡した。
「おお、これだ、これだ。よかったすぐに見つかって、あとは、扉の場所だな」
「そうじゃ、扉の場所じゃ」
いつの間にか入っていた、見覚えのある人が言った。
「あなたは?」
「儂か?もう忘れたのか。儂は、カース・フラットじゃ。いや、サイコ・サスターと言えば、この皇帝ネロにも理解できよう」
ネロは、血の気が無くなっていった。
「サイコ・サスターだと?ばかな、そいつは余が殺したはずだ。未だに生きているとは、本人なのか?」
「ああ、無論、お前に殺されかけた、サイコ・サスター、ご本人さまだ」
「ちょっと、待って。サイコ・サスターって、誰?」
エリスが話した。
「今から、300年前、扉が作られる直前まで、この世界を統治していた絶対的王、その人がサイコ・サスター。彼は、とてつもない財政難を引き起こし、反乱軍を指揮していたネロに殺されたの。そして、ネロがその座を引き継いだ。その時からのうわさがあったのよ。「サスターは死んでいない」、「サスターは、いずれよみがえる」って。そのうわさは本当だったのね…」
「君が殺したのは、おそらく儂の影武者だろう。儂は前々から革命の機運が高まっていた事を察知していてな。起こった数ヶ月前には既に脱出しておったんじゃ」
「で、話を急に戻したいんですが、扉はどこにあるんでしょうか?」
「忘れてたよ。ほら、この地形、それが答えであり、ヒントになる」
スタディンが言った。
「この大陸の、地形が?」
全員、下を見た。そして、この形に見覚えがある事に気づいた。
「そうか、この島が、扉だったんだ。ほら、俺達が降りてきたところ、あそこがかぎの差し込む場所にあたっているんだ。そして、大陸を割くように流れている川。それが、右と左の扉の境目だ」
学が言った。
「じゃあ、最初に戻ったらいいのね」
「ねえ、それよりも、後ろ側が危ないんだけど…」
佐古が言った。そして、みんながみていた後ろ側で、二人の皇帝が、激しい戦闘を繰り広げていた。
「すごいや、剣と剣が重なり合って、火花だしてる」
「そんな場合じゃなくて、止めないと」
その時、部屋の扉が開いた。
「皇帝陛下、お時間でございます」
「おお、待っていた。では、はじめなさい」
「承知仕りました」
そして、指を一回鳴らした。その時、船が急降下し始めた。
「おいおい!どうするつもりだ?」
「ここで、皆さんには、しばしの間、無重量体験をしてもらう。行き先は、砂漠の町デズンタだ。そして、扉を開ける事にする」
そして、一瞬か、それとも永遠か。全くわからないほどの時間が流れた。船は、デズンタの端に着陸した。
「帰ってきた…」
エリスが感慨深げに話した。みんな、受ける気持ちはさまざまだった。そして、森の方向に向かって歩き出した。
到着した時、3人が先に待っていた。
「君達は?」
「開放の民の、ファンガー・サンダース、ハイゲルン・フリッター、オラジオ・ケレンスルーです。ここに来たら、戻れるって言ううわさを聞いて、待っていたんですよ」
「さてさて、扉はどこだ?」
「扉なら、ここにあるわ」
エリスが言った。
「私は、あの町に300年間住み続けていた、扉守の一族の末裔、カンドール・エリス。この鍵を持っていたのも、それが理由。ただ、使わないと思って車の鍵にしていたけど」
「そうなのか?スタディン」
「そうだ。自分が頼んだ。彼女の先祖である、カンドール・フィラに」
スタディンが説明した。
「彼女に、重荷を背負わしてしまったのは申し訳ないが、当時、あの町には疫病がはやっていて、唯一生き残れそうなぐらい丈夫だったのが、フィラだったんだ」
「じゃあ、扉の位置も知っているんだね」
「ええ、でも、これで最後の扉になるだろうから、私の願いもかなえて欲しいの」
「さあ、言ってごらん。叶えれるようなものなら、そうしよう」
カオス神が言った。
「私、学達と一緒に、あっちの世界に行きたいの」
「向こう側に?しかし、受け入れる体が無いが…」
「自分の体でいいんなら、受け入れましょう」
「勇雄…本当にいいの?」
「ああ、大丈夫だとも。おそらく、二重人格って言われるだろうけどね」
そして、エリスは勇雄に抱き着いて、「ありがとう…」と言った。
「さあ、あの二人はほっといて、………あれ?皇帝達は?」
「そう言えば、さっきから姿が無いね」
周りを探したら、とてつもない衝撃波が一行を襲った。
「な、なんだなんだ?この衝撃波は」
「この感覚、魔法が使われているな」
「長い間、戦闘なんかしていなかったけどね」
衝撃波の元に行ってみると、二人の皇帝が倒れていた。
「おいおい、マジかよ。皇帝がいなくなったら、この大陸、どうなるんだ?」
「あ、一人起き上がったよ」
それは、ネロだった。
「ふう、ようやく倒した…これで、余が完全なる皇帝だ…」
ふらふらしながらも、こちらに来た。
「おめでとうございます。皇帝陛下」
「ありがとう。やつは倒れた。これで、余が正式な皇帝となる。余は、船に戻る。もう、おぬしらとも出会う事は無かろう。ただ、もし、この国にくるような事があれば、その時は、歓迎しよう。この空間、特製の古希といわれる酒で」
「彼はどうする?」
「こうする」
スタディンとクシャトルは、なにやら呪文を唱えだした。そして、彼の姿は徐々に消えて行った。完全に消えた時、一陣の風が、彼の存在を完全に消した。
「これで、処置終了っと」
「では、メインテーマに移ります。扉、開放!」
ある場所から、光が挿し始めた。
「あれは…?」
「君達が来たトンネルに通じている扉だ。最後に一言言っておく、君達には、特別な贈り物をしてあげよう。それと、こちらの神の宝物はここで全部外して置きなさい」
ガチャガチャと、外して行った。
「では、これで、行きなさい。あの光を通り抜ければ、君達の体にたどり着ける。ああ、勇雄とエリスは、こっちに来なさい」
そして、勇雄とエリスは、神々の前に立った。
「さて、君達は、魂レベルでの結合をする。但し、人格や自我と言うレベルでは、分離している。あくまで、体に入る事による不整合を防ぐための措置だ。いいね、もう、元には戻れないけど」
「はい、大丈夫です」
エリスはそういったが、勇雄はすこしどもりながら言った。
「すいません、最後にエリスと言う魂が、自分とはっきり別に存在している時に言っておきたい事があるんですが」
「どうぞ」
神は、それを促した。そして、エリスの手を握り、勇雄は言った。
「自分は、この短い旅の中で、ようやく、好きな人が出来たと思う。それが、君だ。ずっと、二人、一緒にいてくれるか?」
エリスは、ちょっと、下向きに目を逸らして言った。
「……うん。いいよ」
「もう、思い残す事は?」
「無いです」
「私も、ありません」
「では、魂の結合を始める」
そして、低い声で神々は同じ言葉をつぶやいた。
「いかなる時、いかなる場所に於いても、彼ら二人の魂は、離れる事はかなわず、近くに常におり、永久的なる結合をさせる」
そして、アントイン神が一歩前に出て、締めをした。
「我、彼らの意志を尊重し、我、彼らの魂を尊重し、我、我の力をもち、魂の結合を行う、彼らの魂に、力を与え、二人の魂が互いに離れる事の無きよう、我、願うばかりである」
気をため、彼らに当てた。すると、光が起こり、姿が見えなくなった。そして、二人は一人になった。
「では、行きましょう」
彼らは、全員扉を通って行った。最後の一人が通ると、扉は色を失った。
「さて、全員無事に帰ったな」
「これから、忙しくなるな」
「はたまた、何も無くなるか」
「万物を作り変える必要性も発生するかも」
「この空間は、この惑星しか作らなかった。あとは、この惑星を照らす恒星のみ」
「空間外から完全に断絶したわけか」
「でも、また復活するかもしれないな」
「その時は、また直せばいいでしょう」
「そうよ、お兄ちゃんの言う通りよ」
そして、神々も、宝から開放され、元の体へ戻って行った。そして、この森は、何者もいなくなった。




