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第90部

そして、宿に泊まり、次の日の朝となった。


「宿代は、一人5Gか。これって、どこでも同じかな」

誰も聞いてなかった。酒場に降りてみると、血の臭いがした。

「これは…一体何があったんだ?」

カウンターの奥で物音がした。勇雄と学が見に行くと、少女がうずくまっていた。

「おい、お前、ここで何があった」

少女はこちらを振り返り、

「お兄ちゃん達は?」

と震える声で言った。

「俺達は、悪いものじゃない」

「自分達は、開放の民だ。な、信じてくれ」

一回だけうなずいた。

「おい、みんな。ちょっと、こっちに来てくれ」

学が全員をカウンターの後ろ側に呼び、全員が隠れるような状態にしてから、少女に事情を聞いた。

「私の名前は、カンドール・エリス。この酒場のカウンターにいるの。いつものようにここで働いてると、あなた達が入ってきた。そして、上に行ったその数時間後、盗賊団が入ってきたの。この辺りを地盤にしている、「砂漠のトラ」と言う名前の盗賊よ。そいつらが入ってきて、一方的に…」

エリスは、泣き出した。それをあやすのは、桜と佐古だった。

「大丈夫?」

「うん。お姉ちゃん達のおかげで」

「で、どうする学。彼女をここに置いとくと逆に危ないような気がするけど」

「かといって、連れて行くのもな」

「私ね、いい物持ってるの。それをあげるから、お兄ちゃん達の旅に連れて行って欲しいの」

「いいもの?なんだ?」

勇雄が聞いた。エリスは、「私を連れて行ってくれるならあげるよ」と言った。結局、学達は、エリスも連れて行く事にした。そして、彼女の自室でそのいい物を見せてもらった。

「これが、私の宝物。私のお父さんが持っていたの」

それは、一対の剣だった。片方は黒く、もう片方は白かった。

「名前とかあるのか?」

「知らない。分かっているのは、これを使うと、とても強くなる事だけなの。それだけ」

「他には無いのか。まあ、いいか」

「そう言えば、その盗賊は、どこにいるんだ?」

「皇帝の下よ」

「こうてい?だれ?」

「この大陸は、4つの国に分かれているの。その全てを統治しているのが、皇帝「サイコ・サスター」よ。元々はいい人だったんだけど、誰かにそそのかされているみたいで、人が変わってしまったの」

その時、カオスが言った。

「サイコ・サスターか…久し振りに聞く名前だな。元々は、善政を敷いていたのじゃ。後見人としておる近衛隊隊長のブルス、それと哲人のセネカと言う者のおかげじゃな。しかし、彼らが死んだ今、彼を止めるものは誰もいない」

「じゃあ、どうやって止めるの?」

「お前達の力じゃよ。この世界には、12人の開放の民が今存在している。さて、それからどうするかの」

カオスは、再び黙り込んだ。

「さて、この剣はありがたくもらう事にして、これから、どうするかね。この町から出て行って、盗賊を追うか、それとも、この国の首都に行って、どうかするか」

「盗賊は、皇帝のバックがあるからこそ暴れているわけでしょ。だとすると、その後ろ盾をつぶせば、いいんじゃないの?」

「つまり、桜は、皇帝打倒を目指すと言う事だな」

「そう言う事。そうすれば、この世界は安定すると思うわ。だから、首都に言ってこの国の元首と会う事が必要になるの」

「さて、ここでひとつ質問です。この国の首都はどこでしょうか」

努は茶化すような口調で言った。

「そんなの簡単よ」

佐古が答えた。

「私達、この大陸の地図を持っているもの。そこに載っているでしょ」

そして、行き先も分かった。

「とにかく、行こう。ここにいても何も始まらない。自分達一人一人がこの世界の主人公だからな」

勇雄がみんなに言った。一様に引き締まったような感じがした。


「さて、この砂漠はどうやって抜けれるのかな?」

「そんなの簡単よ。私のお父さんが車を持っていたの。それを使えば大丈夫よ」

そう言ってエリスは、全員を家の裏へ案内した。そして、そこには一台の4輪駆動があった。砂漠でも止まらないようにタイヤには、砂が入らないようになっており、なおかつ、7人入る事も可能だった。さらに、燃料は水素と太陽光であり、日の出ている間は水素で移動し、日が沈んでいる間はソーラーシステムの電力で動く事も可能だった。

「これ、どこに売ってるの?」

「ううん、どこにも売って無いよ。私のお父さんが一人でこしらえたの。すごいでしょ?」

「ああ、本当にすごいよ」

「この世界には、我々の2050年代程度の科学水準があるらしいな」

ここで、学がひとつ気になっていた事を聞いた。

「なあ、エリス」

「なに?」

「この世界は、今、何年何月何日だ?それと、俺達みたいな開放の民と呼ばれている種族は、この前はいつに来たんだ?」

「えっとね、今は、大陸暦2696年11月30日で、この前、開放の民が来たのは、550年ぐらい前らしいよ。でも、そんなに長生きしているのは、皇帝ぐらいなんだって」

「皇帝サイコ・サスターは、一体何歳なんだろうな」

「さあ。私達はそんな事気にもしなかったからね。良く知らない」

言いながらも車は動く準備が出来た。

「さて、みんな乗って」

エリスはみんなを乗せた。そして、金色に輝いた、鍵を取り出した。

「あれ?それが、この車の鍵なの?」

「そうよ。この鍵は、この世界にひとつだけしかない、フラクスタル図形を使用している鍵だって、いつもお父さんが言っていたの。なんでも、町に出た時、賭けで勝ってもらってきたんだって。でも、お父さん、お酒を飲むと嘘を言う事が多くて…この鍵だって、ずっと昔の私のお母さんが持っていたものだしね」

「すごいな、エリスのお父さんって。どんな人だったんだろうな」

そして、車はこの国の首都である、「シャウバーン」に向かっていた。


砂漠を3日間交代で運転し、抜け出す事に成功した。

「さて、これからどこに出るんだ?」

「もうちょっとしたら、道があるわ。そこを右側にひたすら行くの。そしたら、町があるわ。そこが、シャウバーンよ」

桜が説明した。車の一番後ろの座席には革と努と佐古が仲良く眠っていた。真ん中の席は、学と勇雄。助手席に桜が座り、今、運転しているのはエリスだった。


2時間ぐらいが経過した時、門が見えた。円形になっているようで、端が見えなくなっていた。門の前には跳ね橋があり、車はその橋を渡るようになっていた。

「止まれ!何者かを述べよ!」

「私達は、開放の民。ここへは導かれてきただけの事。ここを通して欲しい」

「これはっ、失礼しました。どうぞお通り下さい」

桜が門番に説明すると敬礼されて通っていく事が出来た。中に入ると、石積みの壁が町を取り囲んでいた。中は、複数の地区に分類されていて、今学達がいるのは商業系の建物だけが集まっている地区であった。

「この町の中心にあるあの塔がこの国の行政、司法、立法の全てをしている、国王「ラドラ・ティエンゲル」がいるの。そこにはいるためには、行政関係の人か、司法関係の人か、立法関係の人かしかいないの」

エリスが説明した。車は近くにあった空き地の駐車場に止め、鍵をかけた上で彼らは車から離れた。


「さて、これからどうする?」

「とにかく、あの塔に行こう。どうやってか中に入って、国王に謁見する必要があるだろうな」

桜と学は次の行き先を話し合っていた。他の人達は、周りをみながら歩いていた。

「じゃあ、みんな。これからあの塔に行く事にする。いいね」

学が全員に話しかけた。

「いいよ」

返事をしたのは佐古だけだった。

「やれやれ、これからどうなる事やら…」


塔までの道、周りの商店街を見ていると、不思議と活気が見られなかった。

「ちょうど、午後4時ごろ。一番活気があっても不思議じゃないのに…」

そして、一軒の菓子屋があったので、そこにはいる事にした。そして、この活気の無さを聞く事が出来た。

「昔はね、この町はとても賑わったものさ。この大陸一の商業の町とまで言われたの。でもね、数年前から、国王陛下が、心変わりでもして、税がきつくなるわ、人はなぜかいなくなるわで、いろいろと起こったのよ。そして、この町の人は次々と別の国に逃げて行き、行けない人達だけが、こうして今も戦々恐々な気持ちでひっそりと暮らしているのよ。え?あの塔に行く?やめといた方がいいよ。なぜって、あの塔には、化け物が取り付いているって言う噂だからね。昔、それを退治したと言う白と黒の剣があれば、退治できるかもしれないけどねえ…」

「なあ、エリス。お前のお父さんって…」

店から出ながら言った。手には、なぜか棒つきキャンディーをしっかり握っていた。

「もしかしたら、その退治した人が、私の…?」

「さあな、でも、とりあえず、この塔に行ってみよう。何か分かるかも知れないし」

一行は、2時間かけて、あちこち聞きながら塔にたどり着いた。それで分かった事は、国王が心変わりを起こした事。いつも黒い服を来た人が塔を出入りしている事。そして、この塔に何か取り付いている事だった。

「よし、行ってみよう」

学と勇雄が先頭を歩いた。後ろは、学と同じ歩速で歩いた。

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