襲来
「やぁやぁ!みんな元気そうでなにより。」
「希乃秦さん。なんか初めて会った時と違う気が」
「あの時はみんなの事は知らなかったし、様子見も兼ねてたからね。」
レナと林が会話している時に、義昭達も邪魔な警官を始末しながら合流した。
積み重なった警官の山から下りたレナは
「本当はここにいる警官は全員私がやりたい所だけど。源二君から抑えろって言われちゃったからこのくらいにするよ。」
そう言うと、義昭達が乗っていたバスに乗ろうとして
「なにしれっと乗ろうとしてるんですか!?」
林に突っ込まれてレナは足を止め、振り返りながら
「長から君達を援護しろって命令されてね。」
「貴女の長は、田橋 俊二郎のはずですが?」
「栄子さん、貴女の情報網から私は漏れているようだね。」
少しドヤ顔になって、栄子に近付きポケットの手帳をスルッと抜き取りながら
「後で教えてあげるから、これに書き加えたらいいよ。」
終わったら返すと言い、手帳を自分のポケットに入れバスに乗った。
運転手は乗ってきたレナに驚き、声が出ずにいると
「やぁ、お久しぶりじゃん。今はバスの運転手ですか。」
ルンルンで席に座り、ゆっくり戻ってきた義昭達を見つけると
「はーやーく。はーやーく。」
外出を楽しみにしている子供のように急かした。
やがて全員乗り込み、バスは警視庁へ向けて再び出発した。
少し盛り上がった地面に気付かず
壁のように立ち塞がる警官を薙ぎ倒しながらバスは進む。
「貴女の長ってどんな人なんですか?」
「それ聞いちゃう?どうせ会うんだし今言わなくても良いじゃん。」
後ろの席で、氷菜とレナが話をしている。
真ん中の席では楓羅達が窓から外を眺めている。
運転席の近くでは、義昭と栄子が進行方向を見ながら
「義昭君も感じる?」
「はい。誰かに見られているような。」
と、嫌な予感を感じ取っていた。
外の光景は跳ね飛ばされる警官しか見えない為、確証のない違和感を二人は覚えていた。
すると
「ちょっと失礼します。」
カメラを構えた栄子が壊れたドアに捕まり、勢いをつけてバスの屋根に登った。
風圧に耐えながら、四方八方にカメラを向けブレの無いようシャッターを切る。
ある程度撮り終わり、車内に栄子が戻ってきた。
「義昭さん、確認してみませんか?」
そう言うと、カメラの画面を義昭に向け二人で覗き込む。
流石はプロのカメラマン、スピードを出しているバスの上からでもブレがほとんどなかった。
明瞭に写っているものから違和感を探していく。
「•••見当たりませんね。」
「何かあると思ったんですが•••」
しかし、隈無く見てもあやしい何かを見つける事はできなかった。
栄子はすっかり困り果ててしまい、頭を抱えて座席に腰掛けた。
義昭は義昭で、覚えた写真を頭の中で振り返りながら違和感を探している。
やがて、後ろの席も話すことが無くなったのか無言の時間がバスを支配した。
それから少しした時
「ん?なんだありゃ。」
運転手が目の前の光景を怪しみ始めた。
その言葉に、近くにいた義昭と栄子が運転手と同じ方向を凝視する。
遠くでアスファルトの地面が盛り上がっているのが確認できた。
気になった氷菜達も移動してその光景を眺めていた。
「何でしょうあれは?」
氷菜が首を傾げたその瞬間
「運転手さん!思いっきりハンドルを右に切ってください!」
氷菜の耳の近くで、林が声を張り上げて訴えた。
動揺こそしたが、その声を聞いて全力で車体を右に曲げる。
急すぎてバスが倒れかけたが、何とか耐えて反対の車線に移動する。
その時
「いただきまーす♪」
盛り上がった地面から、そんな言葉と共に大きな口がさっきまでバスがあった場所に齧りついた。
その箇所の地面が丸ごとなくなり、側で女の子がもぐもぐと口を動かしている。
驚く間も無く、バスが突然勢いを失いその場に停止してしまった。
「何ですか今度は!」
氷菜が叫ぶと
「デハ、コノママナゲトバシマス。」
機械音声が聞こえたと思えば、運転席からバスは吹き飛び
「OK!じゃあパスすんぞー。」
空から声が聞こえるや否や、運転席の方からアロハシャツの男性が腕を振りかぶっていた。
そのまま殴るのかと思いきや、屋根に乗って後部座席の方まで移動して
「おらいくぞー。受け止めろよ彰吾」
後ろから思い切り、腕をバスにぶつけた。
衝撃に耐える事に必死で、まともに視認することが出来ない。
人力とは思えない力で殴り飛ばされた車体は、しばらく空中を漂った後、林はバスに伸びるツタを確認した。
「あれは」
「はーい。分かってますよっと。」
外から気怠そうな男性の声が聞こえると、中に入ってくる勢いで謎の植物がバスを受け止めた。
おもちゃのように上下に動かされた後
「じゃあ最後は、あーちゃん。」
その言葉を最後に植物は姿を消し、運転席が下の状態で地面に激突しそうになり
「しょーくんに任されました。承ります。」
発言と共にバスはその場で停止
・・・いや、止まったのはバスだけでは無い。
義昭達もその場から動く事はおろか息をする事も出来なかった。
「この空間は私のものです。」
その言葉を最後にバスは切り刻まれ、止まったままの義昭達は空に放り出された。




