第93部
そして、この国自体から出て、すぐ隣の国に向かう事にした。
「後どれくらいあるの?」
「大体、300kmぐらいかな。今日中に国境までたどり着けると思うよ」
エリスが言った。彼らは、エリスのお父さんが作った車に乗り続けていた。国道を通り、ひたすら走り続けていた。
「本当に、何にも無い一直線な道ね」
桜が外を見ながらもらした。
「確かに。何も無い。町すらも無い」
そして、車は道を走り続けた。
「止まれ!」
門がありその前にいた警備員に止められた。
「やれやれ、ここが、国境の町か?」
「うん。隣の国「シュルト」との国境の町「タンガスト」。この町で一泊して、国境を通りましょう。そしたら、1日ぐらいしたら首都に着けるはずよ」
エリスが説明する。その間にも、車は町の中に入っていった。
町はお祭り騒ぎだった。
「どうしたんだろう」
のぼりが立てられており、そこには、「新国王即位」とかかれていた。
「そうか、あの2世が即位したんだな。ようやくか…」
「ひとつ疑問があるんだけど…」
努が言った。
「その間も政治って続いていたんでしょう?じゃあ、誰がしていたの?」
「皇帝じゃない?あの人は、この大陸全土を支配しているから」
「なるほど、それはありえるかもしれないな」
「とにかく寝ましょう。なんかつかれちゃって…」
そして、翌日。彼らは、国境を通り、隣の国に入った。道は同じように整備されており、ただひたすらまっすぐに伸びていた。
「何にもうれしくも無いし、国境を越えたって言う実感もわかないな」
「しょうがないよ。これほどまでに、同じ光景が永延と続いていたら誰だってわからなくなるって」
いくつかの町を通り越し、この国の首都にたどり着いた。
「この国は、共和国制をとっていてね、大統領がいるの。3年に1回選挙があって、そこで選ぶ事になっているのよ」
「じゃあ、大統領府はどこだ?」
「この町のちょうど真ん中に、政府機関が集中しているところがあるの。そこにいると思うわ」
そして、一行が、大統領府に近づいていくと、口論している3人組に出会った。
「どうしたんだろうな。あそこで大口論なんかしている」
途切れ途切れに声が聞こえてくる。
「だから……無駄だって言ったの………元の世界に……」
「あれ?元の世界?もしかしてさ、あの人達も、開放の民かな」
学達は、彼らに近づいて言った。
「すいません、もしかして、あなた達は開放の民ですか?」
「え?あ、はい。そうですけど…あなた達は?」
「私達も、開放の民って呼ばれています」
「じゃあ、仲間ですね。よろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ」
学は、女性の方と握手をした。
「自己紹介をしないといけませんね。私は、効洋臨香です。こちらは、サイバーン・ヨリクンと、マシハト・イクナです」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ。自分は、河内学と言います。右から順番に、渡辺桜、伊達山勇雄、飯島革と努、岸川佐古、カンドール・エリスです。ところで、先ほど口論していましたが、どうしたんですか?」
「実はね、ここの大統領が、元の世界に戻るための鍵を持っているって聞いたんで見に来たんです。でも、そこにいくまでに、警備兵に捕まっちゃいまして、たどり着けなかったんですよ」
「とりあえず、大統領府に行きましょう。ここに立っていても、元の世界には絶対戻れませんから」
そして、さらに3人増えた一行は、大統領府に向かった。
そして、大統領府についた時、
「誰だ!君達は!」
警備兵に呼び止められ職務質問をされた。そして、警備兵に学は聞いてみた。
「大統領は、どこにいますか?」
「大統領閣下は現在、誰とも会われないそうだ」
「たとえ、皇帝の使者と言ってもですか?」
警備兵の手が止まった。
「皇帝陛下の、使者だと?」
「そうだ。それが証拠に、ここに神の力を帯びた剣を持っている」
そう言って、学は、白の剣を腰から外し、警備兵に見せた。警備兵は、3歩下がり、道を開けた。
「すみませんでした!この件はどうか内密に…」
「その代わりに、お前達はこの場で見た事を一切話してはならん。話した時は…わかっておるだろう」
「わかっております。ですから…」
「とりあえず、行こう」
学は、中に入った。
十分離れたところで、人気の無い場所に来た時、臨香が聞いた。
「ね、皇帝って誰?」
「あれ?うわさとか聞いてない?」
「全然ない」
「そうか…この大陸の皇帝は、ネロと言うんだ」
「ネロって、あの、ローマ帝国の皇帝の?」
「同じ名前だけどね、会った事がないからわからないんだ」
学が臨香に言った。
「そう言えば、君達は、どうしていた時にこっちに来たの?」
ヨリクンが答えた。
「えっと…4日ぐらい前に、3人で一緒に遊んでいたんだ。そしたら、地面が揺れているような感じがして、気がつくと、なんか変な空間に行っていたんだ。そして、なんか森に、たどり着いたんだ。その後は、君達と多分同じだと思う」
「そうか…」
そして、一行は、大統領執務室にたどり着いた。3回ノックしてから、入った。
「失礼します」
「誰だ!君達は!」
その時、風が通って行った。窓が開いていた。
「実は、あなたにお話があるんです」
大統領は、動こうとした。
「動かないでいただきたい。すでに、下にいた人達は制圧しています。さて、単刀直入にお話しましょう。大体200年前、この国にもたらされた宝を欲しいのです」
「宝…200年前…ああ、あの宝石の事か」
そして、大統領は、重厚な感じの箱を取り出し、鍵を開け、ふたを開けた。そのとき、アントイン神が実体化し、話した。
「この宝石は、偽物だ。本物は、この人の指輪だ。右手薬指に付けてある宝石だ」
大統領は、冷静な感じを無理に保とうとしていた。そして、深いため息をつき、右手の薬指から指輪を外し、机の上に置いた。
「君達は、一体、何者だ?」
学がその宝石を取り、アントイン神に渡しながら言った。
「開放の民ですよ。ところで、これは本物ですか?」
「ああ、本物だ。この青色、この落ち着いた感覚、起きろよ」
アントイン神は、宝石をこついた。すると、薬指の一番上にはまっていた青色の宝石から実体が出て来た。
「おはよう、アントイン神」
「あなたは、誰ですか?」
大統領は、この場にいる神以外の全ての人が持っている疑問を口にした。
「私は、ガイエン神」
「ガイエン神…第6宇宙空間の神で青色をしている。落ち着きの神である」
いつものように勇雄は話した。
「いかにも。さて、そなたら神がここにいると言う事は、時が満ちているのか」
「偶然性の一致だと思うが、まもなく、万物が目覚める」
「すいません、一体何の話なんでしょうか?」
イクナがいった。
「いずれわかる。さて、大統領、この指輪は、彼らのものである。よって、返させてもらうぞ」
アントイン神は、指輪を勇雄につけた。
「これでよい。では、次の国に行こう。この近くの国は…」
その時、外側が騒がしくなった。次の瞬間には、地震が襲った。
「うわぁ〜!」
誰かが奇声を発した。すぐさま、全員近くの物をつかみ、どうにか助かった。身を正し、そのまま一礼してから、勇雄が言った。
「では、大統領。先に失礼させてもらいます」
大統領は、一回うなずいただけだった。