疑念と確信
少年は夢を見ていた。
それはこの世のものとは思えないほどの歪で不快な夢だったが
その少年は横たわる人体に座って笑みを浮かべていた。
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「う、うーん」
さっきまで感じていた感覚と違う違和感を感じながら、義昭は目を覚ました。
寝ぼけ眼を擦りながら上体を起こしてみると、さっきまでいた理科準備室ではなく、保健室だということに気がついた。
ベッドから降りようとすると、さっきまで感じていた痛みが体に訴えかけてくる。
「一体誰が僕をここに運んだんだろう?」
今自分が置かれている状況を整理しながら、義昭は自分をここに運んだ人物について考えていた。
義昭にとってこんな事をする人物など一人しか見当たらない。
ただ、メリットが見当たらなかった。
虐められている人間を助けたところで自分の所に飛び火するかもしれないのに何故こんな事をしたのか、それだけが義昭にとって気がかりだった。
そんな事を考えていると、保健室の扉が開く音がした。
「あ、良かったー!起きてくれたんだね!」
扉の方を見ると、義昭のカバンと自分のカバンを持って入ってきた木森 林の姿があった。
「どうして僕をここに運んだんですか?」
気になった事はすぐに聞く癖がある義昭は、林の姿が目に入った瞬間、そんな事を聞いていた。
いきなり聞いた事に驚いていた様子を見せた林だったが、納得したように表情をすぐに戻して話した。
「まぁ、そう思うのも当然だよね。虐められている人を助ければ自分が標的になる可能性もあるっていうのにね。」
やっぱり重要な所は理解しているようで、林は真剣な顔になって義昭の方に向き直して話し始めた。
「でも、私知らなかった。普通の虐めじゃない事は何となく理解してたけど、まさかこんなに酷かったなんて!まだこの学校の事あんまり知らなかったから廊下をウロウロしてたら、理科準備室からうめき声が聴こえてきたんだよ。」
どうやら、義昭を発見したのは単なる偶然だったようだ。
「そうだったんだ。ごめんね。いらない手間を掛けさせてしまったみたいで」
そう謝罪すると、林は慌てて止めさせた。
「大丈夫だよ!それにあんなに酷い傷を持ってる人を見逃すなんて私には出来ないよ!」
そう聞いて、一瞬顔を顰めた義昭を見て、地雷を踏んだ事に気付いた林は急いで話題を変える事にした。
「そういえば、義昭君っていつも歩いて学校に来るけどお家近いの?」
「そうだね。学校から家までだったら、確か片道10分の所にあるよ。」
思ったよりも近くて林は素で驚いてしまった。
そして、こんな事も思い浮かぶ
そんなに家と学校が近いのなら・・・
虐めは学校だけでなく家でも行われているのではないかと
そう考えれば、ここまでやられているにも関わらず警察や家族が出てこない事も頷ける。
「とりあえず、もう時間も遅いし帰ろうよ。学校から10分なら遠回りって訳でもないしさ。送っていくよ。」
そう言って林は、義昭の前に来てしゃがんだ。
頭の中で?を浮かべる義昭に林はしゃがんだまま話し出した。
「さっきの感じ見てたら足を地面に付けるだけでも痛むんだろうなって思ったから、私が家までおぶっていくよ。」
それはさすがに悪い。
そう思ったが、自分を抱えてここまで来れるなら大丈夫かと思った義昭は林の厚意に甘える事にした。
「・・・じゃあお願いするよ。近くなったら言うからその時に下ろしてね。」
そう言って義昭は林の背中に乗っかった。
(やっぱりすごく軽い。ご飯はまともに食べてるんだろうか?)
そんな疑問が頭をよぎるが、おぶって初めて分かった事もあった。
「義昭君って見た目に反して筋肉がすごいね。」
林が義昭をおぶって感じた事は、見た目よりもしっかりと筋肉がついていた事だった。
これだけ痩せていたら普通なら無いとまでいかなくても、多少つく程度なのだが、義昭は適度に筋肉がしっかりとあった。
まるで戦う軍人のような体つきをしていた。
「あぁ、まあ知ってるだろうけど虐められているからね。ある程度筋肉がないと耐えられないんだよ。」
そう説明されて納得はするが
(ここまでいるのかなー。まるで、仕返しでも考えているみたいだけど)
そんな事を思いながら、鳴り響くチャイムに急かされるように義昭をおぶって林は学校を出た。
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保健室を出る前に林が考えていた虐めの件は、思いのほか早く確信に変わることになる。
校門を出て2分後の事だった。
何かが林達の後ろをつけてくる感覚がした。
後ろを振り向くが、当然見当たらない。
だが、確実に誰かが林達を追っているのは明らかだった。
だから
「ごめんね義昭君。ちょっと遠回りするね。」
頷いた義昭を見て、林は歩くスピードを少し早めた。
すると当然後ろの人物も歩くスピードを早める。
そして林は、十字路で右に曲がった。
曲がってすぐに、後ろの人物も林と同じように右に曲がる。
「頑張ってたけど、ゲームオーバーだね。」
その言葉と共に、林達を追いかけていた人物は、待ち構えていた林にぶつかって尻餅をついた。
追いかけてきた人物は小学生くらいの男の子だった。
追いかけてきた犯人が分かると、林は優しい口調でその少年に問いかける。
「どうして私達を追いかけてたの?君は私達とは初対面だよね?」
初対面という言葉が難しいかなと思われるほどの少年だが、その少年が発した言葉で、親や教育委員会などが動かない理由が分かるかもしれないと思ったからだ。
「俺は姉ちゃんを助けようとしたんだ!」
悪びれることも無く、むしろ良いことのように話す少年に林はまた聞き返す。
「助ける?お姉ちゃんは誰にも襲われてないけど?」
そして、林は知ったこの地域の闇を
林は知った日本人の腐った性根を
この少年の言葉で林は知ってしまった。
「だって、お父さんとか大人が言ってたもん!日出 義昭はこの世に生きている人間の中で一番悪いって!いらない人間だって!」
林の中で何かが弾ける音がした。
書く話がいっぱいあると、何書けばいいか分からなくなりますなー(。-`ω´-)ンー




