出会いと不穏
その頃義昭は
「君は?と言ってもこんなの見せられたら、怯えちゃって何も言えないかな?」
目の前で、殺人犯を返り討ちにした女性と相対していた。
「まぁ、別にこのくらいでは驚きませんよ。」
既に殺人に慣れてしまった義昭にとって、目の前で人が殺されるという状況は、変わらない日常の風景と同じだった。
「暗いから、恐怖で麻痺してるのか本当に驚いてないのか分からないけど、信用は出来るね。」
そう言うと、女性は倒した殺人犯に近寄りポケット等を弄り始めた。
やがて、目的のものが無かったのかがっかりした動作をして、義昭に向き直った。
「今回のはハズレだね。一銭も待っちゃいないや。」
「今回が初めてとかではないんですね。」
どうやらこの女性は、人を殺すだとかの行為に慣れているようだった。
「うん。普通に働くのは疲れるんだ。たまには楽してお金をゲットしたいの。」
この女性にとっては、街に逃げ込む指名手配犯はちょうど良い小遣い稼ぎのようだ。
ただ義昭が見るだけでも女性の動きには違和感がある。
「貴女が2人を返り討ちにした時、動きに無駄が多かったように見えましたが?」
「え?だって私、武道とかした事ないし。」
そう言うと女性は自分の体を抱きしめながら言葉を続けた。
「子供の頃から、自分に危険が迫ったら体が勝手に動くんだ。」
「反射という事ですか。」
どうやら殺人犯の時も、体が咄嗟に動いていたようだ。
「反射神経なんてものは人間の体には無いらしいけど、私に限ってはあるんじゃないかなとか思ったり」
「そこが自分の強みだと言うなら胸を張っていいと思います。」
義昭は人の強みを否定しない。
個性を潰すことは彼の目的に反するからだ。
「君は私をバカにしないんだね。大学の時とか結構笑われたんだけど。」
「他人の個性や武器を笑う人間は、僕の計画に必要無いので、見つけたら殺します。」
唐突に発された殺すという言葉に、一瞬驚いた女性だが
「君って人生退屈だとか思った事ない?」
「退屈にしてるのは自分じゃなくて、世の中だと思っているので。」
この時彼女は、少年もまたネジがぶっ飛んでいると察した。
それと同時に確証はないが仲良くなれそうだという気さえした。
「君は違うかもしれないけど、何年か前と比べたら日本は大分生きやすいと思うよ。」
話してあげるよ。
そう言われ女性に引っ張られる形で、夜の街へと入っていった。
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連れてこられたのは喫茶店だった。
街の裏路地を進んだ先にあるこの店は、珍しい深夜まで営業している喫茶店なのだそう。
女性はよくむしゃくしゃした時に来るらしい。
「夜の喫茶店というのも良いものですね。」
「でしょ。私のお気に入りなんだ。」
そう話しながら、やってきたマスターにコーヒーを2つ注文し話を続けた。
シックな店内には2人を除くと、深く帽子を被った初老の男性と、コーヒーを飲みながら読書に耽る若い女性が1人いるだけだった。
「やっぱり夜だからなのか、お客さんは少ないですね。」
「そうだね。でももうすぐ」
と言ったところで入り口のドアが開き、黒スーツの団体に囲まれるように痩せた体型の男性が入ってきた。
義昭はその男性に既視感を感じていたが、肝心の顔が見えなかった為、真相を確認できなかった。
「来たね。」
一言そう言って女性は、声を潜め義昭に語りかけた。
「この店って裏路地の奥にあるじゃない?だからああやって怪しい取り引きがあったりするんだ。」
心なしか、先ほどの老人も本を読んでいた女性も、帽子をさらに深く被ったり、本を盾にしたりとその団体を見ないように徹していた。
どうやら、この店ではこう言った事はよくあるらしい。
そう感じた義昭は、被害を被らないように静かにコーヒーを飲もうとした。
「ほ、ほんとうにあのガキを渡せば、私の借金はチャラになるんですね?娘にはなにもしないんですね?」
「あぁ、俺たちは取り引きをちゃんとしてくれれば何もしない優しい人だからな。それにこの日出 義昭は特例で嫌悪される男だ。居なくなったって誰も困りはしねぇよ。」
だが、自分の名前が出た為、飲むのをやめた。
「そういえば、そんな法律あったね。その義昭って男の子も可哀想だよね。なんの罪もないだろうに」
悲しそうな表情をして言う女性を尻目に、義昭は黒スーツの団体を睨みつけていた。
そして、立ち上がりその男達に向かって歩き出していた。
「ちょ、ちょっと何してるの。あぁいうのは関わらないのが正解なのに」
「確かに普段ならそうします。」
ですが、と義昭は言葉を続け紡がれた言葉に女性は驚いた。
「僕がその日出 義昭なので関わらせていただきます。」
そして、義昭はその集団に向けて歩き出した。
なぜかつられて歩き出した女性と一緒に




