集合と開戦
宣戦布告をした日、授業を終えた義昭は林と一緒に帰っていた。
目的地は
「ど、どうぞ。片付けたけど散らかってるかも」
林の家である。
殺人鬼として生活していたからか、よくある女子の部屋みたいな感じではなかった。
その部屋に関しては
「どうせ二宮 瑠美ってバレたら移動しないといけないんだし、そこまで飾っても意味ないじゃん。」
との事らしい。
ひとまずカバンを置いて、義昭は林に向き直る。
「急にこんな事を言い出したのは理由があるんだよ」
林も義昭の方を向いて、話が始まった。
父親を殺す事に関する覚悟を聞かれた時のような真剣な表情をした義昭は、先の未来を見ているようだった。
「僕は留萌 一三二に勝ったら、この街を出て旅に出る。」
聞いた林は、少し呆気に取られたが大きく驚いたりはしなかった。
「なるほどね。そんな感じはしたよ。」
だが、林は自分を圧倒した一三二に義昭が勝てるかどうか、疑問になった。
義昭の強さは、自分と互角だったあの執事を瞬殺した時点で少し理解していたが、留萌 一三二はそれとは比べ物にならない。
そんな表情をしていたのか、義昭は少し表情を崩して林に笑いかけた。
「心配しなくて大丈夫だよ。僕は絶対に負けないから。」
「で、でも生徒会長はすごく強いし、いくら義昭君でも死んじゃうかも」
そう言った時、義昭は立ち上がり
「どうせ僕の命は長くないんだし、負けて死んだら寿命が少し縮んだって話になるだけだから気にしないでいいよ。」
その言葉に着いて質問したくなったが、話してくれないだろうと察した林は追求をやめて、晩ご飯の準備を始めた。
……………………………………………………………………………
同じ頃、妹の氷菜は兄のいなくなった部屋に来ていた。
昨日の兄の発言は冗談なんじゃないかと一縷の望みを持っていたが、その部屋に物はなく現実を氷菜に突きつけていた。
子供の頃の出来事以降、氷菜は兄に少しでも楽に生活してもらうため、自分の才能を磨いた。
良い仕事に就く為に勉強し、兄を守れるように武道も習った。
しかし、兄の境遇は良くなるどころか悪化し傷を付けては治るを繰り返していた。
自分の努力はまだ実らないと悟り、ただ自分の親が威張るのに使われるだけだった。
それでもどうにかして兄の役に立ちたいと考えていた。
だが、対象の兄がいなくなってしまった以上、自分に努力する動機がなく無力感からか膝から崩れ落ちた。
両親が寝静まった深夜に、氷菜は人知れず啜り泣いていた。
そして、氷菜はある事を思い出す。
「木森ってこの間、兄さんを担いで来てくれた人だよね。」
義昭が泊まると言っていた、木森という名前に心当たりがあった。
顔も覚えている。
「こうなったら」
氷菜は覚悟を決めるのだった。
……………………………………………………………………………
翌日、義昭は学校をサボり、林を連れて駅前に来ていた。
駅を利用している人には、嫌悪の対象である義昭とそれと共に行動している可哀想な人と見られている林は、気にする事なくある人を待っていた。
そして
「お待たせー。辞めたのに元上司がうるさくてねー。」
と手を振りながら東西南北楓羅がやってきた。
合流した楓羅は一緒に待っていた林の方を見て
「初めましてだよね。私は東西南北 楓羅。貴女は?」
「えっと、木森 林です。」
と軽い自己紹介を終えて、義昭の方を二人は向いた。
「やるんだね?これから学校の長ってのと」
「はい。内容はさっきメッセージした通りです。」
そして、夕方まで三人は林の家で今後の事を話しながら過ごし、学校へと向かった。
夕方なら部活動をしている生徒がいると思ったが、一三二の配慮なのか誰もいなかった。
そして校舎に入った途端、チャイムと共に放送が始まった。
『やぁようこそ皆さん。改めまして学校の長をしております。留萌 一三二と申します。』
一三二の話が始まった。
『普通にやるのも、勿体無いので軽くゲームをします。ルールは簡単で、これからひとつの教室に私は待っていますので見つけてくださいねー。見つけた人から相手をします。』
三人一緒に見つけた時は、全員を相手するとの事らしい。
最初は全員で行動しようとしていたが、下駄箱で義昭が
「ちょっと寄るところが出来たから先に探してて」
と言って分かれてしまったので、林と楓羅は二人で探すことにした。
面倒なことが嫌いな二人は虱潰しに教室を開けて行くことにしたが、一向に見つからない。
生徒会室にはいた形跡こそあるが、本人は見つからなかった。
やがて全ての部屋を見終わる頃になっても一切見つからず、二人はお手上げだった。
「そういえば、全部見たのに義昭君も見てないね。」
という楓羅に
「確かに、どこに寄っているのでしょうか。」
と林も疑問に思っていた。
行けるところは全部行ったのに、どこにもいない事に楓羅がキレそうになっていると、ふと林は思い出した。
「旧校舎」
その言葉を聞いて二人は、旧校舎に走り出した。
…………………………………………………………………………
「さて、旧校舎に気付けた時点で一つ○をあげようかな。」
旧校舎から二人を見ていた一三二は、ニヤつきながら
「かくれんぼの後は鬼ごっこだよ。最後まで楽しもうじゃない?」
まだ見ぬ義昭という強者を心待ちにするのだった。




