実力と目的
「おじさん達、その話僕も聞いて良いかな?」
突然声をかけられ黒服の男達は驚いた顔をしたが、目的の人物であると分かると即座に戦闘態勢に移った。
「おやおや、まさか向こうから来てくれるだなんてね。自殺願望でも出来た?」
「まさか、残りの人生くらい好きに生きますよ。」
その言葉に、黒服の男達は嘲笑を浮かべながら銃を構えていた。
すると、その中のリーダーらしき金髪の男が我慢出来なかったようで大きな声で笑い始めた。
「残りの人生?気でも狂ったか。お前の人生はここで終わりだろ?」
そう言うと一人の男が引き金を引いた。
真夜中の喫茶店に銃声が響き渡り、一緒にいた女性は目の前で起きた事に驚いている。
信じられないとでも言いたげだった。
ただ、それは金髪の男も同じだった。
倒れたのは引き金を引いた男で、義昭自身は無表情で倒れた男を見ていた。
何が起きたのか分からない。
なぜ義昭が死なず、撃った方が死んだのか分からない。
彼はただ指を前後に振っただけなのに。
「何でこの人が死んだのかは貴方には一生理解できないと思います。」
この言葉でハッと我に返った男は、目を見開いて義昭を睨んだ。
その視線に女性は怯み、義昭は呆れた。
そうしている間にも義昭は囲まれ、至近距離に銃口が突きつけられていた。
それでも義昭は動じないどころか溜め息を吐き始める。
金髪の男からしたら挑発以外のなにものでもない。
「なんでお前はそんなに余裕なんだよ。状況分かってんのか!?」
怒鳴る男に、義昭は視線を向ける。
そして、静かに言葉を発した。
「世の中には色々や状況を自分のタフネスで生き延びた人達がいっぱいいる。」
唐突に語り出した内容に金髪の男達だけでなく、一緒にいた女性、そして喫茶店にいた人達も?を浮かべていた。
義昭の語りは続く
「熊とやり合って軽傷だった男性がいる。銃で撃たれても車を運転して病院に行ったボディービルダーがいる。雷が直撃し毒蜘蛛や蛇に噛まれても生きていた人もいるんだ。」
そう言うと、義昭は左手を挙げて
「根性論を信じるつもりはないけど、絶望的な状況に陥ったとしても自分の最大限が出せる人が最終的に勝てると思うんだ。」
そして、指を曲げながら
「まぁ僕がそんな状況になるのは、ここではないけどね。」
血塗れになった周囲を見渡しながら、義昭は言葉を締めた。
振り返って女性に視線を向けると、ガタガタ震えながら立ち尽くしていた。
少し押すと倒れてしまいそうなほど膝を震わせ、何か喋ろうと口をパクパクさせている。
そんな女性の手を取り、義昭は席へと戻っていった。
さっきまで座っていた席に戻り、正気を失っていた女性を正常に戻した。
「えーと、大丈夫ですか?ずっと固まってますが」
その言葉で視覚を取り戻した女性は、改めて義昭の方に向き直った。
目の前にいる少年は、今10人ほどの大人を蜂の巣にした。
下手な反応をすれば、自分も殺られるかもしれない。
そう恐怖するのが本来なのだろうが、どうやらこの女性は違ったようだ。
「ねぇ、さっきのやつ私にもしてくれない?」
唐突な提案に義昭は頭に?を浮かべていた。
その後、女性から出た言葉によりこの人も十分に壊れていると義昭は察した。
「私ならあれ、避けられると思うんだ。」
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あの後、喫茶店のマスターに店を汚したことを謝罪した2人だが気にしなくていいと言われてしまった。
どうやら建っている場所の関係でああいった光景は日常だったらしい。
コーヒーの代金だけ払い、2人は近くの公園にやってきていた。
理由は単純で、さっきの女性の発言が本当なのか確かめるためだ。
いざ始めようとした時、女性が待ったをかけた。
流石に怖くなったのかと思ったが
「目隠ししてもいい?」
とかなり素っ頓狂な事を提案した。
いつも持ち歩いているのだろう、女性は鞄から目隠しを取り出し、公園の真ん中に戻って目隠しを付けた。
「じゃあ大丈夫ですか。•••えーと」
「ふうら!」
呼び方を迷っていた義昭に、女性が自分の名前を叫んだ。
「私の名前は東西南北楓羅。ふうらって呼んでね。」
その声に分かりました。
とだけ答えて、指を曲げていった。
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「すごい。これだったら」
義昭は感嘆をもらす。
そこにあったのは、義昭の攻撃によって出来た無数の凹凸や土煙
その土煙が晴れてあらわになったのは、無傷で立つ東西南北 楓羅の姿だった。
「実際に反射神経があるとは思わないけど、貴女には本当にあるかもしれないですね。」
義昭は楓羅に近付き、手を伸ばした。
「これから僕のやる事に付き合ってくれませんか。東西南北 楓羅さん。」
「何をやるのかは知らないけれど、退屈な人生に少しでも色を出せるなら喜んで」
楓羅は義昭から差し出された手を握り返した。
その後、少し歩き住宅地にある十字路で分かれることになった楓羅は気になっていた事を聞いた。
「義昭君、さっき言ってたやる事ってなに?」
その質問に義昭は楓羅の方を向き、目を見て答えた。
「人間の間引きです。」




